メディア裏通信簿(月刊正論8月号から転載)

 編集者 スポーツジムのライザップを、ご存じですか。

 女史 知ってるよ。よくテレビでダイエットのCMやってる。「ヤセなかったら30日間全額返金保証」「結果にコミットする」とか宣伝しているジムでしょ。週刊新潮が批判記事を載せていたけど、それがどうかしたの?

 編集者 毎日新聞6月1日付夕刊でコラム「牧太郎の大きな声では言えないが…」が、「急に痩せて大丈夫か」「リバウンドは?」と、CMを見て「心配」している友人の話を書いていたんです。なぜ、こんな中途半端な批判を載せているんだろうと思って読んでいると、急に話が飛躍して「『アメリカの戦争に巻き込まれるのではないか?』と心配する」と安保法制批判を始めたんです。挙げ句の果てには、安倍晋三首相のことを「『反知性主義』と呼ぶ人もいる」と言い始めた。ライザップから安倍政権批判に結びつけるとは、メチャクチャだなと思いまして…。

 教授 強引が過ぎますね。(笑)

 編集者 この頃よく使われる、この「反知性主義」という言葉には何か意味があるんですかね。

 女史 「反知性主義」は、安倍政権批判のための用語になっているよね。「知性」とか「主義」とか立派な言葉を使っているけど、深い意味なんか無いんじゃない。ただの悪口。「バカだ」「ウヨクだ」とか言っちゃうとただの罵詈雑言だけど、「反知性主義に陥る」というと、もっともらしく聞こえるじゃん。朝日新聞は去年12月7日付夕刊のコラム素粒子で「1年前は首相の靖国参拝と前沖縄県知事の辺野古容認で騒然。片や延命し片や座を失う。民意とはを考える暮れ。/今年よく聞くようになった言葉。歴史修正主義、反知性主義。曲がり角の道しるべを見のがさなかっただろうか」と書いてた。要するに、靖国参拝と米軍基地の辺野古移転をしたら、歴史修正主義で反知性主義だって言うんだよ。深い考察なんか何もないでしょ。

文藝春秋こそ「反知性主義」


 教授 他人を「反知性主義」と言うからには、自分たちは知性的だという認識なんでしょう。文藝春秋の文芸誌文學界7月号では、「戦後70年大型企画 『反知性主義』に陥らないための必読書50冊」という特集で、50人の学者や評論家たちに1冊ずつ挙げさせていました。ここに登場する人たちも、自分たちにかなり知性があると思っているのでしょうか。いずれにしろ、企画した編集部は安倍政権を支持する国民を「反知性主義だ」と言いたいんでしょうね。

 女史 この企画で半藤一利さんは「日米同盟の強化、さらに進んで軍事力の強化の必要が叫ばれ、『反知性主義』という言葉が流行している」と、あからさまに政権批判してたね。

 編集者 ただ、そうではない人もたくさんいましたし、本当に、政治的な意図があって特集を企画したのでしょうか。

 先生 あったに決まっているさ。企画冒頭の編集部で書いたと思しき文には「内外を席巻する声高で性急な応酬。その不毛を乗り越えるために必要な真の教養とは何か」とある。「声高で性急な応酬」とは、安倍政権の方針と、それに対する批判だろ。「不毛」な「応酬」を乗り越えるためには、「反知性主義に陥らない」教養が必要だといっているわけだから、安倍政権を支持する保守系論者、雑誌正論のようなメディアを「反知性主義」といっているようなものだろ。

 教授 正論は彼らから見ると反知性主義者の巣窟ですよ。(笑)

 女史 けど、面白い文章を書いてた人もいたよ。例えば、文藝春秋社から出した『イスラーム国の衝撃』という本で有名になった東京大学准教授の池内恵さんは、いきなり、その文藝春秋を批判してるの。月刊文藝春秋で半藤さんが対談していたISIL特集を「茶飲み話で長大な紙幅を費やしている」「こんな雑誌作りをするのも、唯々諾々と手にとって読む読者も、反知性主義そのものだろう」って、バッサリ斬ってんの。

 教授 彼はいいことを書いていますね。「世に出る『反知性主義関連本』の著者はというと、どう考えてもまさに反知性主義者そのもの」「反知性主義に陥りたくなければまず、声高に他人を『反知性主義』と罵っているような人々の名前で出た本は読まない、というところから始めるというのが鉄則」…まさに、その通り。相手に「反知性主義」とレッテルを貼って頭から否定すれば、主張の内容がどんなものでも耳に入ってこないから、議論にならない。まさに反知性主義的な態度ですね。

 先生 そもそもこんな特集を文學界がやること自体が変だよ。「文學」と何も関係ないんだから。

 教授 かつて米ソの対立が激しかった頃、集英社の文芸誌「すばる」が、文学者に米国の核を批判させる特集をしていましたが、あれに似ていますね。米国は、経済的に弱体化したソ連共産党独裁政権を崩壊に追い込むために意図的に軍拡競争を仕掛けていたのに、そういうことを全く考察せず、米国の核だけを批判するという愚かな特集でした。文學界も、その轍を踏んでいますね。

 それか、単純に自分の雑誌が売れないことをひがんでいる可能性もありますね。売り上げは、お笑い芸人の又吉直樹さんの小説に頼りきってましたから。(笑)

 女史 そもそも「『反知性主義』に陥らないための必読書50冊」なんて、あるのかな。上野千鶴子さんなんか、ただ、自分の本を挙げて、宣伝してたけど。(笑)

 先生 『反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体』という、いい本を書いた森本あんりが、自分の本を挙げていないのとは対照的だな。しかし、森本が自著をあげないものだから、この本が50冊から漏れている。しかも、もともと「反知性主義」を論じたリチャード・ホーフスタッターの『アメリカの反知性主義』も50冊に入っていない。「反知性主義」がテーマの特集としては失格だな。

 教授 確かに、この本に触れている人はいても、必読書として挙げた人はいませんでしたね。

 女史 「反知性主義」を論じたいのなら、まず『アメリカの反知性主義』こそ必読なのにね。

 先生 書家の石川九楊という人にいたっては「日本国憲法」を挙げている。それは本じゃないから。憲法の名前だから。(笑)

 教授 わざと『日本国憲法』という名前をつけた解説書や学術書があるから、そのことを言っているんでしょうね。(笑)

結果にコミットしない


 先生 そもそも「反知性主義」は、anti-intellectualismの日本語訳だけど、インテリつまり知識人達の特権的な地位や傲慢さに対する至極まっとうな反感という一面もあるんだよな。それはホーフスタッターすら認めている。彼は反知性主義を「完全に除去できるとはいわない」と明言しているからね。文學界の編集部員はホーフスタッターを読んだのかね。

 反知性主義を完全に除去できない大きな理由は、まず宗教だよ。彼の本には、反知性主義がキリスト教信仰と無関係ではないと書いてある。福音書や創世記における記述を読めば、反知性主義を生む土壌がキリスト教や聖書の中にあるのは明らかだよ。

 教授 宗教や信仰には科学や論理、合理主義だけでは解明しきれない神聖な部分、つまり知性が及ばない領域がありますが、知性を重視するあまりこの領域を軽視する一部のインテリを批判したのが反知性主義でもあるのです。

 それから、アメリカの反知性主義批判は、民主党が党派争いで共和党批判をするための理論にも使われるのです。アメリカでは、田舎に住む信仰心が厚い人には共和党支持者が多くて、都市に住むリベラルなインテリには民主党支持者が多いですから。

 先生 ただ、民主党支持者だってキリスト教の信仰者が多いから、単純には分けられないけどな。共和党だろうが民主党だろうが、信仰心をアピールしないと、米国大統領には当選できない。いずれにしろ、日本で「反知性主義だ」と声高に叫んでいる人はこういうところに全く触れず、ただ誹謗中傷の道具に使っている。

 女史 内田樹さんは『日本の反知性主義』という本まで出したよ。「現代日本の反知性主義はそれとはかなり異質なもののような気がしますが、それでも為政者からメディアまで、ビジネスから大学まで、社会の根幹部分に反知性主義・反教養主義が深く食い入っていることは間違いありません」って書いてる。

 教授 大学にも「反知性主義・反教養主義が深く食い入っている」なんて言うなら、まず、ゆとり教育ですっかり本を読まなくなった学生をなんとかするため、左翼と決別して、教育改革に取り組んだらよかったんですよ。

 先生 教育社会学者の竹内洋が、強力な知性主義のない日本には強い反知性主義もない、日本にあるのは「半」知性主義に過ぎないとみている。米国の知性主義はハーバード大学から生まれたそうだが、日本の東大、京大はそれほどの大学ではないから、日本に知性主義はない、だとすると、反知性主義も生まれようがないだろう(笑)。東大出身の内田センセイは、どう考えているのかね。

 編集者 ただ、東大や京大入試は、やっぱり難関ですよ。

 教授 いま「反知性主義だ」と煽っている知識人、それから自分が知識人の一種だと思っているマスメディアの人たちには、自分たちの意見が多くの国民から反感を買っているということに対する不満があるのではないでしょうか。

 例えば、集団的自衛権や安保法制の反対を声高に訴えても、なかなか安倍政権が倒れない。そりゃ、そうですよ。国民は中国や北朝鮮、多発するテロを見ていますから、知識人達の無責任な平和論にはだまされない。しかし、知識人やマスコミは、自分たちの方が間違っているのに、それを認めたくないから、安倍政権を支持している国民を上から目線で「反知性」つまり「バカ」だと蔑んでいるのです。傲慢なもの言いですよ。

 編集者 しかし、国民にとって本当に大事なのは、自国をどうやって守ってくれるのか、ですよね。無責任に平和論を振り回すだけではなく、ライザップじゃありませんが、「結果にコミットする」知識人じゃないと、信頼できないというのはよく分かります。

 女史 (笑)ただ、「結果にコミットする」って言いたいだけじゃん。「反知性主義」批判は、去年ぐらいから言われている「マイルドヤンキー」論ともかぶってるんじゃない。低学歴低収入で、地元が好きで、地元のショッピングモールが好きで…そんな「マイルドヤンキー」と呼ばれる人たちが最近のナショナリズムを支えていて、安倍政権を支持している、という考え方だね。そういう人たちを下に見て、政権批判をしているの。

 教授 それを、ちょっと、知識人っぽく言い換えると、「反知性主義」になるわけですね。

 先生 そういう見方の元祖が、今やその権威も失墜しつつある左翼の大政治学者、丸山真男だな。工場主や自作農、学校教員といった日本の中間層を「亜インテリ」と軽蔑して、戦争を起こした日本ファシズムの原動力と位置づけた。自分は東大出の文化人で、真のインテリだから違うけどね--というわけだよ。彼を信奉する東大出のエリートが集まったのが、いまや地に墜ちた朝日新聞だな。

 教授 マスコミが「反知性主義」を叫ぶのは、左翼インテリの権威が落ちたことの裏返しかもしれませんね。

臆病な違憲論


 編集者 憲法学者がこぞって安保法制に反対したといって、左派マスコミが大喜びしていましたね。東京新聞6月11日付の朝刊では反対の研究者の名前を200人ほどをズラリと並べていました。対する賛成の学者で名前が挙げられていたのは3人だけ。後から10人の名前を平沢勝栄衆院議員が挙げていましたが、それにしても残念ながら、憲法学界では賛成派が完全な少数派ですね。

 教授 政治的に左翼の思想を持つ学者が多い学界ですからね。日本共産党にとっては名誉なことかもしれませんが、東京新聞に載っていた反対の研究者には、共産党支持者と見受けられる人物がかなりいましたね。

 しかし、南シナ海や東シナ海で中国の脅威が高まり、年金機構に対するサイバー攻撃も、中国が関わった可能性が新聞で報じられているのに、こういう憲法学者たちは、日本の安全保障に危機感を抱かないのでしょうか。憲法学者たちも無責任。結果にコミットしない知識人なんですね。

 女史 なんか、教授まで「結果にコミットする」って言いたくなってきちゃったみたい…。でも、米国の高官も同時期に、中国からサイバー攻撃を受けたと言及してたし、知識人も、中国の脅威ぐらいは考えるべきだよね--。

 編集者 衆議院の憲法審査会では、自民党側の参考人として招かれた早大の長谷部恭男教授らが「憲法違反」だと発言してしまいました。人選に当たった自民党筆頭幹事、船田元衆院議員は批判されていますね。

 教授 あの憲法審査会の場は、安保法制ではなく、立憲主義について意見を聴く場でした。それなのに、民主党議員が集団的自衛権について質問し、違憲の意見を引き出した。要するに、民主党が法案潰しに利用したのですね。

 先生 それにしても、反対を公言している長谷部たちを呼んできた船田はあまりにセンスが悪いというか、脇が甘いというか…。

 長谷部を含む違憲論者がおかしいのは、個別的自衛権は合憲なのに、なぜ集団的自衛権だけが違憲なのか説明しないこと。同じ自衛権なのに、なぜ合憲と違憲と分けるのか。安倍政権は、あくまで自国の自衛のためにしか集団的自衛権を認めていないから、最高裁の砂川事件の判例にも合致するのは明らかだから、「自衛権の行使自体が違憲だ」「自衛隊の存在が違憲だ」と最高裁判例を否定すればいいが、それもしない。憲法9条の下で、自衛権を認めるためにかなり苦しい論理を展開した最高裁判例を否定する勇気のない半端な左翼学者に、集団的自衛権だけを否定する資格はないね。

 編集者 なぜ自衛隊自体が違憲といえないかというと、国民から総スカンを食らうからですよね。

 先生 そういうこと。国の存立のため自衛隊がなければならないのは、みんな分かっているから、否定できないんだよ。そもそも、自民党推薦の学者が違憲と言ったと騒いでいるけど、どの政党の推薦学者だということは、その説が正しいかどうかということには、まったく関係ない。

 教授 反対の学者が多いというのも本質的ではありません。学説の正しさは学者の多数決で決まるものではありません。どんなに少数でも、正しい方が正しいのです。あえて多数決なら、民主主義ですから国民の多数決です。学者ではありません。そもそも反対している憲法学者は国際政治の現実も、安全保障の現場も知らない。一つの観点に過ぎませんね。

関口宏氏、若者に“説教”


 先生 TBS系サンデーモーニングは、この月も偏向がひどかったね。5月17日の放送でも安保法制を取り上げたけど、元防衛相の森本敏以外は、司会の関口宏以下みんな反対。毎日新聞記者の岸井成格は「事実上の憲法改正、安保改定」と非難するし、中央大学教授の目加田説子は「武力行使に道を開く」。マスコミが言うような海外での武力行使は安倍総理がしないと明言したのに、無視だよ。

 編集者 でも、サンモニにしたら、森本さんを出演させているのは珍しいですね。わずかに偏向報道を改善していますね。

 先生 首相補佐官の礒崎陽輔に、ツイッターで批判されまくったから、アリバイ工作したんだろ。

 教授 森本氏は、せっかく出演したのに、ほかの出演者から袋だたきに遭っていましたね。(笑)

 先生 沖縄の米軍基地移転問題をとりあげたコーナーも、メチャクチャだったぞ。基地の前にいる反対派には本土の運動家がたくさんいるのに、フォトジャーナリストの安田菜津紀が「ゲート前で座り込みをしている人達の気持ち」を一生懸命語るし、時事通信解説委員長の軽部謙介にいたっては「沖縄の側に立つ政治家がいない」。日本国憲法には、国会議員は「全国民を代表する」と書いてあるだろ。たとえ沖縄でも、一部の県民だけの利益を代表してはいけないはずだ。最後は、関口が「ぜひ若い人達に色んなことを分かってもらいたい」だって。お前こそ、少しは分かれよ。

 教授 この番組はスポーツコーナーの人気が高くて、いい企業がだまされてスポンサーにつくらしいです。スポンサー企業も、もっとよく考えてほしいですね。

 先生 安保法制では、朝日新聞が反対一辺倒の大キャンペーンをしている。2~3日に1回は社説でも安保法制。6月9日付の社説は「『違憲』法制-政治権力は全能ですか」の見出しで、「自省と自制を欠き、ブレーキのはずれた人たちに、国の存立がかかった判断を委ねられるか」。完全に慰安婦問題誤報の反省は忘れている。

 女史 自省も自制も忘れて、ブレーキが外れたのはどっちよ?

 教授 マスコミは自分たちの知性を過信して暴走し、どんどん常識から離れていっています。これこそ、まさに反知性主義が批判するインテリの傲慢でしょう。

 先生 ただ安倍総理も、自衛官のリスクが増すということは初めから国民に伝えるべきだったと思う。危険が増せば国民も自衛官をより尊敬するし、自衛官も誇りをもってそれに応える。当初、リスクが上がることを認めなかったのは、いただけなかったな。

 教授 「リスクが上がる」と単純に言うと、「危険だからやめよう」という間違った方向に国会審議が進むのを恐れたという側面はあるんだと思いますよ。

右の内輪モメと朝日の訂正


 先生 朝日新聞の話が出たから思い出したんだけど、かつて蜜月だった田母神俊雄とCS放送の日本文化チャンネル桜代表、水島総が非難合戦をしていることを報じた朝日が、訂正を出していたな。朝日は右派論壇の内輪もめを面白いと思ったんだろうが、正確に報じないとな。これは産経新聞や正論など保守メディアも同じだぞ。左右の論争はいいが、ただの茶化しや悪口になってはいけない。

 女史 田母神さんがツイッターで「水島氏が自分の言っている事に自信があるなら是非私と同席のテレビ番組で言い分を述べて欲しい。私が不在のチャンネル桜で一方的に私を糾弾することは卑怯である」とつぶやいてたね。

 先生 水島はCSという公共の電波を使っているのに対し、田母神は主にツイッター。不公平だと感じるんだろ。それはそうかもしれない。ただ、チャンネル桜の視聴者より、田母神のツイッターを読んでいるフォロワーの方が数が多いだろうから、どっちがどうか、分からんけどな。

 編集者 いずれにしろ、事実関係は私には分かりませんので…。

 女史 口数少なっ。二人とも正論の常連筆者だから板挟みだね。

彬子さまインタビューの裏側


 先生 正論7月号に彬子女王殿下でインタビューが掲載されていたが、薨去されたお父上の寛仁親王殿下へのお気持ちが伝わってきて、とてもいいお話しだったな。

 編集者 インタビューした者の一人としても光栄です。

 先生 ただ、その10日後に発売された文藝春秋7月号に掲載された女王殿下の御手記には、お母上への批判があったのに、正論では、それに一言も触れられていなかったな。週刊新潮6月11日号が「『彬子女王』が月刊誌に書かなかった母『信子妃』」という記事を載せていたが、あれは正論も取材不足が皮肉られてんじゃないか。

 編集者 天下の週刊新潮に広告も出していないのに、「正論」の名前を出してもらい、写真まで載せてもらいましたから、いい宣伝になったんじゃないですか。

 女史 志、低すぎっ。

 編集者 文藝春秋の御手記は批判部分はほんの少しなのに、編集部は、そこだけ大きく見出しにとりました。煽り過ぎですよ。週刊誌じゃないんですから。私たちも当然、彬子女王殿下がそういう感情をお持ちのことは存じ上げていましたが、畏れ多くておたずねするのは避けたのです。

 女史 遠慮したのかー。でも文藝春秋には出ちゃった。

 編集者 まあ、文藝春秋は総合雑誌の雄で、以前から皇族方のインタビューも載るし、天皇、皇后両陛下が外国をご訪問されたときは、侍従長の手記が載ります。

 教授 正論が気後れするほど文藝春秋が権威ですか(笑)。ただ、皇族方は必ずしも有名な雑誌に登場されるわけではないし、そもそも、皇族ではなく誰であろうと、本当に語りたいことがあれば、少々、無名な雑誌でも出たがるはずですよ。たとえば週刊金曜日の6月12日号には、阪田雅裕氏ら内閣法制局長官の経験者が2人が登場して、安保法制や安倍政権を批判しています。この雑誌は一部の過激な左翼以外にはあまり読まれていない。本来なら法制局長官クラスの高級官僚OBが登場する雑誌ではないけど、それでも発言したいから出てくるわけです。

 編集者 しかし、彼らは集団的自衛権の悪口が言えれば、なんでもいいのではないですか。左翼雑誌以外からは、不信の目で見られていると思いますよ。

 教授 確かに、反知性主義を恐れる彼らは、国民から自分たちの非現実的な意見が見放されないか不安なのかもしれませんね。

 先生 BSフジのプライムニュースは、相変わらずフジテレビにあるまじき報道をしている。6月3日の放送では、韓国で「佳子内親王殿下を慰安婦に」という大暴論を、東海大学准教授の金慶珠が「韓国人になりすました日本人の仕業」と言い放った。

 女史 これはサイテーだね。

 編集者 フジサンケイグループとしても、許せない発言です。生放送の終わり際に、勝手に発言したために、番組では、どうしようもなかったのだと思います。

 先生 確かに翌4日の放送で、キャスターの反町理が訂正したが、この日は、中国の朱建栄が、南シナ海の南沙諸島で進められた埋め立て工事について「軍事基地ではない」と言い張った。誰が見ても軍事目的だし、中国だって認めているのに、ウソばかり! 5日も中国人の見方で凌星光が「中国の軍事費は対GNP比1・3%」と強弁してた。いい加減な中国当局の情報を垂れ流しているんだ。

 教授 朱建栄氏は厳密に言うと、中国当局の見解と違いますね。いいんですかね。また、本国で拘束情報が流れたりして。(笑)

 先生  フジテレビはいい番組もあるけどな。5月22日のドラマ「連続企業爆破テロ40年目の真実」も見ごたえがあった。40年前に産経新聞が連続企業爆破事件の逮捕の方針を報じたスクープの裏側をドラマ化していた。元社会部記者である編集者の先輩記者が果たした歴史的スクープだろ。後輩として感想を聞かせてくれよ。

 編集者 え? そういえば、そんなドラマやってたような…。

 女史 みてないの?

 編集者 裏番組で面白いお笑い番組を放送していたので…。

 教授 編集者の「反知性主義」は、ちょっと深刻ですね…。

(文中敬称一部略)