片山虎之助(参議院議員)

 自民党の総裁選では、党内7つ全ての派閥が安倍首相の支持を表明した。いま、政界も自民党内も「一強多弱」。安倍さんだけが強くて対抗勢力がいない一強状態。自民党内の派閥の力が弱くなっており、その理由が派閥に資金が集まらないことだ。かつて自民党はそれぞれの派閥がかなりの集金力を持っていたが、政治資金制度が変わって、派閥単位で資金を集めていたがそれが難しくなり、党の執行部中心になった。

 派閥の力が弱まったもう1つの理由は、1994年の公職選挙法の改正で1選挙区から1名を選ぶ小選挙区とブロック比例になり、参議院もだんだん1人区が増えて小選挙区に近くなった。同じ政党の候補者同士が争うことから派閥の力が大きかった中選挙区制と違い、小選挙区制では執行部が公認を決めるので、執行部に逆らうと、なかなか公認してもらえない。自民党の評判がいい時は自民党、民主党に風が吹く時は民主党が当選して、国会議員に相応しくなくても公認した人が通ってしまう。まさに派閥が弱くなって議員もスケールの大きい人が育たず小粒になり、劣化していく。長期政権になればさらに執行部が強くなっていくだろう。

 かつて三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫が佐藤栄作総理の後継を争った「三角大福」の頃の派閥抗争は、いまの制度の下では難しいでしょうね。

 さらによくないのは政治家と政党。政治家も努力せず、政党もいい人を育てられない。ただし、議員を選ぶのは国民。文句を言うだけでなく、まず、ちゃんとしたいい人を選ぶべき。定見がないメディアもよくない。ポピュリズムで、人気取りをする人をおだてている。インターネット・ポリティクスとも言われている。政治がだんだん悪くなっているのは、みんなの責任だ。


一強多弱を崩す2大政党制


 政界の「一強多弱」は日本にとっていいことではない。強い党や人が驕って緊張感がなくなり、緩んでしまう。強力な対抗馬がいて、お互い競争し、切磋琢磨することが必要だ。一強多弱を解消するには、野党がまとまる、または自民党と似たような強い党ができることだ。ただ、野党がかたまるといっても、政策抜きでまとまるのは「野合」であり、これではくっついても、すぐバラバラになってしまう。本当は、自民党のような党がもう1つあって、政策が多くの点で一致し、明らかに違う点もあるという「第1自民党」と「第2自民党」が政権交代していく形がいい。
片山虎之助参院議員
 たとえば、アメリカの民主党と共和党、イギリスの保守党と労働党、名前はだいぶ違うが、安全保障など基本的な政策でそんなに大きな違いはない。オバマは民主党だけれど、その前のブッシュは共和党だったし、政権交代している。イギリスは保守党と労働党が交代、長期政権のサッチャーは保守党だった。日本もそういう風になったらいい。一つは自民党だが、もう一つがない。民主党はこれまでの実績からみて適当でない。維新をもう一つの党にするのが我々の考え。現実的な安定した政策を掲げて大胆な改革を進め、自民党と交代できるようになったらいいと思う。良い人材が集まるような政党を目指し、われわれの党を2大政党の一つにして行きたい。これからも色々実験的なことをしていきたい。

 自民党は昭和30年にできたから、60年の歴史がある。そう考えると、他の党は若い。歴史や伝統もないし、政党文化もできていない。人を集めたり育てたりするきちっとした仕組みもない。これからわれわれを中心にして2大政党制にみんなが努力していかなければならないし、国民の皆さんも応援してくれると有難い。

 安倍首相が再選したら6年というたいへんな長期政権になる。安保法制の見直しもあるが、国民の生活に直結しているのは景気。4月~6月期の国内総生産(GDP)を見ると、3四半期ぶりにマイナスだった。いま、中国の経済がおかしくなって、アメリカの公定歩合の引上げにも不透明感があって、世界的に景気がおかしくなっており、株安でこれからどうなるのかという不安もある。所得が一番暮らしに直結しているので、景気が悪くなると、安倍政権の支持率も下がる。今後も決して安倍首相にとって平坦な道ではない。

 自民党内には、安倍首相にすぐ代わる人はいないのが現実。党外でみれば、「ポスト安倍」は「大阪維新の会」の橋下徹大阪市長しかいない。

 橋下さんがえらいのは、実行力があること。色んなアイデアも斬新だが、そのアイデアを実行する力がある。もう1つは発信する力、みんなに説明して納得させる能力がある。そして、統率力。人が集まってきて、あの人が言うことに従おうという、慕われるところもある。橋下さんは政治家に向いているし、得難いリーダーとしての力がある。

 本人は政界引退を言っているけれども、それこそ天が許さない。「国政に出るべきだ」と私は橋下さんに強く言っているんです。橋下市長は出るとは言わないけど、出ないとも言わなかった。私は「たちあがれ日本」という政党から旧日本維新の会に合流したが、2012年の衆院選であっという間に維新が54議席を獲得したのは驚いた。その手腕やこれまで知事や市長としての実績はみんな知っているからね。若いし、資質十分だからこれから国政に出てもらって、がんばったら総理になれる潜在的な力があると私は思っています。
(聞き手 iRONNA編集部 川畑希望)

かたやま・とらのすけ 昭和10年、岡山県出身。東大法学部卒。岡山県副知事を経て平成元年参院選に出馬し、初当選。総務相や参院自民党幹事長、維新の党総務会長などを歴任。当選4回。