ギリシャがついに破綻した。急進左派連合シリザ政権の誕生から始まったギリシャ危機であるが、ついに最悪の結果となってしまった。ギリシャは2012年の救済合意により、年金改革と公務員のリストラを中心にした緊縮財政を採ってきた。しかし、もともと産業の脆弱な国家であるため、これはギリシャの貧困化を招く結果になってしまっていたわけである。

 この国民の不満に付け入ったのが急進左派連合シリザであり、年金の受給を従来通りに戻す、解雇した公務員を復職させる、公的企業の民営化は行わない、低所得者への給付を増やす、最低賃金を引き下げる、という「配る」政策を掲げ、その財源は債権者との交渉やドイツからの戦後賠償などで賄うとしたわけである。それを国民が支持し政権交代が発生したわけであるが、当然、このような政策を他国が認めるわけもなく、財政面から行き詰まったというのが今回の結果だといえる。

 そして、この政権交代の最大の問題点は、モラルハザードの悪化である。もともと、労働意欲とモラルが低く産業基盤が脆弱であったギリシャであるが、極左政権の誕生でこれがさらに悪化してしまったのである。『借りたものは返さなくてはいけない』これは当たり前の道理であるが、これが通用しないのがギリシャであり、ただでさえ『働いたら負け、返したら負け』の社会が更にひどい状態になってしまったのである。近代史において、最も破綻した国がギリシャであり、過去200年の内、100年は破綻状態にあったのがギリシャなのである。このような国民性も近代化とユーロへの加盟により変わるかと思われたが、それは無理な話であったようだ。

 2011年、私がギリシャに行った時もそれなりにひどかったが、今のギリシャはこれが更に悪い方向に進んでいるといえる。私が訪問した際も、アテネ空港で荷物が回転台に出てこない。クレームを付けてもまともに対応しようとしない。という有り様でほとほと困り果てた記憶がある。最終的に見つからなかったわけであるが、航空会社は保証をしようとせず、保証を得るのにも一苦労した覚えがある。これがギリシャの国民性なのだろう。
5日、ギリシャ国民投票で財政再建策を拒否する反対派の勝利を確信し、アテネの広場で喜ぶ若者ら(沢田博之氏撮影・共同)

 また、今より良いと思われる2011年時点でも、地元の商店などは最悪の状況であった。タバコはあって1銘柄、ジュースなども1、2銘柄しかなく、商品棚はガラガラで、ものがない状態になっていた。その理由には様々なものが有ると思われるが、外資などが経営する品揃えがしっかりしたチェーン店に客を奪われたものと思われる。アテネオリンピックとユーロ加盟を機に、ギリシャにも海外の大手チェーンが参入し、それがギリシャの脆弱な地元産業を崩壊させてしまったわけである。

 外国人に大人気であり、海外資金が潤沢に手に入るミコノスなど外国人観光客向けの島や施設は他の欧州諸国と変わらないが、それ以外の島や地域は開発途中のリゾート案件が雨ざらしになっており、建設中の建物や売り物件だらけの状態であった。バブルの爪痕といえばそのとおりなのだが、問題はその後の対応といえるのであろう。すべてそのまま止まっているのである。

 また、港は役人とつるんだ得体のしれない人たちが支配しており、ヨットの係留には役人への支払いと別にチップを要求される有り様であった。そして、その役人たちも給料が払われていないので、係留代を給料代わりに貰っているというのである。また、有料道路や有料の橋も同様で、給料がもらえないから、料金を給料代わりに着服しているとのことであった。これでは公共事業の採算があうわけがない。

 さらに、今回はシリザの選挙の公約と行政対応がそれを拡大させてしまっている。シリザは低所得者向け融資の差し押さえを許さないとしているので、借金を払わなくても差し押さえされることがないのだ。そのため、低所得者は払える払えないにかかわらず、借金を払おうとしないのである。

 そして、これは個人の話だけではない。国や地方公共団体が公共事業の代金を払わず、公共事業を引き受けている企業も下請けや従業員に代金や給料を払えない状態になっており、これを手形のジャンプ(日付だけを先送りする)でごまかしている状態なのである。代金や借金を払わなくても許される社会が生まれてしまっているのである。これがギリシャの現実であり、社会であり文化なのだろう。

  最後にギリシャ財務大臣の言葉で締めたいと思う。

 「最も破綻した国に史上最大の融資を行うことは、人道に対する犯罪である」