小笠原誠治(経済コラムニスト)

ギリシャの国民投票の結果が出ました。賛成と反対が拮抗するのかと思いきや、反対の票が遥かに上回ったのです。

 ギリシャ国民の多くはユーロ圏に留まることを望んでいるのだから、国民投票では緊縮策の受け入れも止むを得ないと考え、イエスと答える筈だと予想したのはどこのどなたでしょう?

 多くのギリシャ人の考えは、ユーロ圏から去りたくはないが、しかし、緊縮生活はもううんざりだ、というのが本音だということなのです。しかも、緊縮策は嫌だとつっぱねても、ユーロ圏から去ることにはつながらない、と。

 でも、どうしてその二つの相矛盾する要望が両立し得るなんて考えることができるのでしょうか?

 やっぱり、お金を貸す側の論理が何も分かっていないとしか言いようがありません。

 つまり、一方で、多額の借金を作っておきながら緊縮生活はもううんざりだというような理屈が成り立つのかということなのです。のみならず、反対派は勢いづいて、債務を全てカットしろだなんて叫んでいるとも言われています。

 仮に、債務を全てカットしてもらったとしても…そうなると、今度は最後の拠り所であった欧州委員会やECB、それにIMFもギリシャの相手をすることはなくなるでしょう。

 お金を貸しても、それを帳消しにしてくれというのが分かっている者に対し、お金を貸す訳にはいかないではないですか。

 ギリシャの人々も冗談は休み休み言って欲しいものなのです。

 いずれにしても、海外の債権者はギリシャの債務を減免せよと要求するギリシャの国民ですから、そうなれば、自国政府に対しても納税の義務を減免してくれと言い出しても何もおかしいことはない!

 現に、今ギリシャで、まともにローンの返済をしている者とかまともに税金を納めている者は少数派なのだとか。

 そのような国がどうして、財政を立て直すことなどできるでしょう。

 トロイカが押し付けた緊縮策のせいでギリシャの経済がぼろぼろになってしまったなんて主張する輩が多いのですが…でも、一旦マイナスになっていた経済成長率も、現在のシリーザ政権が誕生した今年初め頃までには随分回復してきていたことを見逃してはいけません。

 折角ギリシャ経済が立ち直りの気配を見せていたのに、緊縮はもううんざりだなんていう政権が誕生したので、却って混乱を招いてしまったのです。

 いずれにしても、自分たちに救済の手を差し伸べてくれた相手方に向かって、いろいろな注文を付けるどころかテロリスト呼ばわりする者を誰が相手にするでしょうか。

 そして、誰もギリシャにお金を貸すことがなければ、ギリシャの政府が機能しなくなるのは時間の問題。だって、公務員に給与を支払うことができなくなれば、役所を開くこともできないのですから。銀行の営業再開も難しいでしょう。7月7日からは、銀行の業務が再開される予定になっていますが、どうやって必要な資金を確保するつもりなのでしょう?

 気の毒ですが、銀行の営業再開は相当難しいとしか思えません。

 ということで、国民の多くがその厳しい現実に気が付くには、それほどの時間はかからないでしょう。

 あと1週間もしたら、ギリシャの政情は極めて不安定になるのではないでしょうか。
(オフィシャルブログ『経済ニュースゼミ』より7月6日分を転載)

おがさわら・せいじ 1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。以降、経済コラムニストとして活躍。メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。著書に『マクロ経済学がよーくわかる本』(秀和システム)、『ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる』(秀和システム)、『経済指標の読み解き方がよーくわかる本』(秀和システム)がある。