憲法96条改正問題が、夏の参院選の争点になった。すでに衆議院では改憲を志向する議員が4分の3以上を占めている。参院選の結果、改選・非改選合わせて 改憲派が3分の2以上の議席を占めれば、国会による憲法96条改正案の発議、そして国民投票の実施が、現実の政治課題にのぼるだろう。

 安倍晋三首相(58)はどのような改憲スケジュールを描くだろうか。

 憲政史上初めての国民投票の時期を予想すれば、早くて2014年12月、遅くとも15年9月になるのではないか。政治情勢次第では、国民投票に次期衆院選を合わせた「改憲ダブル選挙」になる可能性も十分にある。

千載一遇の好機

 安倍首相は4月23日の参院予算委員会で、「政治は現実でありますから、『3分の2』形成の上で96条改正は多くの議員の賛成を得られる。96条改正は国民の手に憲法を取り戻すことにつながっていく。自由民主党総裁としてチャレンジしていきたい。7月の参院選でも(公約に)堂々と掲げて戦うべきだ」と語った。

 首相がこう強調するのは千載一遇の好機が訪れようとしているからだ。

 自民党、日本(にっぽん)維新の会、みんなの党の憲法観や主張する改正内容には、実は異なる面がある。しかし3党は、「主権者国民」が判断を下す国民投票を実現しやすくする96条改正を目指す点では共通している「現実」があるのだ。

 衆議院の定数480。3分の2ラインは320議席だ。昨年12月の衆院選の結果、憲法改正を唱える自民党、維新の会、みんなの党は計366議席で、衆院の76.2%。3分の2ラインどころか4分の3超を占める。

 一方、参議院は定数242。3分の2ラインは162議席だ。非改選の改憲勢力は60議席。3分の2ラインに達するには参院選で、改憲勢力が102議席得ることが必要だ。昨年衆院選をもとに試算すると、自民党61議席など改憲勢力は計93議席を得る。

 3分の2ラインまで9議席ほど足りないが、民主党にも改憲志向の議員が存在する。参院選後に憲法問題を大義名分にした新党結成など政界再編があれば、参院においても改憲勢力が3分の2ラインに達することは十分あり得る。

 安倍内閣の高支持率を考えれば、自民党がもう少し多く議席を得るかしもれないし、今は後ろ向きな公明党が態度を豹変(ひょうへん)させる可能性もないわけではない。

クリアすべき課題

 安倍首相にとって参院選後の憲法に関する課題はもう一つある。それは集団的自衛権の行使容認のための憲法解釈の変更だ。その方向性は12月の新防衛大綱策定時に出るといわれている。96条改正の前に越えるべき大きな山といえる。

 また、憲法改正案を発議する衆議院の正当性を確かなものとするため、衆院の定数是正・選挙制度改革の結論を出すことも、政治的に必要だ。

 民主党政権下の「サボタージュ」で残された国民投票における3つの宿題も残っている。(1)投票権年齢の18歳以上への引き下げ(2)国民投票運動時の公務員の政治的行為のあり方(3)憲法改正以外への国民投票の拡大の是非-だ。

 これらを処理した上で、96条改正の審議、発議が初めてできる。そして、国会の発議から「60日から180日以内」に国民投票の投票日が設定される。

 これらの取り組みには、衆参とも任期中の同じ国会議員が当たることが望ましい。さらに、首相の自民党総裁任期が15年9月までであることを考えると、冒頭に指摘した時期に、私たちは初めての国民投票に足を運ぶことになるのではないか。これは、国民の手による新しい国づくり、世直しの第一歩になる。
 (政治部 榊原智)