安倍晋三首相(58)は2月の訪米時のバラク・オバマ米国大統領(51)との首脳会談で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加への政治的条件を整えるとともに、日米同盟強化の道筋を付ける成果を挙げた。これらはメディアにおいても、おおむね肯定的に報じられている。そして、安倍首相は今回の訪米でもう一つ、重要な仕事を果たしたことを忘れてはならない。それは、同盟国の首府において、安全保障・防衛面における日本のガッツを示してみせたことだ。

「主権への挑戦容認せず」

 安倍首相は2月22日夕(日本時間23日朝)、ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)で「ジャパン・イズ・バック」(日本は戻ってきた)と題する演説を行い、「日本は今も、これからも、2級国家にはなりません」と強調した。

 尖閣諸島をめぐっては、「日本の主権下にある領土だということは、歴史的にも、法的にも明らかです。煎(せん)じ詰(つ)めたところ、1895年から1971年までの間、日本の主権に対する挑戦など、どこからも出てきておりません。今も、未来も、なんであれ挑戦を容認することなどできません。この点、わが国の決意に関し、どの国も判断ミスをすべきではありません。日米同盟の堅牢(けんろう)ぶりについて、誰も疑いを抱くべきではないということであります」と語った。

 首相はこの演説をガッツポーズで締めくくった。

 演説後の質疑応答で首相は、オバマ政権が尖閣を日米安保条約の第5条の対象に含む-米国の対日防衛義務の対象となる-ことを明確にしていることを評価した上で、次のようにも語った。

 「基本的には、尖閣について、われわれは米国に『これをやってください、あれをやってください』というつもりはありません。この尖閣については、私たちは私たち自身の力によってしっかりとこの日本の国の領土を守っていく考えであります」

尖閣対処への決意表明

 首相は1月14日、北朝鮮の核実験を受けた電話会談で、オバマ大統領から「米国の核の傘により提供される拡大抑止を含め、日本に対する米国の防衛コミットメントは不動であることを明確に再確認したい」との発言も引き出している。対北朝鮮に限った発言ではもちろんない。

 拡大抑止、安保条約第5条の対象との確約を得た上で、首相は、実際の尖閣をめぐる事態への対処を日本が行う決意を表明したわけだ。

 ワシントンでの首相の発言は、中国政府と中国軍への明瞭なメッセージだ。彼らは「力の信奉者」であり、その行動をルール(国際法)順守へ改めさせるには、パワーバランスを日本側、つまりは日米に有利な状況へ引き戻す必要がある。

 首相は2月28日の施政方針演説でも「国民の生命・財産、わが国の領土・領海・領空を断固として守り抜く決意であります」と語った。

 首相が示したガッツは、パワーバランスを回復する努力を進めるに当たって欠かせない前提条件なのだ。世論は平和ぼけから脱しつつある。日本の弱点はむしろ、ふがいない「政治」や「霞が関」にあったからだ。日本の政治に冷静なリアリズムを支えるガッツがあれば、自衛隊や日米安全保障協力の強化の取り組みは、その効果を格段に増すことになる。

 日本の首相の発言が意外だったのだろう。新華社は2月25日、「安倍首相の言う『戻る』とは、歴史の古い轍(わだち)への回帰を指すのかと、国際社会は警戒心を抱かずにはいられない」と反応した。そんな国際社会がどこにあるのかとも思うが、首相の発言は早くも効果が表れ始めたようだ。
(政治部 榊原智)