河合雅司・産経新聞論説委員

 厚生労働省雇用政策研究会が先月発表した将来推計によれば、経済が成長せず、女性や高齢者などの労働参加も進まない場合、2030年の就業者数は2012年の6270万人に比べて821万人も減るという。

就業者821万人減
 人口減少時代の就業者不足にどう対応するか。期待されるのが女性の活躍だ。外国人を受け入れるのとは違い、言葉や文化の壁がない。多くは高等教育を受けており、仕事の能力も高い。

 むろん、女性の労働参加は就業者不足の穴埋め策として語られるべきものではない。社会がグローバル化し、しかも将来が見通せない時代である。企業が競争力を維持するには多様性が不可欠だ。

 女性の労働参加が企業業績にプラスに働くとの検証結果は山ほどある。女性の活躍なくして日本の成長はあり得ないとの認識が必要である。
 長年「日本で最も活用されていない資源は女性」と指摘されてきた。総務省の労働力調査の基本集計(2013年12月)によれば、生産年齢人口(15~64歳)の女性3907万人のうち就業者は2469万人で63%にとどまる。

 働く意欲のある女性が職に就くようになれば日本は大きく変わる。雇用政策研究会は2030年の女性就業者が2012年より43万人多い2697万人になると試算。安倍政権は「女性の活躍推進」を日本再興戦略の柱に位置付け、2020年までに25~44歳の女性就業率を73%にする目標を掲げている。

6割「働きたくない」
 女性の労働参加を阻む最大の要因は結婚や出産だ。日本には、20代後半から30代にかけて女性の労働力率が落ち込む「M字カーブ」がいまだに残っている。厚生労働白書によれば、第1子出産前後に約6割が退職している。

 女性の結婚・出産退職というと、必ず「仕事と子育ての二者択一を迫られている」との解説が加えられる。だが、そうとも言い切れない。

 厚生労働白書が退職理由を紹介しているが、1位は「家事・育児に専念するため、自発的に辞めた」だ。

 2007年に内閣府が公表した「女性のライフプランニング支援に関する調査報告書」が興味深い。3歳以下の子供がいる女性の「理想の働き方」は、「働きたくない」が57.6%だった。「残業もあるフルタイムの仕事」を希望した人はわずか0.5%、「フルタイムだが残業のない仕事」も6.2%である。出産後は家事・育児に専念することを前提としている女性は少なくない。

 人生のコースは個人の価値観に根ざしており、専業主婦という選択は尊重されるべきだ。だが、少子化社会対策白書によれば、出産を機に退職した人の4分の1が「仕事を続けたかったが、育児との両立の難しさで辞めた」としている。女性の労働参加を促すには、こうした意思に反して辞めざるを得なかった人への対策が急がれる。

のしかかる家事負担
 背景には、女性に家事負担が大きくのしかかっていることがある。総務省の「社会生活基本調査」が15歳以上の既婚者について週間家事時間を比較しているが、女性の5時間2分に対し、男性はわずか47分だ。

 これでは女性が本格的に働くことは不可能だろう。出産する、しないにかかわらず、家事が主で仕事は補助的業務にとどめる「兼業主婦」にならざるを得ない。

 女性の活躍を促すには何をすべきなのか。政府は待機児童の解消に向けた保育所拡充に努め、男性の育児参加を促進するために育児休業給付をアップすることにした。女性登用に取り組む企業への支援強化も打ち出している。

 こうした政策を地道に積み上げていくのは言うまでもないが、最大のポイントは男性を含め働き方の前例や慣行を打ち破ることだ。

 日本企業は長時間労働や転勤が昇進条件となっていることが多い。男性が育休取得を言い出しづらい雰囲気もある。これでは男性の家事参加は進まず、能力ある女性が重要ポストで活躍することは難しい。男性の家事負担への理解を含め、男性中心となってきた企業文化を改めることから始めなければならない。

 男女の別なく多様な働き方を認める。育児休業からスムーズに職場復帰できるような人事体制を組む。女性の優遇という逆差別ではなく、能力によって評価し登用する。取り組むべき課題は多い。

 社会全体の意識が変わったときこそ、女性の活躍が実現する。