「平成50年 世界で輝く日本たれ」。中曽根康弘元首相(95)がこう揮毫(きごう)した書が表紙になっている提言がある。シンクタンク「世界平和研究所」(会長・中曽根氏)が10月に発表した創立25周年記念提言だ。25年後(平成50年、2038年)の日本が「輝いている国」であるために取り組むべき10の根本課題を説いている。

 その筆頭に挙げられたのが、抜本的な少子化対策の遂行だ。経済界を中心に根強い移民受け入れ論を退け、「政治の強い意志」で、合計特殊出生率(女性が生涯に出産する子供の数)が人口維持に必要な「2」になるまで、対策を取り続けるよう訴えている。

 安倍晋三首相(59)は、デフレからの脱却、外交・安全保障の立て直し、憲法改正と同等の重みを持たせて少子化対策に取り組んでいくべきだろう。

国家存亡の危機

 注目に値すると思われるので、提言を紹介したい。

 平和研の佐藤謙理事長(69)によれば、中曽根氏は提言の草稿に繰り返し手を入れるなど非常に熱心だったという。日本の独立と繁栄を追求する思いに衰えはないようだ。

 日本の人口は2010年に1億2800万人。国立社会保障・人口問題研究所の昨年の予測(中位推計)では38年に1億900万人、60年に8700万人、今からほぼ100年後の2110年に4300万人へ急減する。

 これでは日本は「国家としての体裁をなさなくなって」(提言)しまう。国民の生活も成り立たない。経済協力開発機構(OECD)などの2050年のGDP予測では、「日本は第4位から第9位程度に後退」(提言)する。

解決策にならない移民

 提言は、「安価な労働力」としての移民受け入れは「外国人に失礼」であり、少子化対策としても有効でないと断じている。

 欧州のように移民との摩擦が社会問題化し、移民の次世代が少子高齢化を加速させる恐れもある。途上国でも高齢化が急速に進み、移民を供給する余裕がなくなるという。2025年に日本の出生率が2になれば、今世紀後半に人口減少に歯止めがかかり、22世紀初頭でも1億人以上を、38年に2になれば8900万人から9900万人の水準を確保できると、提言はシミュレーションした。手をこまねいている場合とは雲泥の差だ。

 具体策としては、育児世代への所得再配分、高校までの授業料無償化、非正規雇用の割合の低下、未婚率を引き下げていくことなどを挙げた。高齢者には納税などを通じ次世代を経済的に支える「日本という社会の親」だと自覚するよう、発想の転換を促している。

 すべての前提として「子供は国の宝」というコンセンサスを形成し、出生率向上を目指す国民運動が必要だと訴えている。

 子孫の世代を増やし、守っていくために大切な指摘だ。

 だからこそ、提言は直接指摘していないが、世界平和研案、自民党案、産経新聞「国民の憲法」にあるように憲法を改正して、家族を保護し、重んじる条文を入れるべきなのだ。
(論説委員 榊原智)