2013年の米中首脳会談で習主席は尖閣諸島への強い執着を見せたが、オバマ大統領は「日本は米国の同盟国だと認識する必要がある」「東シナ海で(挑発的な)行動をとるべきではない」と、中国の軍事的冒険を認めない姿勢を示した

 米国のバラク・オバマ米大統領(51)と中国の習近平国家主席(60)は7、8日の首脳会談で尖閣諸島(沖縄県石垣市)の問題を長時間話し合った。また、習主席は米中関係について「新型の大国関係」を主張し、「太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間がある」と語った。米中2カ国で-つまりは日本抜きで-アジア太平洋の秩序、諸問題を仕切ろうという誘いだ。オバマ大統領は同調しなかったが、これほど日本の国益に反する構想もない。

外国が領土論じる屈辱

 米中首脳会談で習主席は尖閣諸島への強い執着を見せたが、オバマ大統領は「日本は米国の同盟国だと認識する必要がある」「東シナ海で(挑発的な)行動をとるべきではない」と、中国の軍事的冒険を認めない姿勢を示した。

 安倍晋三首相(58)は13日、オバマ大統領と電話で会談し、米中首脳会談について「大統領が日本の立場を踏まえた上で対応していただいたことに謝意を表明する」と伝えた。

 それでも米中会談は、日本にとって完全に満足できるものではない。日米地位協定は尖閣諸島の大正島と久場島に米軍の射爆撃場を設定している。こんな明白な事実があっても米国が日本の領有権をはっきり、中国に説かないのは解せない話だ。尖閣諸島をめぐる中国の主張はもちろん理不尽きわまりない。

 外国の首脳同士が日本の領土をめぐる問題を長時間話し合うことは、本来、日本にとって恥ずかしく、危うい事態だと思った方がいい。戦前なら、こんなことをされるのは非力な小国や保護国、植民地化寸前の国だった。

 現代では一国の単独防衛は考えられない。米国は重要な同盟国、友邦であり、日米同盟で安全を図るのは国策の基本だ。その点で今回のオバマ大統領の言動は歓迎できるが、日本の首脳がいない場で、日本の領土をめぐり外国の首脳が駆け引きすることに一喜一憂していていいものか。

国力と責任の自覚を

 2002年10月、ブッシュ米大統領(66)は中国の江沢民国家主席(86)との会談で、中国が北朝鮮の核開発を放置すれば「日本が核兵器を開発するのを止められなくなる」と説いた。そこには核保有国同士の大国意識が漂う。

 ぼやぼやしていれば、米中両国が日本を格下に見て直接取引に走る恐れがある。日本にはこれを許さない十分な国力はあるが、意志と行動が足りない。
日本は責任ある大国として、アジア太平洋の平和、秩序全般を作る主要なアクターとして行動した方がいい。ことさら胸を張らなくていいが、謙譲(けんじょう)の美徳が通用しないのが国際社会だ。

 安倍首相は3月15日の記者会見で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加について「日本は世界第3位の経済大国だ。重要なプレーヤーとして新たなルール作りをリードしていける」と語った。

 このような姿勢を、経済からアジア太平洋の安全保障全般へ広げていくべきだろう。そうして初めて、米国と中国の直接取引を阻止し、平和を含む日本の国益を確保する前提条件が整う。

 さまざまな方策があり得るが、根本策として、日本は米国と共に、軍事面で中国との勢力均衡をはかる努力を始めるべきだろう。防衛大綱改定や集団的自衛権の行使容認の問題にはこの観点が欠かせない。狭義の国土防衛だけを追求するのは愚かなことだ。

 安倍首相の視野は経済を包含しつつそれを超えているだろう。ただ、多くの国民もそのような視野を持たなければ、日本の安全保障環境は改善しないだろう。
 (政治部 榊原智)