野田内閣と民主党憲法調査会が、選挙権年齢を「18歳以上」へ、民法の成年(成人)年齢を18歳へ引き下げる検討を始めた。肝心の憲法改正論議を先送りするための逃げ道にしている疑いはある。しかし、国づくりの責任を若い世代と分かち合うことになる18歳選挙権、18歳成人自体は正しい方向だ。野田佳彦首相(54)は-同時に憲法改正論議に乗り出すべきなのはもちろんだが-18、19歳の若い世代を早期に大人の仲間に迎え入れるため、指導力を発揮してほしい。

人口減少時代だからこそ

憲法改正手続きを定めた国民投票法は投票権年齢を本則で18歳以上としたが、成人年齢や選挙権年齢などを引き下げる関連法の整備が前提となっている。この前提が整わなければ投票権年齢は20歳以上に据え置かれてしまう。

 これからの日本を担う世代は、一昨年まで世界第2位の経済大国の座を保ってきた世代よりも、刺激的だが厳しい道を歩むことになるだろう。

 厚生労働省が1月30日に公表した将来人口推計(中位推計)は、2010年に1億2806万人だった人口が半世紀後の2060年には32.3%減って8674万人になると予想する。同年の高齢者(65歳以上)は総人口の39.9%にもなるという。

 人口減少にはいい面があるし、健康寿命が世界一の日本は高齢者の定義を「75歳以上」にして経済・社会活動に携わる人を増やせる。それでも、人口減少が、繁栄の基盤である経済規模を小さくする要素であることに変わりはない。

 独立と繁栄のため日本国民は、これまでとは違う国家社会の運営、生活設計をしなければならない-憲法改正が欠かせないわけである-。創意工夫とたゆまぬ努力は一層必要になるのだ。

 そんな時代だからこそ、18歳と19歳の世代(およそ240万人)を大人に迎え入れて自覚を促し、国づくりに若い活力を注ぎ込むという大局的見地に立つ方がいい。ローン契約のトラブルなどの懸念はいかにも過保護で小さい話だ。

 法務省の2009年資料では英独仏など141カ国が18歳成人だ。東日本大震災であれほど整然と我慢強い行動をとった日本人が外国人に劣るわけではあるまい。

 法制審議会の民法成年年齢部会最終報告書(2009年7月29日)は「18歳をもって『大人』として扱うことは、若年者が将来の国づくり中心であるという国としての強い決意を示すことにつながる」と記したが、その通りだ。

 少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満へ引き下げることも欠かせない。犯罪を抑止して国民の暮らしの安全を高め、また大人としての権利と責任をまっとうさせる上でも18歳、19歳の犯罪者は刑事裁判で処罰されなければならない。

憲法審査会で議論を

 政府は2月半ばに事務次官らによる「年齢条項の見直しに関する検討委員会」を開き、具体的検討に入るが、藤村修官房長官(62)は1月26日の記者会見で「十分、慎重に検討していく」と、のんきな発言をした。輿石東民主党幹事長(75)にいたっては26日の会見で「党内では話題に上がったことはあっても、本格的な議論はしていないので、そう簡単に(選挙権年齢引き下げの)結論は出ないでしょ」と語った。

 しかし、民主党は(1)18歳成年(2)18歳選挙権(3)少年法適用は18歳未満-を柱とする「成年年齢引き下げ関連法案」を、2000年に参院へ、2005年に衆院へ提出していたではないか。

 また、政府と民主党憲法調査会だけでなく、衆参両院の憲法審査会の場でこそ-憲法改正をめぐる論議と平行して-検討を急ぐべきだ。それが、野田首相に本当にやる気があるかをはかるリトマス試験紙になる。
(政治部 榊原智)