集団的自衛権の行使容認をめぐる与党協議が大詰めを迎えている。安倍晋三首相(59)と公明党の山口那津男代表(61)は19日の党首会談で、早期の合意を目指すことで一致した。なお残る対立点の一つが、停戦前でも海上交通路(シーレーン)の機雷掃海活動を認めるかどうかだ。

 公明党は反対し、政 府・自民党は、中東のペルシャ湾を事例集に挙げて必要だと主張している。もっとも、その意義はペルシャ湾でのオイルルート確保にとどまらない。中国や北朝 鮮が東・南シナ海や日本近海などで「機雷戦」を挑んでくることを牽制(けんせい)し、抑止することにもなる。公明党は、掃海活動が日本の平和に直結するこ とを理解し、容認へ転換すべきだ。集団的自衛権の対象から停戦前の掃海活動が外れていちばん喜ぶのは、公明党ではなく、中国や北朝鮮の軍部であるからだ。

10万個超を保有か

 山口氏は「敵対行為とみられて攻撃される。そこまでやるべきかは慎重に」と語っている。

 しかし、日本が輸入する原油の8割は中東産だ。日本籍だけでなく、さまざまな国の船籍で、かつ外国人が乗組員のタンカーで運ばれてくる。ペルシャ湾、ホル ムズ海峡、インド洋、マラッカ海峡、南シナ海またはフィリピン周辺海域そして日本近海へ至るシーレーンを通ってくる。個別的自衛権では対処しきれない。

 米海軍大学の『海軍大学レビュー』65号(2012年)には、中国近海における機雷戦を、専門家が検討した論文「機雷の脅威を検討する」が掲載され、12年の海上自衛隊の論文集『海幹校戦略研究』(2巻1号増刊)に翻訳・掲載されている。

 それによると、湾岸戦争当時の1991年2月、イラクが敷設した1300個の機雷によって、米海軍はペルシャ湾のコントロールを一時的に失った。朝鮮戦争では、北朝鮮東岸の海域に3000個の機雷が敷設され、50年10月の国連軍の元山上陸作戦を妨害した。

 ちなみに、占領軍の命令で吉田茂内閣が海上保安庁の特別掃海隊を派遣し、触雷で日本人に死者1人重軽傷者18人が出たのは、このときである。

 論文は、中国海軍は、機雷が費用対効果の高い兵器であることを理解し、10万個以上の機雷を保有していると推定。航空機や潜水艦、駆逐艦だけでなく商船や漁船でもひそかに敷設できるとした。

 中国海軍が機雷を敷設するケースとしては、台湾有事や南シナ海危機、朝鮮有事があげられた。グアム島近辺や東シナ海、西太平洋への敷設もありえるとした。 そして、米海軍の対機雷戦能力は限定的であるとして、日本や韓国の掃海能力の発揮が、シーレーンの確保に欠かせないとの認識を示した。

「巻き込まれる」は間違い

 これが現実である。「米国の戦争に巻き込まれるから、機雷掃海は反対」と騒ぐのは間違っている。

 日本にとって朝鮮有事や台湾有事は人ごとではない。避難する邦人を乗せた外国船を守るなら、機雷掃海も当然必要だ。シーレーンの安全確保も、通商国家の日本にとって死活的に重要だ。

 また、南シナ海は、核ミサイル搭載の中国原潜が潜み、米海軍とにらみあう海である。世界の商業海運の半分が通過する大動脈でもある。「航行の自由」が何よりも求められる海域だ。

 日本が積極的に掃海活動にあたる構えを示し、中国が機雷戦への誘惑にかられることを抑えることは日本の存立にかかわることである。
(論説委員 榊原智)