湯浅大(サンケイスポーツ編集局運動部)

 西東京代表・早実のスーパー1年生、清宮幸太郎内野手による空前のフィーバーが日本中を席巻している。今や、高校野球100周年の節目に出現した若きスターがメディアに登場しない日はない。

長男の早実・幸太郎内野手をスタ
ンドから応援するラグビートップ
リーグ、ヤマハ発動機の清宮克幸
監督=8月13日、甲子園球場
(撮影・松永渉平)
 早大ラグビー部などで活躍し、現在はトップリーグ・ヤマハ発動機の監督を務める克幸氏を父に持ち、DNAは超一流。早実初等部時代には東京北砂リトルのエースで4番として132本塁打し、世界一も経験。米国で「和製ベーブ・ルース」の異名も取った。中学時代に右肩を痛めた影響で打者に専念すると、高校入学後に1年生ながら伝統校の3番を任され、約3カ月間で13本塁打を放っている。

 早実といえばかつて5季連続で甲子園に出場し「大ちゃんフィーバー」を巻き起こした荒木大輔氏、「ハンカチ王子」として人気を集めた斎藤佑樹(現日本ハム)らスター選手を輩出してきた。野球部の指揮を執る和泉監督は当時の斎藤も指導しているが、「斎藤のときは(甲子園での)優勝という過程があってからの加熱だった」。地方大会が始まる前から騒がれている清宮フィーバーとの違いを語り、それは「想像以上」と加えた。それでも「本人はまだ怖いもの知らずで、全部受け入れて楽しんでいる様子がある」というから驚きだ。

 清宮のすごさは何よりも、このハートの強さにある。技術面はこれからいくらでも伸びていく。1年生離れしたパワーは実証済み。これからも多くの経験から学び、練習していくことで技術は向上していくはずだ。早実には恵まれた指導者や、専用グラウンドをはじめ室内練習場やウエートトレーニングルームなど充実した練習環境も整っている。

 今後も着実に成長していく技術面を、16歳とは思えない強心臓が支えている。清宮は幼いころから克幸氏に一番を目指す教育を受けてきた。幼稚園時代、七夕の短冊に「世界一を獲る」と書いて周囲を驚かせたこともある。野球と出会う前はラグビーをはじめ相撲、水泳など複数の競技に挑戦し、勝負根性をたたき込まれてきた。7歳だった2006年8月に早実・斎藤と駒大苫小牧・田中(現ヤンキース)が投げ合った甲子園決勝の再試合を生観戦し、野球の道を選んだが、このときも克幸氏から頂点に立つことを前提に認めさせたという。

 目標が高いところにあるから自然と発言も大きくなる。西東京大会初戦、夏の公式戦初安打は遊撃後方へポトリと落ちるものだった。「あんなんですみません。みっともないですね」と照れた。4安打を放った試合でも「ここで打たなきゃ3番打者の意味がない」。同大会では6試合で20打数10安打を放ち、10打点は大会トップの数字だった。それでも「100%を発揮できていない」と大会を振り返る。少し悔しさをにじませている口調は、リップサービスではないことを示していた。

今治西との初戦の一回、打席に入る早実・清宮幸太郎=
2015年8月8日、甲子園球場(村本聡撮影)
 甲子園に乗り込んでも、強気な姿勢は打席でも見てとれた。愛媛代表・今治西との初戦。相手バッテリーから徹底して内角を攻められた清宮は、第2打席で死球を受けた。カーブが右足首のあたりに直撃。幸い、レガース(防具)に当たったため、何事もなく出塁したが、特筆すべきはその後の打席にあった。

 第3、4打席ともにしっかりと踏み込み、甘く入った初球を狙ったのだ。前の打席で当てられた残像による影響や恐怖心はみじんもみせずに積極的に攻めのスタンスを貫いた。そうして4打席目に強烈なゴロで一、二塁間を破る甲子園初安打。タイムリーというおまけつきだ。

 ただし、いや、もちろんというべきか試合後は安打に喜ぶどころか渋い表情。好機で凡退した3打席を悔やんだ。「全然だめですね。チャンスでことごとくだめでした。どうしようもないですね」。並の高校1年生であれば、甲子園初安打を素直に喜ぶのではないか。最低でも及第点は与えるだろう。だが、清宮は違った。

 実は強気な発言の裏には克幸氏の教えがある。「小さい頃から人前で『頑張ります』というのはやめるように父にいわれているんです。それがしみついているのか、人と同じことを言うのが嫌なんです。人と違うからこそ伸びるというか…人と同じならそこで埋もれちゃうので」。16歳とは思えない価値観。独自の理想論を語り、そこを目指して努力する。達成することで成長し、また新たな目標を口にする。怪物は練習だけでなく、自身の発言も進化への“種”としている。

 「自分の活躍はまだ期待に追いつけていない。期待に添うようなプレーができれば。1年の夏から甲子園に出られるのは貴重なこと。人生最大の財産になる」。雰囲気にのまれるどころか、楽しみながら、あこがれの聖地の土を踏んだ。無限大の可能性を秘めたスーパー1年生・清宮の伝説は、まだ始まったばかりだ。