番組発でネット拡散へ


 フジテレビは4月1日、インターネットなどを通じて新たな形でニュースを配信する専門局「ホウドウキョク」を立ち上げた。このプロジェクトリーダーを務めるのが報道局次長の福原伸治さん(52)だ。「テレビとネットの感覚を融合させた新しいメディアに育てたい」と語り、前例のない試みの船出を楽しんでいる。

 プロジェクト第1弾は、スマートフォン(スマホ)、タブレット、パソコンといったマルチデバイス向けニュース番組の24時間生放送・生配信。スマホ向け放送局「NOTTV(ノッティーヴィー)」とフジの動画配信サービス「フジテレビオンデマンド(FOD)」上でスタートする。

数々の話題番組を手掛けてきた福原伸治さん。「いい意味での緩さがフジテレビの良さ」と語る=東京・台場(斎藤浩一撮影)
 スタジオから最新ニュースを伝えていくのを基本として、テレビと同様、時間によって番組名や出演者が入れ替わるタイムテーブルを組む。ただ、「イメージはテレビよりラジオに近い」といい、ユーザーとの距離を近づける仕掛けを模索している。

 「さまざまな情報端末が普及する中、テレビが時代遅れになってしまう危機感があった。既存のテレビニュースをただ24時間に延ばすのではなく、番組発の話題がネットで拡散していくような作りにしたい」

 具体的には、平日夜には国際政治学者の三浦瑠麗さんをはじめとする論客を日替わりで招き、ニュースを深掘りしていく。また、深夜0時からは、各分野のプロがトーク番組を担当。水曜深夜には作家・歌人の加藤千恵さんと作家の羽田圭介さんが本について語り合うなど、文化やサブカルチャーの話題も充実させる。

 「先を見通しづらい時代だからこそ、世の中の方向性を指し示すような羅針盤としてのニュースが求められている。若い世代から働いている世代まで、世の中の動きを前向きに考えたいユーザーに見てほしい」

 各番組には、フジのアナウンサーや記者、解説委員もフル動員。軍事・安保分野が専門の能勢伸之解説委員が、その分野には詳しくないタレントと安全保障について語り尽くす番組も予定しており、「フジの専門記者をユーザーに認知してもらえれば」と期待する。

 もっとも、フジ報道局を挙げた“総力戦”になるため、現場は試行錯誤の連続のようだ。「仕事は大変でも、面白いことをやれば受け入れてくれる人もいる。必ずしも合理的ではないことを面白がってくれるのはうれしい」と、充実した表情を見せる。

 NOTTVもFODも有料契約が必要だが、ホウドウキョクの公式サイトでは番組のうち1日12時間程度を無料で配信する。初夏にはプロジェクト第2弾として公式サイトを拡充、データや番組アーカイブも充実させる予定。「第3弾はスマホアプリを出したい。時間や場所を選ばず、ニュースに触れられるサービスを進化させていく」と力を込める。

常に新しく面白いことを


 先進、先鋭-。福原さんの過去の仕事を振り返ると、そんな表現がぴったり当てはまる。

 数多くの情報番組を手掛ける中、「これまで新しいこと、誰もやっていないことをやり続けてきたつもりです。会社がよく許してくれたなぁと思いますが…」と笑う。演出を担当した科学情報番組「アインシュタイン」(平成2年)や子供番組「ウゴウゴルーガ」(4年)では、CG(コンピューターグラフィックス)を使ったバーチャル(仮想)スタジオをいち早く導入。特に「ウゴウゴルーガ」では、「ミカンせいじん」をはじめとするCGキャラクターが人気を集めた。

 「バーチャルスタジオで生放送をやったのは恐らく初めてでしょう。インターネットを使ってデータを転送したり、テレビ用のプロ機材に一般家庭用の機器をつないだり、制作側でもかなりチャレンジができましたね」

 一方、インターネット連動ドラマ「秘密倶楽部o-daiba.com」(12年)では、ドラマのストリーミング配信にも挑戦するなどネット時代を先取り。「ビッグデータ」という言葉が一般化していなかった20年には、ブログを解析して近未来の流行を予測する情報番組「近未来予報ツギクル」も送り出した。

 「番組ごとに、いろんなチップを置いてきた感覚はあります。最近、仕事で新しい人に会うと、昔の仕事を見てくれているケースが多くて、ありがたいですね」と手応えを語る。

 これらの担当番組は、日本のネット文化を盛り上げてきた人たちにも多大な影響を与えてきた。特に、KADOKAWA・DWANGOの川上量生会長からは、動画サイト「ニコニコ動画」で使われているテレビのアイコンは、「ウゴウゴ-」のキャラ「テレビくん」からヒントを得たと明かされたという。

 「過去の仕事が新しい仕事につながっている。ネットが一般化し、人間同士のつながりも変わって、面白い時代になりました」

 デジタル、ITの最先端を見つめてきた自身にとって、「ホウドウキョク」は“まとめ”。「新しくて面白いことをやり続けたい。僕はそれだけなんです」と情熱を燃やしている。