2020年に開催される東京五輪のメイン会場となる、新国立競技場の建設計画が猛烈な批判に晒され、政府は抜本的に見直す方向で検討に入った。

 総工費が2520億円という前代未聞の額になった“犯人”とされるのが、新国立のシンボルである「キールアーチ」だ。屋根にかかる2本の流線型アーチは、高さ約70メートル、長さ約370メートルで、総重量は2万~3万トンとされる。アーチをなくせば1000億円以上のコストカットになるとの試算もある。

新国立競技場のデザインに採用された英国の建築設計事務所「ザハ・ハディド・アーキテクト」の作品。内観デザイン(日本スポーツ振興センター提供)
 スケールやコスト面だけでなく、キールアーチ建設を進めるとより根本的な問題に突き当たりかねないと指摘する専門家もいる。建築エコノミストの森山高至氏が語る。

 「巨大な弓形の弧を描くアーチには水平方向に広がろうとする横圧力(スラスト)がかかります。最大1.5万トン程度の荷重がかかるとされるアーチを支えるには、両端にコンクリート製のスラストブロックと呼ばれる基礎を造り、地中深くまで伸ばす必要がある」

 そのアーチの先端部を地中で伸ばしていった先が大問題なのである。JSC(日本スポーツ振興センター)が作成した新国立競技場の模型などをもとに作成した図を見ると、アーチの両端を地中に伸ばしていくと北側で都営地下鉄・大江戸線の「国立競技場」駅にブッ刺さってしまうのだ。

 「大江戸線は地下30メートル付近を走っています。巨大なアーチを支えるスラストブロックは地下30メートル以上まで打たなければならない可能性があり、『駅や線路を貫通させないと競技場が造れない』という異常事態が起きかねません」(森山氏)

 それを防ぐには、地下30メートルより浅いところでアーチ先端部をコンクリートの土台に固める、通常より念入りな基礎工事が必要となる。大手ゼネコン社員の解説。

 「地中に大きな土台を造るために円筒状の掘削機を使うシールド工法と呼ばれる技法を採用する方針だが、競技場周辺は地下に水脈が何本も走っていて、掘ると水が溢れる厄介な地盤だ。そのため基礎工事だけでも数十億~数百億円はかかると思われるが、この“大江戸線対策費”は今回の総工費に含まれているのかどうか」

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