兵藤二十八(軍学者)


「九一式徹甲弾」がよみがえる


 防衛省は2014年に、〈大型艦艇の外壁を上面・側面から貫徹し、内部の構造物を破壊しうる先進対艦弾頭技術〉を研究する方針を、公表している。

 わたしはこの話を聞いてすぐ、これは帝国海軍の戦列艦の主砲から発射できた「九一式徹甲弾」(いわゆる「水中弾」)の復活が考えられているに違いないと直感したのだ。

 だって、おかしいだろう。いまどきの「大型艦艇」には、ロクな「アーマー」など貼られてはいないのだ。げんざい防衛省が開発中の超音速対艦ミサイル(ラムジェットで飛翔し、命中時の終速はマッハ3~5になる、ともいう)ならば、かりに在来型の直径35センチ(戦中の『金剛』級や『扶桑』級の搭載主砲より1センチ小さい)の対艦弾頭であっても、その速度エネルギーだけでも、シナのポンコツ空母の左舷から右舷まで、もしくは飛行甲板から艦底までもラクラクと貫通してしまうはずである。それを、わざわざ「上面・側面から」などというあたりまえな話を強調しているのは、これは真の驚くべき攻撃イメージを敵に知られないための韜晦語法に違いない。狙いは水線下のヴァイタル・パーツ(エンジンや弾火薬庫)の直撃破壊にあると見た。シースキミング(水面スレスレ飛行)で敵艦舷側にアプローチし、目標の90m手前で海面にダイブ。そこから水中を突進して敵艦の深さ7mあたりに侵徹して爆発する。
 旧日本海軍の戦艦「大和」(三菱重工提供)
 旧日本海軍の戦艦「大和」(三菱重工提供)
 間違いない。帝国海軍の九一式徹甲弾が、間もなく戦術ミサイルの形で復活するのだ。弾頭部分の直径はおそらく46センチほどになるだろう。なぜなら、『大和』級で蓄積されている実射データを、今に活かせるからである。海自の呉軍港と三菱重工長崎造船所の奥の院には、門外不出のそのデータがしっかりと残されているのだ。こういうところが、光輝ある歴史を背負った海軍と、汚職不名誉の過去しかない猿真似軍隊との違いなのであろう。『大和』は、無駄ではなかった。このようにして、今日の我々を守っているのである。

 『大和』『武蔵』の46センチ砲から「九一式徹甲弾」を発射した場合、初速が785m/秒。まあざっとマッハ2強だ。そして命中時の存速は、マッハ1強からマッハ2弱というところだったようだ。

 従来の国産の対艦ミサイルは、終速が亜音速(マッハ0.7ぐらい)でしかなかったから、この「九一式徹甲弾」を現代に再現しようとしても、できなかった。しかし、ラムジェット(タービンに頼らずに運動速度により吸気を圧縮して燃焼噴射させるエンジン形式)で超音速巡航できる新型国産対艦ミサイルならば、「九一式徹甲弾」の水中挙動を、そっくり再現することも容易なのである。