山本一太(参議院議員)

 今日、安倍晋三自民党総裁の無投票再選が決まりました。立候補を模索していた野田聖子さんが20名の推薦人を集められなかった最大の理由は、安倍総理への支持を決めていた7つの派閥による締め付けではないと思います。総裁選が無投票になった最大の理由は、現在、国会での成立を目指して参院で審議が続いている平和安全法制への影響を多くの議員が懸念したこと。もともと審議日程がギリギリであることに加え、万一、総裁選で2人の候補者の法案に対する「温度差」が議論になれば、マスコミはこぞってこの点を取りあげたはずです。平和安全法制を廃案に追い込もうとしている野党にも格好の材料を提供する結果になっていたでしょう。

 加えて、安倍総裁の対抗馬擁立が盛り上がらなかった背景には、日本再興を掲げ、経済再生や安全保障の強化に取り組んでいる安倍総理の政策、理念に対抗できるような旗印が見当たらないということもあったと考えています。実際、党内のあちこちで「政策の論点が見えて来ない。今、総裁選をやってどんなメリットがあるのか?」という声が聞こえていました。

 オープンな選挙で総裁を決めるというのはもちろんいいことだと思いますが、今回、無理に総裁選挙をやることは、あまりにタイミングが悪かった。自民党議員の大半は、「長期安定政権の実現こそ、今の日本にとって最優先事項だ」という気持ちが強かった。そういうことではないでしょうか。

 今回、自民党内の7つの派閥全てが、事前に安倍総理の総裁再任を支持しました。第4次安倍政権からは、各派閥のバランスにも配慮しつつ、人事や政策を進めることになると思います。これはある意味、長期安定政権の宿命と言ってもいいかもしれません。が、既存の枠組みにも配慮しつつ、いかに思い切った人事をやり、大胆な政策を推し進めていけるか? ここらへんが安倍総理にとってのチャレンジになって来ると思います。

 安倍総理には何としてもあと3年の総裁任期を全うしてもらいたいと考えています。そうすると、「6年間の本格政権」ということになります。個人的には、2020年の東京オリンピック&パラリンピックまでやって欲しい気もします。
高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部の会合であいさつする安倍晋三首相(左から2人目)。左端は山本一太IT政策担当相=2013年5月24日午前、首相官邸(酒巻俊介撮影)
高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部の会合であいさつする安倍晋三首相(左から2人目)。左端は山本一太IT政策担当相(肩書当時)=2013年5月24日、首相官邸(酒巻俊介撮影)
 いずれにせよ、私の頭の中で言うと、ポスト安倍は少なくとも3年後かそれ以降ということになります。

 「ポスト安倍」を目指す次のリーダーには、ひとつ重要な条件があると思っています。それは、イメージがクリーンなこと。今回は無投票ということでクローズアップされませんでしたが、「総裁公選規程」の改正によって今回から自民党員投票の重みが増しています。自民党員と一般の国民、特に無党派層と呼ばれる人たちの意識が全く同じだとは考えていません。が、党員の人たちも世の中のムードに影響を受けます。政治とお金の問題とか、あるいは、筋の悪い人脈とか、そういうものを持っている人、そういうイメージのある政治家は、決して総理にはなれない。そういう時代です。

 こうした条件も踏まえて考えると、石破茂地方創生担当相は、やはり最有力候補の一人だと思います。政策もできるし、一般党員にも人気がある。それから石原伸晃元幹事長。経験も実績もあるし、前回の総裁選にも出馬しています。谷垣禎一幹事長は本物の人格者。党内に谷垣さんを悪く言う人はいません。しかも自民党が野党時代、総裁として苦労を重ねています。あの時代があったからこそ、政権交代が出来た。多くの議員の共通認識だと思います。

 やや若い世代で言うと、党内きっての政策通である林芳正農相、野党時代に谷垣総裁と総裁選挙で争って大健闘した河野太郎衆院議員にも可能性があると思います。派閥の長となった岸田文雄外務大臣も存在感を増しています。総裁選にエントリーする資格のある人だと思います。

 さらに言うと、安倍首相が次世代リーダーとして育てようとしている稲田朋美政調会長。「日本初の女性総理」を看板に躍り出て来る可能性も十分ある気がします。安倍長期安定政権の後は、「群雄割拠」の状況になるかもしれません。
 (聞き手 iRONNA編集部 川畑希望)

やまもと・いちた 昭和33(1958)年、群馬県生まれ、中央大法学部卒。米ジョージタウン大大学院修了。国際協力事業団(JICA)勤務を経て、平成7年、参院選初当選。外務政務次官、参院外交防衛委員長、外務副大臣など歴任。24年、第2次安倍内閣で内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、科学技術政策、宇宙政策)、 IT政策担当、海洋政策・領土問題担当、 知的財産戦略の推進等に関する事務担当に就任。現在3期目。父は参院自民党幹事長だった山本富雄氏。