民主党は、国民投票法の制定に伴う改正国会法で設置された衆参の憲法審査会を2年9カ月にわたって始動させず、国会を違法状態に置いている。また、鳩山由紀夫首相(63)(民主党代表)は昨年、衆院選のための集会や主要6党の党首討論会で、米軍普天間飛行場について「最低でも県外移設」を目指すとした発言を公約ではないと言い張っている。法律で決まったことを立法府の中で守らず、党首が約束したことを公約と認めないことで、民主党は日本の民主主義の基盤を掘り崩しているのではないか。これではまるで「非民主化党」だ。

民主党のサボタージュ

 2007年5月、憲法改正手続きを定めた国民投票法と改正国会法が成立した。国民投票法の施行は、民主党や公明党の要求でほぼ3年後の10年5月18日になったが、憲法論議の場となる憲法審査会は、改正国会法によって07年8月の臨時国会で法的には設置された。
 しかし、護憲派の共産、社民両党の抵抗に加え、民主党のサボタージュが続き、衆参両院の憲法審査会は委員の選任さえ行われず、憲法をめぐる論議は今も始まっていない。
もし、子ども手当法があるのに手当の支給が始まらなかったら、法律違反だとして世間は大騒ぎになるだろう。
 憲法審査会の問題も同じことだ。護憲的気分が今も漂うメディアは大きく取り上げないが、立法府自身が違法状態にあるのは無責任の極みだ。
 民主党の小沢一郎幹事長(67)は4月26日の記者会見で、憲法審査会について問われ、「衆議院(には審査会の運用を定める審査会規程)ができて、参議院ができていない事情を私は詳しくは存じておりません」と、ひとごとのように語った。内閣で法令解釈を担当する枝野幸男行政刷新相(45)も4月30日の会見で、憲法審査会が始動していない点について「国会で判断していただくことだ。一義的に違法で問題がある状況ではないと思っている」とそっけなく語った。
 民主党は、国民投票法と改正国会法の採決の際、反対したが、だからといって法律を無視していいわけではない。多数決で決まったことを守るのが民主主義の基本だ。守るつもりがないなら、民主党は与党になったのだから、国民投票法と改正国会法を廃止するか改正すればよい。だが、党内や連立の団結を損なうせいか、サボタージュを決め込んでいる。実に卑怯(ひきよう)ではないか。
 鳩山首相は、これまでのことを国民に謝罪し、審査会を早期に動かして日本を法治国家に復帰させなくてはならない。首相が自身を憲法改正論者だと思っているならなおさらのことだ。

発言は「公約」でない!?

 一方、鳩山首相は昨年7月、衆院選応援のための沖縄県沖縄市での集会で「『最低でも県外』の方向で積極的に行動したい。沖縄の過剰な基地負担をこのまま維持するのは、納得がいかない」と述べた。さらに、衆院選公示前日の主要6党首の討論会でも「私どもは(政権をとっても)基本的な立場を変えるつもりはありません。一番いいのは海外に移設されることが望ましい。最低でも県外移設が期待される」と語っている。
 だが、首相は今月4日、県内移設へ方針転換を表明した。記者団から「公約を覆したことの政治責任」を問われ、次のように釈明した。
「公約という言い方はあれです。公約は選挙の時の党の考え方ということになります。党としては、という発言ではなくて、私自身の代表としての発言ということであります」
 衆院選時の党幹事長だった岡田克也外相(56)もすでに昨年11月の衆院予算委員会で、「公約と(鳩山首相の)選挙中の発言とはイコールではない。公約というのはマニフェスト(政権公約)だ」と述べ、鳩山首相と同じ言い訳をしている。
 首相も岡田氏も、民主主義を理解しているのだろうか。衆院選関連の集会や討論会で、公党の代表が語ったことが広義の意味での公約でないなら、有権者は何を信じて投票すればいいのか。マニフェストだけが公約というなら、民主党の代表や幹部は選挙演説や討論会への出席を自粛したらどうだろう。
(政治部 榊原智)