山崎元(経済評論家)

 遠くのギリシャより、近くの中国。上海総合指数が1カ月で約3割も暴落した中国の株価の行方が気になる。そう思っていたら、「中国の証券当局である証券監督管理委員会は4日、大手証券21社に対して、上場投資信託(ETF)への総額1200億元(約2兆4000億円)の投資を実行に移すよう求めた」というニュースが入ってきた。

 1年間で約2・5倍に膨れあがってから暴落を始めた中国に対して、たった2・4兆円の買い支えは、多分「焼け石に水」であろうが、どのくらいの規模と勢いのバブル崩壊なのかを見る上で、今後の推移を注目したい。

バブル景気真っ只中の東京証券取引所の場立ち
=1988年6月10日
 上海総合指数の株価推移を眺めると、1989年末に最高値を付けて暴落した日本のバブルの株価推移によく似た格好をしている。日本の場合も、92年の宮沢喜一内閣で公的年金資金を株価の買い支えに使うことを決めた。

 今回の中国株バブル(「バブル」と呼んでもいいと思う)は、かつての日本株のバブルと崩壊の流れを早回しで見ているようだ。

 株価に対して「即効性」のある対策は、株式を買うことか、又は売ることを制限する「需給対策」だ。需給型の株価対策は株価を一時的に上げるだけ。企業の実態が変わらず株式の価値自体が上がるわけではないので、一過性の効果しか持たないと考えるのが定石。しかし、需給型の株価対策以外にすぐに効く対策が無いので、時の為政者は需給型の対策の誘惑にかられやすい。

 そこで焦って買いを入れると、そのこと自体が株価の割高に危機感を抱いている証拠だと足元を見られてしまう。

 数年にわたって行われた日本の「公的資金の買い」は、買っている間だけ株価の支えとなり、買い終わると株価が下がることの繰り返しで、目端の利く市場参加者の食い物にされて、年金積立金に高値で買った株を積み上げる散々な結果に終わった。

 今や大国を気取る中国政府が、没落した「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の国の教訓を生かせないとは情けない話だが、「たまらなかった」のだろう。お気の毒なことだ。

 中国の場合、バブル崩壊時の日本ほど市場の国際化が進んでいない。「公的資金の買い」の裏をかいて儲けた「外国人投資家」のような参加者層が薄いことや、経済を力ずくででも管理する意思を有する政府の下にあるので、あるいは、株価対策はかつての日本の場合よりも効果を発揮するかもしれない。

 しかし、「需給対策によって上がった株価は信用できない」というのが、株式投資の大原則だ。

 日本の教訓をもう一つ。株価下落の後には、少々遅れて不動産価格の下落がやって来るはずだ。中国経済の成長鈍化のペースは案外速いのかもしれない。注意しておこう。