高橋史朗(明星大教授)

 朝日新聞は2014年の8月5、6日付朝刊で、慰安婦問題をめぐる同紙の過去の報道に誤報があったことを認めたが、議論をすりかえ、国際広報もせず、自らの責任を明確にして謝罪することもしなかった。

 盧泰愚大統領(当時)は、慰安婦問題は「日本の言論機関の方がこの問題を提起し、我が国の国民の反日感情を焚(た)きつけ、国民を憤激させてしまった」と指摘した。「従軍慰安婦」と「女子挺身(ていしん)隊」とを混同し、吉田清治氏のウソの証言を報道した朝日新聞が、日本は「性奴隷」国家であるという不当な国際誤解の元凶であったことが明白になった以上、言論機関としての社会的責任、国際的な説明責任が問われるのは当然である。

 中韓との教科書騒動の元凶も日本の新聞報道であったが、このような「反日日本人」のルーツは、占領政策を継承し拡大再生産していく「友好的日本人」による「内的自己崩壊」を仕組んだ占領軍の「精神的武装解除」政策にあったことを見落としてはならない。

 憲法をはじめとする占領政策をアメリカが押しつけたことのみを問題視する傾向があるが、そのような責任転嫁はもはや許されない。在米占領文書によれば、米軍は日本の歴史、文化、伝統に否定的な「友好的日本人」のリストを作成し、占領政策の協力者として「日本人検閲官」(約5千人)など民政官を含む各分野の人材とし高給を与え積極的に登用した。

 これらの占領軍と癒着した「反日日本人」が戦後日本の言論界、学界、教育界などをリードしてきた事実を直視する必要がある。

 ドイツと違って、軍国主義は日本人の道徳(精神的伝統)や国民性、神道に根差していると誤解した米軍の対日文化・心理戦略が、日本人の道徳、誇りとアイデンティティーを完全に破砕する「精神的武装解除」政策として実行され、「内的自己崩壊」をリードする「反日日本人」を活用して、背後から巧妙にコントロールした。

 在英秘密文書で共産主義者が憲法制定や公職追放、戦犯調査などに深く関与し、米戦略諜報局の対日占領計画の背景に、英タヴィストック研究所の「洗脳計画」があったことが判明した。

 伝統文化や男らしさ女らしさを否定する教育など、抵抗精神を弱体化する「洗脳計画」によって、占領軍の眼をはめこまれた「反日日本人」が日本の国際的信頼を自ら貶(おとし)めてきたのである。

 昭和20年8月15日、朝日新聞は「玉砂利握りしめつつ宮城を拝しただ涙」との見出しで、「英霊よ許せ」「『天皇陛下に申し訳ありません…』それだけ叫んで声が出なかった」(一記者謹記)という記事を掲載している。

 朝日が「反日」に転じた契機となったのは、占領政策に反するという理由で発行禁止になったことにあり、以来朝日は発行停止にならないように、占領軍の目で反日記事を書くようになった。

 江藤淳はこの占領下の「閉ざされた言語空間」について鋭く指摘したが、「反日日本人」が戦後日本に与えた影響について歴史的に検証し総括する必要があろう。単純な米中韓との対立図式では捉えられない戦後の思想的混迷の原点がそこにあると思うからである。

 中韓首脳会談で慰安婦問題の共同研究が合意されたが、河野談話の作成経緯に関する検証結果を踏まえた新談話を発表し、不当な国際誤解を払拭する必要がある。