沖縄で大きな影響力を持つ二大県紙の琉球新報と沖縄タイムスは、3月14日付朝刊1面のトップ記事で、同じニュースを取り上げた。在日米海軍の輸送ヘリと小型輸送機各1機が(3月)13日に-沖縄県などの自粛要請があったにもかかわらず-民間空港である石垣空港の使用を「強行」したというもので、総じて批判的なトーンだった。このヘリは中将の搭乗を意味する三つ星マークがついており、米第7艦隊司令官(スコット・スウィフト中将)の専用機だった。実は、司令官は東日本大震災の追悼式に出席後、艦隊へ帰還するため石垣空港でヘリに乗り替えたのだという。空港使用の自粛要請自体も疑問だが、そもそも第7艦隊の司令官が旗艦へ戻るのに、空港を使わせたくないというのは了見が狭すぎないか。

震災追悼式からの帰途

 第7艦隊はトモダチ作戦で救助・救援に奮闘してくれた。その縁で、司令官は3月11日、都内での政府主催の大震災1周年追悼式に出席。13日に厚木基地から輸送機C12で石垣空港へ飛び、司令官専用ヘリHH60に乗り換えた。米軍機の空港利用は待機を含め1時間15分だった。

 日米地位協定の第5条は民間空港の使用を米軍に認めている。今回、米軍は事前に使用届を出していた。司令官の搭乗は公表されなかったが、艦隊行動の秘匿と軍要人の安全確保から当然だろう。

 14日付朝刊の見出しはこうだ。

 【琉球新報】「米軍が石垣空港使用」「自粛要請も強行」「08年以来 周辺で抗議集会」(以上1面)「『緊急』に疑問符」「米軍 石垣空港使用強行」「恒常化の懸念も」(以上2面)「米軍機石垣飛来 市上空旋回に怒り」「観光への影響懸念も」(以上社会面)

 【沖縄タイムス】「米軍機、石垣空港使用」「県・市の自粛要請無視」「知事、緊急外使用に『遺憾』」(以上1面)「軍利用に拍車 市民警戒」「石垣に米機 一方で歓迎派も」(以上社会面)

 沖縄タイムスは、市民有志でつくる八重山防衛協会のメンバーが「トモダチ作戦」に感謝する横断幕を掲げたことに触れたが、全体として米軍の空港使用に批判的なトーンだったことに変わりはない。琉球新報の歓迎の動きへの言及は沖縄タイムスよりそっけなかった。司令官搭乗の可能性は琉球新報だけが言及したが、トモダチ作戦と関連させる視点はなかった。

 2紙が、司令官の大震災追悼式出席をキャッチしていたかどうかは分からないが、大震災1周年のこの時期、トモダチ作戦を思い出し、少しは寛容になってもよさそうなものだ。

中国軍が喜ぶ?

 国家間の同盟も、人と人との心の絆が基盤だ。あまりに狭量な態度は日米同盟深化に逆行し、沖縄県民を含む日本国民の安全を損なう方向へ作用しかねない。
 沖縄県は緊急時以外の民間空港の使用自粛を米軍に求めてきた。仲井真弘多(ひろかず)知事(72)も2紙もこの自粛要請を破ったとして反発した。しかし、沖縄は今や国防の最前線となっている。その地域での同盟国軍への過度の制約は中国軍を喜ばせるだけだと思われる。

 2紙は、3月16日に中国国家海洋局の海洋調査・監視船が尖閣周辺の領海に侵入したことは地味に報じるばかり。北朝鮮の長距離弾道ミサイルに備えた地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)配置には社説で、「南西諸島に新たな緊張を持ち込むことにならないか心配」(沖縄タイムス、3月20日付朝刊)「軍備増強のエスカレーションを招きかねない」(琉球新報、3月23日付朝刊)と懸念する。

 身近に迫る外患は気にならないのだろうか。
 (政治部 榊原智)