麻生太郎首相(68)の指示で自民党が国会議員の定数削減など国会改革、国会リストラ策の検討に乗り出すことになった。次期衆院選での党マニフェスト(政権公約)への盛り込みが念頭にある。国会改革、国会リストラ策の話は、苦戦が予想される衆院選に向け反転攻勢をとるために、小泉純一郎元首相(67)が麻生首相に行った助言から始まったものだ。だが、首相の指示も自民党幹部らの反応も中途半端で、国民が評価するような結論は出そうにない雰囲気だ。麻生自民党は、国政選挙での争点設定の大切さや、国民の党への厳しい視線を本当のところは分かっていないようだ。こんなノンビリぶりでは、行き着く先は政権交代になりかねない。

「思い切っていけ」

 通常国会初日の5日、国会議事堂2階の自民党控室で、笹川堯(たかし)総務会長(73)らと雑談に興じていた小泉氏は、居合わせた麻生首相にこう語った。
「選挙は守りに入ったらダメだ。攻めの姿勢がなければならない。18日の党大会で一院制や国会議員の定数半減くらい(首相が)言ってもいい」
 小泉氏は首相の背中を「思い切っていけ!」と叩いて励ました。
 そばにいた若手衆院議員は「冗談かと思った」が、小泉氏は本気だった。16日の自民党有志の「衆参両院統合一院制議連」(会長・衛藤征士郎元防衛庁長官)の総会に出席し、「自民党が衆参を統合する原動力になってくれ。マニフェストにできるよう議論してほしい。微力だが私もお手伝いする」とぶちあげた。
 衛藤氏(67)は、小泉氏に呼応し、衆参議員の定数の合計が722であるのを踏まえ、(1)衆参を合併し約3割削減して定数500の国民議会を創設(2)都道府県単位の大選挙区制(3)憲法改正が必要なため2019年1月以降の選挙で実施-の試案を提示した。
 国会議員が痛みを感じるリストラ策で、憲法問題を避ける小沢民主党を改憲論議に引きずり込むきっかけにもなる提案だろう。
 小泉氏らの動きは、麻生首相が思い切った国会改革を唱える応援団になるはずだった。

「検討してほしい」

 麻生首相は18日の自民党大会で「政治改革が必要だ。国会の制度やあり方を見直さなければならない。衆参で似通う選挙制度の見直しも必要だ。党内で議論を進めていただきたい」と演説した。
 さらに首相は翌19日、「衆参の選挙制度や定数を議論してくれ。議員歳費(の削減)も含め検討を」と党役員会で指示した。
 一応、国会改革に乗り出した形だが、「検討を指示」どまりでは、小泉氏が助言したような「攻めの姿勢」にはならない。国民や党内にインパクトを与えられないからだ。
 首相を支えるべき細田博之幹事長(64)でさえ、19日の記者会見で、定数削減について「衆院小選挙区を今の300から280なんて言ったら大混乱だから難しい」と、大胆さとはほど遠い発言をしている。首相自身も、一院制の検討は否定した。
 いったい首相は何をしたかったのか。党大会でただ言ってみただけなのか。
 どうせなら首相は、党大会という絶好の発信の場で、党内や永田町がハチの巣をつついたようになる大胆な国会リストラ案を国民に約束すればおもしろかった。それを反対派と戦ってマニフェストに盛り込む「麻生劇場」を開幕するくらいの気概を示せばどうなったろう。
 各種の世論調査で「民主党中心の政権」を望む声が多くなったのはなぜか。さまざまな出来事の積み重ねの結果、国民は、自民党が自ら血を流す覚悟でもろもろの改革に取り組む政党だと信用しなくなったからだ。
 大胆な国会のリストラは、政党助成金の返納や廃止と組み合わせれば、国民の信を取り戻すきっかけになるかもしれないのに勿体(もったい)ないことをしたものだ。
(政治部 榊原智)