民主党の小沢一郎幹事長(67)が政治改革を旗印に、自民党を支えてきた集票システムの破壊に乗り出している。民主党には今回の政権交代を「民主主義革命」(菅直人副総理・国家戦略担当相(63))と位置づける向きもある。小沢氏は自民党レジームを突き崩し、“反革命”の牙を抜こうとしているようだ。今やキングメーカーとして政府・与党を圧する小沢氏だが、自民党への攻勢は急で、戦いの手を抜かない小沢流を見せつけている。

小沢一頭体制

 「これは革命だ」
 小沢氏は11月4日夜、東京・赤坂のレストラン「ロウリーズ・ザ・プライムリブ東京」で、民主党の中堅幹部と会食した際、民主党が打ち出した新しい陳情処理のルールについて、こう語った。
 自民党でも福田康夫元首相(73)が道路特定財源の一般財源化や公務員制度改革を「静かなる革命」と呼んだ例があったが、「革命」という言葉の使用は、小沢氏が保守の心情にこだわらない政治家であることを示唆している。ただ、小沢氏が陳情の新ルールを重大視していることは伝わってくる。
 民主党が所属議員を政務三役(閣僚、副大臣、政務官)に送り込んだ各省庁は、予算編成などでの国会議員や地方自治体、業界団体の直接の陳情は原則受け付けない。陳情は小沢氏が率いる民主党幹事長室に窓口を一本化し、ここで優先順位をつけて副幹事長らが各省庁の政務三役へつなぐ、という仕組みだ。
 この新ルールを発表した2日の記者会見で、小沢氏は、自民党時代の族議員による政官癒着、利益誘導型政治を排除し、自治体や業界団体関係者の「霞ケ関詣で」を一掃できる-と強調した。
 自民党議員が、各省庁への陳情をつなぐことで票と政治資金を集めてきたシステムは否定される。自民党と省庁、自民党と自治体、自民党と業界団体、省庁と自治体の関係は切断される。自民党寄りだった業界団体、自治体はいや応なく民主党、それも「小沢幹事長室」に頼ることになる。
 小沢氏に近い民主党衆院議員は2日、「これで自民党をつぶす」と豪語した。
 小沢氏は、自民党を支持してきた日本歯科医師会の幹部と会談し、民主党への接近を許すなど業界団体切り崩しを進めている。日本医師連盟、JA全中(全国農業協同組合中央会)なども政治的中立を表明した。小沢氏の唱える企業・団体献金の廃止は、実現すれば自民党への兵糧攻めとなる。
 標的は自民党にとどまらない。陳情の新ルールによって民主党議員と省庁のパイプは太くならず、陳情を握る「小沢一頭体制」の強化が進んでいくだろう。

批判皆無の民主党

 小沢氏は今、非常に居心地のよいポジションにいる。西松建設事件で自身の公設秘書が逮捕、起訴され、民主党代表と首相の座を放棄し、入閣もままならなくなって得られた状況だ。
 国会で野党の追及にさらされることはない。「政府の鳩山、党の小沢」と仕切ったことで首相の意向をいちいち仰がずに自民党との戦いに専念できる。民主党の役員会に鳩山由紀夫首相(62)が出席するのはまれだ。
 2日の記者会見で小沢氏は「僕は政策論はやらない。私は党務の方ですから、そういう類(たぐい)のことを発言する立場ではない」と語った。鳩山内閣が失政を行っても、小沢氏が直接責任を問われることはない。
 キングメーカーにとってこれらは好都合だ。鳩山首相が失脚したとしても、安全圏にいる小沢氏がポスト鳩山を指名することになる。政権の表の顔は変わっても小沢一頭体制は続いていく。
 国会論議の活性化を唱える小沢氏が、政権党の幹事長でありながら衆院本会議で首相の所信表明演説への代表質問を見送っても許されることにもなる。
 9月16日に鳩山内閣が発足してから、民主党の国会議員が報道陣の前で公然と、小沢氏を名指しで批判した例は寡聞にして知らない。政権交代の熱気が冷めやらず、また内閣支持率が高水準を保っているからでもあろうが、最高実力者への批判皆無の政党が「民主党」を名乗っているのは奇妙な感じもする。
 風通しの悪さは党の脆(もろ)さを招く。団結はもちろん大事だが、過ぎたるは及ばざるが如し、ではなかろうか。
(政治部 榊原智)