河合雅司(産経新聞論説委員)

1人だけでは人口減続く


 日本の少子化は極めて危機的な状況にあると言わざるを得ない。

 内閣府が20~30代を対象に実施した「結婚・家族形成に関する意識調査」によれば、現在恋人がいない未婚男女の37・6%は「恋人は欲しくない」と答えている。「恋愛が面倒」(46・2%)、「趣味に力を入れたい」(45・1%)というのが主な理由だ。

 厚生労働省によれば、昨年の出生数は100万3532人で過去最少を更新した。1人の女性が生涯に出産する子供数の推計値である合計特殊出生率も9年ぶりに低下に転じた。

 結婚や出産が個人の選択であることは言うまでもない。だが、ここまで出生数が減った以上、対象を絞った対策が必要だろう。

 まずは第1子対策に力を入れなければならない。日本では未婚で出産する女性は少なく、結婚支援が効果的といえる。先の内閣府の意識調査では、「そもそも出会いの場がない」との回答が55・5%に上っている。若い世代の雇用を安定させるとともに、出会いの場をつくることが求められているということだ。

 意識調査は「結婚に関する周囲からの影響」についても聞いているが、「周りの友人・知人が次々と結婚や出産」(62・7%)、「友人の幸せな結婚や家庭の様子を感じる」(50・5%)、「周囲から幸せな結婚の話を聞く」(41・3%)が上位に並んでいる。これは、未婚者を取り巻く人々が気運を盛り上げることがいかに重要かを示しているといえよう。

 しかし、第1子が生まれただけでは人口減少は克服できない。将来、その両親が亡くなると1人減となるからだ。子供に恵まれないカップルがいることを考えれば、第3子以降が増えない限り人口が増加に転じることはない。
 昨年の出生数の内訳をみると第1子は47万4191人、第2子が36万4763人。第3子以降は16万4578人にすぎない。だが、いきなり第3子とはならないので、第2子対策から着実に進めていかなければならない。

 実は、昨年の出生数を分析すると第2子の減少が際立つ。総数では前年比2万6284人減だが、1万4703人を第2子が占めた。減少幅で比べると、2013年の5倍、2012年の12倍だ。

75%が「第2子の壁」


 一般財団法人「1more Baby応援団」が公表した夫婦の出産意識調査によれば、8割が「2人以上」を理想の子供数と回答した一方で、75・0%は2人目以降をためらう「第2子の壁」の存在を感じている。

 86・5%が「経済的な理由」を挙げているが、就職している母親に限定すると「仕事上の理由」(64・7%)が2位であり、働き方をめぐる事情が深く絡んでいる。

 これについては、厚労省の「21世紀成年者縦断調査」が興味深い傾向を示す。夫の休日の家事・育児時間が長いほど第2子以降の出生割合は増えているのだ。2時間未満の場合31・0%だが、6時間以上では76・5%となった。第2子を増やすには長時間労働の是正が求められる。

 だが、単に働く時間を短くするだけでは問題は解決しない。基本給が安く、残業代をあてにせざるを得ない人も少なくないからだ。時間ではなく成果によって評価する仕組みの普及が急がれる。

 育休の取りづらさの改善も求められる。夫婦共働きが当たり前となり、第1子出産時に取得する人は増えた。しかし、第1子の育休が明けてから時間を空けず、再度申請することへの後ろめたさがあるのだ。たびたび休んだのでは責任ある仕事を任せられなくなり、ポジションを奪われるとの焦りだ。

 先の意識調査では、職場の上司が子育てに理解がある場合、2人目以降にためらいを感じない人の割合が10ポイント近く上昇している。職場の心遣いが「2人目を産もう」との気持ちを大きく左右する。

20代に傾斜配分必要


 第3子以降となると、さらに経済的な悩みが大きくなる。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の出生動向基本調査によれば、3人目以降の出産を見合わせた夫婦の7割が「お金がかかりすぎる」を理由に挙げた。

 そこで小欄は、第3子以降に、子供1人あたり1千万円規模の大胆な支援をするよう提言したい。

 2010年の社人研の調査によれば、子供が3人以上いる夫婦は全体の21・6%に過ぎず、2002年調査の34・4%に比べ激減した。対象となる人数が少ない上に、2005年度版「国民生活白書」によれば、子供1人にかかる費用は第2子は第1子の8割、第3子は6割程度で済むという。

 これならば、第3子以降を断念する大きな理由である大学進学までの教育費について、塾代も含めすべて無料とするぐらいしてもいい。

 いざ導入となれば、「家庭教師まで認めるのか」、「習い事はどこまで許容範囲なのか」など、詰めなければならないところは多いだろう。「親に現金を給付したのでは、本当に教育費に回るのか分からない」との批判も強い。教育機関への直接支払いなど支払い方法にも工夫を要する。

 乗り越えなければならないハードルはいくつもあるが、ここで申し上げたいのは、これぐらい大胆な発想の切り替えを求められるようになって来たということだ。

 もちろん、財源には限りがあるので、代わりに第1子、第2子に対する児童手当を廃止か縮小する。

 一方、晩婚・晩産では「3人目を産もう」とはなりにくい。昨年の出生数は20代後半が1万4949人減と大きく落ち込んだ。第3子以降に手厚くするのと同時に、20代で出産した人に傾斜配分する必要もある。

 日本の少子化は危機的状況にある。過去の常識にとらわれていたのでは出生数増には転じない。

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