菅直人首相(63)、仙谷由人官房長官(64)、枝野幸男民主党幹事長(46)の政権を主導する「新トロイカ」は、7月11日の参院選で大敗してから、3つの大きな過ちを犯した。菅首相は、自ら好んで短命政権の道を歩んでいるようにもみえる。

民意軽視の無責任内閣

 1つ目の過ちは、参院で過半数割れしたにもかかわらず、誰も責任を取っていないことだ。枝野氏が辞任すると小沢一郎前幹事長(68)の勢力が勢いづき、9月5日の党代表選で菅首相が再選できないと恐れているのか。
 「国民重視」を強調する人たちにもかかわらず、党内の政敵にしか目が向いていないことは、参院選の審判を無視された国民がすでに敏感に感じ取っているだろう。国民のしらけた気持ちは分からないのか。
 2007年7月29日の参院選で大敗したが続投し、わずか1カ月半後の9月12日に退陣した自民党の安倍晋三元首相(55)のケースが思い起こされる。
 衆院選のような首相指名に直結する選挙ではないが、敗れた政権・政党が何らけじめをつけないのは、有権者の審判に抗(あらが)っているとしか言いようがない。
 民意を無視した居座りと世論は感じ、民主党政権の印象は悪化する。このままでは、次の衆院選で民主党は手痛いしっぺ返しを受けるに違いない。

争点の「消費税」撤回

 2つ目は、菅政権の独自かつ最大の政治目標だった「消費税を含む税制改革案の2010年度内の策定」先送りを表明したことだ。
 前回の参院選直前の07年6月2日、民主党代表代行だった菅首相は党の会合で「どんな土俵で戦うのか。これが選挙の結果を左右する第1の要素だ」と強調した。争点を設定した方が有利だ-という考え方は正しい。04年参院選と07年参院選は、民主党が年金問題を争点に据えて勝利し、05年衆院選は自民党が郵政民営化を争点にして圧勝した。
 菅首相が今回参院選の争点を消費税にしようとしたのは明らかだが、準備不足、説明力不足だった。批判を浴びて怯(ひる)み、最後は枝野幹事長が「税の問題は争点でない」と言い出す始末だった。こんな胆力のなさでは国民が共感するはずもない。ある課題を争点として定着させ、支持を集めるには「この政治家、政党は政治生命をかけて、この政策をやりたいのだな」と国民に納得させなくてはならない。
 首相にも枝野幹事長にも信念はなかったのか、7月13日には「必ずしも当初想定していた期限にこだわらない」(枝野氏)として、税制改革案の年度内策定という野心的目標をひっこめた。これではいかにも迫力を欠く。「首相としてやりたいこと」をトーンダウンさせたのだ。
 いったい、菅首相は党代表選で何を旗印に戦うのか。「なぜ菅直人が首相でなくてはならないのか」を説明し切れるのか。毎年のように首相が交代するのはまずいというだけでは情けない。

「脱小沢」まで放棄か

 3つ目は、「脱小沢」路線までも修正しようとしていることだ。
 6月3日の民主党代表選の出馬会見で「小沢氏は、しばらく静かにしていた方がいい」と言い放った首相だったが、7月13日には小沢氏との会談を望んでいると表明。14日には、小沢氏との会談が実現すれば、自身の消費税発言をおわびするとまで言い出した。
 V字回復した政権発足当初の高支持率を生んだのが、「脱小沢」路線だったことをすっかり忘れたようだ。
 菅首相は今年の元日、東京・深沢の小沢邸での新年会に駆けつけ、乾杯の音頭をとった。それが、政権をとる際には手のひらを返して排除し、参院選で負けると再び接近を図る。
ご都合主義も甚だしいが、皮肉にも、15日には東京検察第1審査会が、小沢氏の資金管理団体の07年分収支報告書をめぐる政治資金規正法違反事件で、小沢氏に対して「不起訴不当」の議決を行った。菅首相はどう動くのか。「政治とカネ」の問題に正面から取り組まなければ、ますます民心は離れるだろう。
(政治部 榊原智)