山田順(ジャーナリスト)

 最近、出版社の知人から「雑誌がまったく売れない。返品5割がザラになった」という声をよく聞くようになった。『週刊東洋経済』が6万部を割り、『週刊ポスト』『週刊現代』などの男性週刊誌が「なんとか30万部台」というのだから、週刊誌の黄金時代を体験してきた私としては、さみしい限りだ。

 雑誌は1990年代に比べると、販売部数、金額ともに半減し、とくに週刊誌の販売部数は3分の1になっている。しかも、この1月の部数を見ると、週刊誌は前年同月比でなんと11.6%減である。「書店数が減っているなか、コンビニに頼ってきましたが、最近はコンビニの雑誌販売コーナーも縮小されているので、どんどん厳しくなっています」と、販売関係者。
 

「20代向けの女性誌もじきに終わるでしょう」 

 
 そこで、あらためて1月の返品率を見ると、雑誌全体で44.1%である。週刊誌にしても月刊誌にしても、本当に半分が返品されているという惨憺たる状況になっている。
 これでは、「やがて雑誌はなくなるだろう」と思うしかない。実際、最近もいくつかの雑誌の休刊(本当は廃刊)の噂を聞く。

 雑誌の凋落は、男性誌ばかりではない。女性誌も大きく部数を落としている。ブランド付録とのセット販売、コンパクト化など懸命な努力を続けてきたが、販売部数トップ10誌で、部数を伸ばした女性誌はない。去年の上半期に光文社の3誌がわずかに伸ばしただけだ。そのため、広告が部数トップ誌だけに集中し、2番手、3番手の収益が大幅に悪化している。

「もう10代向けは終わった。次は20代向けの女性誌もじきに終わるでしょうね」と、女性誌の編集者は言う。
 

コミック市場はピーク時の3分の1

 
 コミック誌も部数を落としている。『少年ジャンプ』も260万部まで減り、一時期例外的に部数を伸ばした『別冊少年マガジン』は10万部を割った。2014年のコミック誌 (雑誌)・コミックス(単行本)を合わせた販売金額は3569億円で、1986年と同水準。コミック誌の販売部数は3億9755万部で、19年連続のマイナス。これはピーク時の3分の1である。
 そんななか、やはりと思わされたのが、ついに、コミックスの販売部数がコミック誌を抜いたことだ。すでに、販売金額では逆転が起こっているが、部数でも逆転してしまった。
 「コミック誌が売れない分、コミックスでカバーしてきましたが、とうとう逆転です。コミック誌で作家は育つので、この逆転現象は厳しい」と、コミックス誌編集者。

 実際、2014年のコミックスの刊行点数は過去最高の1万2700点。なんと、月に1060冊ものコミックスが出ていることになる。ただし、コミックスの逆転は、『進撃の巨人』1本の爆発的なヒットに支えられたと言っていい。
 

電子書籍が紙も伸ばしているというウソ

 
 ところで、2014年出版物販売金額は1兆6065億円で、前年比4.5%減と史上最大の落ち込みを記録した。その内訳は、書籍が7544億円(前年比4.0%減)、雑誌が 8520億円(前年比5.0%減)となっているが、コミック誌は雑誌に含まれ、コミックスも月刊誌として雑誌に含まれる。

 つまり、日本の出版市場は、書籍7544億円、雑誌4951億円(コミック誌とコミックスを除いた合計)、漫画3569億円(コミック誌とコミックスの合計)の3分野で形成されていることになる。

 それなのに、最近、「紙+電子コミックスを『総合コミックス市場』ととらえると、その4分の1は電子になっていることがわかったのです。むしろ電子書籍の伸長に引っ張られて、紙の本も売り上げを伸ばしている形跡がある」と、言っている専門家がいる。彼は「カニバリズム」は起らないとも主張している。

 次が、電子コミック市場の販売金額の推移だ。これを見て、紙の販売金額を見れば、そう言えないこともない。
 

漫画市場の衰退はアニメ、映画も直撃する

 
 しかし、電子コミックスの大半は紙が提供している。つまり、紙が売れなくなった分、販売チャンネルを電子まで広げただけの話で、電子コミックスの売上が伸びれば伸びるほど、紙のコミック誌とコミックスの売り上げは落ちているのだ。さらに、電子版からの収益は紙に比べたら圧倒的に低いうえ、出版社の取り分は少ない。これは明らかなカニバリズムで、それは書店売上を奪い、出版社を疲弊させ、出版不況を深めていく。

 出版不況という言葉が適切でないというなら、「紙出版不況」「出版社不況」「書店不況」と言い換えていい。

 これらの不況は、明らかに著作者、漫画家を直撃している。日本の出版業界における電子書籍化は欧米とは異なっていることを知る必要がある。

 紙の漫画市場の不況は、紙だけでなく、アニメ、映画市場も直撃する。たとえば、2014年に公開された映画は、半分以上が漫画が原作だ。その主なものを記すと、次のようになる。『テルマエ・ロマエⅡ』『ホットロード』『るろうに剣心』『近キョリ恋愛』『神さまの言うとおり』『寄生獣』『海月姫』。

 日本の紙の雑誌・書籍の売り上げを決定的に奪っていったのは、以前はガラケー、いまはスマホである。スマホの1日の平均使用時間は、中学生までは1時間台だが、高校生では男子が4.1時間、女子は7時間という調査結果がある。20代、30代の社会人も3〜4時間は使っているはずだから、紙の雑誌や書籍など読む時間はない。
 

印刷メディアは実態以上にお金を貰いすぎ

 
 こうした社会背景のなか、LINE上級執行役員の田端信太郎氏が、「若者の○○離れ」の原因について言及したこと(「マーケティングテクノロジーフェア2015でのプレゼン」が、ネットで話題になった。

 彼は、「20代はスマホが本妻、テレビは愛人」という主旨のことを述べ、「(ユーザーの消費時間の)7%のシェアしかないプリント予算に、いまだに広告主は25%も使っているのはおかしい」と言った。

 さらに、彼のプレゼン発言を記すと、次のようになる。

「一言で言いますと、印刷メディアがお金を実態、実力以上に貰いすぎていて、実力以上に貰わなさすぎているのがモバイルだということですね。これ2011年、2012年、モバイルは生活者の時間の10%を取っていますが、広告予算としては1%しか取れてない。
 ここだけでも理論上10倍の伸び代がありますし、さっきの10%といってもメディア接触時間自体がばんばん伸びていくでしょうから、もっともっと伸び代があるんですね。だから新聞や雑誌がどんどん廃刊休刊になり、いろんな新しいベンチャー企業がモバイルグループにどんどん生まれるわけです」

 たしかに、データから言えば田端氏の指摘のとおりで、そのとおりになれば雑誌はやがて死ぬだろう。雑誌を支えているのは部数に比例した広告収入だからだ(コミック誌は例外)。

 ネット広告が、テレビ、新聞、雑誌広告以上に効果があるかどうかは疑問だが、時代は間違いなくこの方向に進んでいる。