宮崎学(作家、評論家)

分裂騒動勃発の理由


 まず認識しておくことは、暴力団に対する法規制が厳しくなって、法律だけでなく条例もどんどん出てきたということ。暴力団がちょっとなんかしたらパクられるという状態が現実的にありますよね。それら法律によってやくざが活動しにくくなってるのは確か。いままで通りにみかじめ料の集金に行ったら店までパクられた、ということになってきて、縄張りを持ち力を付けてそこで金を稼いでいくという従来型のやくざの活動が危うくなってきた。暴対条例が出来て規制に拍車がかかったのに伴い警察庁発表の構成員、準構成員を含むやくざにかかわる人数が大分少なくなった。基本的にはやくざやってても食っていけないということです。

 やくざの分裂騒ぎっていうのは抗争事件に発展するケースが多いんです。A組対B組という組がケンカするというのはもうない、A組が割れてA組1とA組2がケンカする。一番その形になったのが山一戦争です。山口組と住吉会がえいやーっで名乗り上げてけんかするっていう、そんなことはもうない。それをやると強化された暴対法などで、双方とも親分までパクられてしまう。使用者責任論で。そうして見ると今回も山口組の分裂ということですから、ある意味今風の分裂ではあるわけです。

宮崎学氏
 じゃ、なぜ分裂したのか。弘道会対山健組の対立がベースにあるとみるべきでしょう。出て行った人たちは反弘道会系の人たちでその旗頭が山健組。この対立は六代目体制寸前の五代目体制以降からの山口組の歴史に関係している。六代目体制が誕生するに当たり、山口組というのは関西の山健組がなんだかんだ言っても中心だった。人数は多いし、まして地元神戸だし、田岡さんの創設時から山健組というのは一番大きい組織です。神戸以外の組が親分になるってことにある意味ものすごい抵抗があった。それとその後の組運営の問題で弘道会と山健組はどんどん対立するようになって今回の事態になった。

 対立した中身は何か。いろいろ言われているように事務所を名古屋に持っていくとか、その他の日常的なやくざとしての活動、弘道会が進めることに関して面白くないという意見や不満がずいぶん山健組サイドからあったようだ。それがずーっと煮詰まってきてここで出たということではないか。やくざをウオッチングしていればわかることだが、どっかでピストル撃ったり、人が死ぬことが付きまとうのがやくざの分裂で、甘いものではない。分裂ということはイコール抗争なんですよ。今回もすでに1回ピストルが撃たれているし、弘道会と山健組の小競り合いも起こっていると聞いている。これはもっとエスカレートしていって銃撃を含む抗争になっていくだろうと思う。

なぜ、いま打って出たのか


 井上邦雄(山健組)さんたちはなぜいまここまで踏み込んだか。処分されたメンバーを見たら、年配の長老の人たちにとっては、弘道会系が進出してきてだんだん片隅に追いやられていく危機感もあったのだろうと思う。それはポジション上の危機感ではなくて、現実のやくざの活動をしている中でずいぶん出てきていたと思う。ある競技場でもっているダフ屋の利権をめぐり、今までは平和的に共存していたが、分裂騒動が勃発したあと一方の利権一色になってしまったと聞いている。この問題が起こってからそういうのが出始めている。斜めからみると、縄張り争いをやっているということになるじゃないですか。今までは共存してやれていた。これだけ感情的なもつれになってくると人数の多い方は少ない方をやっつけてしまおうとする。メンバーから見ても今回の分裂は、弘道会が山健組の主導権を握って進めてきたこの何年間かの歴史の中で、自分たちがちょっと窓際に追いやられた、けしからんことだという危機感をもった人たちが反旗を翻したという構造ではないか。