安倍宏行(Japan In-depth 編集長)

 ようやく、というべきか。テレビ局がいよいよインターネット戦略に本腰を入れ始めた。2015年はテレビにとって「ネット戦略元年」として記録されるだろう。

ニュース専門ネットチャンネル


 2015年一番のニュースは、この春のフジテレビの24時間ニュース専門ネット局「ホウドウキョク」の開局だろう。これまでもキー局のニュース専門チャンネルとしては日本テレビの「日テレNEWS24」やTBSの「TBSニュースバード」などがあったが、ネット専門に24時間オリジナルニュースコンテンツを流す試みは日本初だ。フジテレビ内のスタジオから記者、特派員、デスク、解説委員らが総動員でニュースを生解説する。

 開局当初はスマートフォン向け放送局NOTTV2(ノッティービーツー)とフジテレビの動画配信サイト、FOD(フジテレビオンデマンド)の有料会員向けとしてスタートしたが、既に「ホウドウキョク」のホームページで無料コンテンツが視聴できる。無論スマホでも視聴可能だ。第2段階として無料コンテンツが増えていくという。既に過去放送分をアーカイブ化しており、様々なデバイスで検索して視聴できるようになっており、ニュースをスマホで持ち歩く時代を見据えている。

 さて、他のキー局のネット戦略はどうなっているのか。テレビ朝日は今年3月、サイバーエージェントと共同出資による動画配信事業会社およびニュースチャンネル事業会社の設立で合意した。1社が定額制動画配信プラットフォーム事業を行う株式会社「Abema TV」であり、もう1社がニュースチャンネル事業を行うといい、スマホやタブレット向けに様々な番組を提供する予定だ。

 TBSは2011年12月に日本経済新聞社と「新メディア」や経済・社会のグローバル化に伴い成長する「新市場」に焦点をあてた コンテンツの開発・提供などで業務提携することで合意。共同事業組合「日経・TBSスマートメディア」を設立し、2012年9月にスマホ向け新サービス「日経サプリ with TBS」の配信を開始し、TBSの番組に連動した経済解説動画などを配信しているが、あくまで単独の有料サービスに止まっており、ニュースのネット生配信にはなっていない。

 フジテレビ「ホウドウキョク」の動きを他のキー局も注目している。テレビ朝日の報道局幹部は「(ニュースの配信は)正直どのプラットフォームがメインになるかわからない。もしかしたらFacebookのようなものになるかもしれない」とし、当面は全方位で臨む姿勢を示した。

 また、日本テレビの経営戦略幹部は「うちも日テレNEWS24などのニュースコンテンツがある。フジテレビの『ホウドウキョク』が成功してくれれば、さらなるネット戦略拡大に向け、社内的に大義名分が出来る」と述べ、ニュースのネット配信の次の戦略を見据える。

定額制動画配信サービス


6月18日、サービス開始について報道陣に説明するネットフリックスのグレッグ・ピーターズ日本法人社長=
 さて、そのフジテレビがネット・メディア戦略の二の矢として6月に打ち出したのがアメリカ定額制動画配信サービス最大手、Netflixとのオリジナル番組の製作・配信だ。今年秋に、海辺のシェアハウスに同居する若い男女6人の恋愛模様を描いた人気番組「テラスハウス」の新作などを提供する。世界50か国に6200万人のユーザーを抱えるNetflixとフジとの協業だけに耳目を集めたが、ふたを開けてみれば資本提携ではなく、単なるコンテンツの共同製作。他局もNetflixと共同製作をやろうと思えばやれるわけで、基本的に資本関係にある日テレとHuluとの関係とは全く違う。

 その日テレ・Hulu連合は、フジ・Netflixの発表に先立ち、初の地上波・ネット連動型共同ドラマ製作を手掛けていた。それが、唐沢寿明主演のアクションドラマ「THE LAST COP(ラストコップ)」第1話をまず地上波で放送し、第2話以降をHuluで配信するという初の試みだ。担当プロデューサーは「地上波ではいろいろな制約があって製作出来ないようなシーンもネットなら可能なのが魅力。時間的な制約もない。ドラマの製作者としてとてもチャレンジングだ」とオリジナル作品の持つ可能性に期待をかける。前出の日テレ幹部も「評判は上々。動画視聴者数も伸びている」と評価する。

 とはいえ、今回の共同製作はあくまで話題づくりの側面が強い。真の狙いはあくまで、ネット動画配信を通じて地上波のリアルタイム視聴を増やすことにある。そうした狙いを、日本テレビは系列局に説明し、Hulu上にコンテンツ提供を依頼し、実際かなりの数の番組が系列局から提供されている。一見、日本テレビ本体と系列局、一体となってネット戦略にまい進しているかに見えるが、取材してみると系列局から日本テレビのHulu重視の戦略に関し不安の声が漏れ聞こえる。