細川珠生(政治ジャーナリスト)

 新年度を前後して、特に気になっていたことが二つある。一つは産休・育休明けで職場復帰を望んでいた人たちの動向。もう一つは新入社員たちのこれから、である。

 前者については、年度初めでの職場復帰に向けて、数か月前から“入園活動”に勤しみ、それでもなかなか入れる保育園が見つからないと焦っていた女性たちが、その後、職場復帰を果たせたのかどうかということだ。ちらほらと耳に入ってくることは、「職場とは逆方向の保育園だけど、何とか入れた」「できたばかりの、薄暗いキッズルームで、不安はたくさんあるけど、そこしかなくて」など、決していい条件ではないケースが多い。政府は、少子化対策として、またアベノミクスの目玉政策でもある「成長戦略」の一つとして、待機児童の解消に力を入れているはずだが、それでもまだ足りないのである。

 後者については、社会人一年生が、会社をすぐにやめず、しっかり生き抜いていけるのかということだ。この春の新入社員の就職内定率は、大卒者で86・7%、7年ぶりの高水準という。しかし、せっかく入社したにもかかわらず、大卒者の3年以内の離職率は32・4%。1年以内でも13・4%。留学や転職などの前向きな理由もあるが、「見込み違い」が圧倒的に多く、思っていた仕事内容や職場環境、人間関係ではないと、あっという間に辞めてしまうのだ。

 社会での活躍の場を求め、必要な社会の整備や意識改革を強く求める女性たちと、片や男性でも、嫌なことがあるとすぐに辞めてしまうという現状。私は同性でありながら、彼女らの主張のすべてに共感するわけではないが、それでもその心意気は大したものだと思う。自己実現に対する強い意欲は、男性以上である。

 周囲を見回してみれば、特に若い男性には、いわゆる“草食系”がいかに多いかと実感する。残業を嫌がることはもちろん、海外赴任も嫌、職場の飲み会や懇親会も行きたくないのだそうだ。「夫は外、妻は家」という性別役割分担意識も、「そうだと思う」という20代の独身男性は約4割。できれば妻も働いて、家計を支えてほしいと思う若者が、半数以上になっている。巷間言われるような景気回復を実感できない現状では致し方ないとも思うが、自分が将来、結婚して家庭を持ち、一家の「大黒柱」として家族を養っていくという意識や、そもそも「大黒柱」などという感覚すら前時代のものとなっているようだ。

 聞けば、今の若い人たちは、デート代も割り勘が基本。女性に支払ってもらうことに、躊躇や恥じらいもないことも珍しくないという。もちろん、お互いの年齢なども関係するが、それでもすべてが同等ということには、私は違和感がある。

 もう何年も前からだが、彼女のバッグを持ってあげている男性が多いことに驚いてしまった。荷物の多さや重さにかかわらず、「持ってあげる」という優しさはよいとしても、女性物のバッグ一つ、男性が肩から掛けているのは、恥ずかしくないのだろうか。持つ方も持つ方だが、持たせる女性にも大いに問題がある。

 自分に合わせてくれる心地よさを感じたとしても、好みの違いはあれども結局のところ、女性は頼りがいのある男性を好むはずである。どんな社会状況、職場環境であっても、力強く生き抜く男性こそ、結婚相手となりうるのである。女性が高学歴化、高収入化し、晩婚化が進んでいる。当然、求める相手の条件も高くなる。50歳時の未婚率は、男性は女性の2倍の20・1%だという現実が、いかに男性が女性に頼りにされていないかを象徴しているように思えてならない。セクハラと言われるかもしれないが、男性の非婚化も深刻な社会問題だと私は思う。

 男女雇用機会均等法の施行後に社会に出た私の世代も、まだまだ「男性優位社会」にどっぷりと浸って生きてきた。その中でも、自分の能力を生かし、努力して活躍している女性たちもたくさんいる。そこには、私たちの親の世代が、「男らしさ」「女らしさ」という教育を否定しなかったからこそ、自らの役割をしっかりと自覚し、お互いの能力を尊重し、それが結果として、社会のバランスを保つことにもなってきたように思う。

 とにもかくにも、男性は、女性が努力して開拓しようとしている今の社会の中で、その勢いや意欲に負けないように、それを上回る力で努力しなければならないのである。「俺が家族を養う」とか、「俺がデート代は払う」という気概を、特に若い男性には持ってもらいたい。

ほそかわ・たまお 
‘68年東京都生まれ。聖心女子大学卒業。米ペパーダイン大学政治学部留学。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、地方自治や教育を中心に取材、執筆、講演活動等を行う。2003~2011年 品川区教育委員。現在、国土交通省有識者会議等の委員、星槎大学非常勤講師を務める。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本・毎土7:05~7:20)放送中。「政治家になるには」「自治体の挑戦」他、著書多数。父は政治評論家の故細川隆一郎。