民主党にも保守系の国会議員がいないわけではない。鳩山由紀夫前首相(63)と菅直人首相(63)の両政権は、旧社会党が復活したかと思わせる「進歩的」な政策を推進し、民主党の保守系議員たちは不満を募らせてきた。9月14日の党代表選は、政策面の左傾化に歯止めをかけ得る機会だが、保守系議員たちは大きな声をあげるには至っていない。

まるで旧社会党

 戦後日本では長く政界の対立軸は「保守」と「革新」とされてきたが、旧ソ連崩壊も相俟って、旧社会党や共産党に代表される革新勢力が退潮し、この構図は忘れ去られた。
 平成に入って自民党への対抗政党として登場したのが「二大政党による政権交代」を唱える新進党、ついで民主党だった。
 民主党には、革新勢力の中軸だった日教組や自治労が支援する旧社会党議員や旧社会党職員が流れ込み、今も党内で勢力を保っている。
 それでも民主党は「革新政党」ならぬ「改革政党」と見られ、自民党にあきたらないか、選挙区などの事情で自民党から出馬できない保守系の候補者が、民主党から相次いで当選してきた。
 鳩山政権が取り組んだ米軍普天間飛行場の県外・国外移設や永住外国人への地方参政権(選挙権)付与、親子別姓を意味する選択的夫婦別姓、東アジア共同体構想はどれも実現しなかったが、往年の革新勢力に属した「進歩的文化人」らが知ったら大歓迎したであろう政策だ。
 菅政権も同様だ。菅首相は旧社会民主連合出身、実力者の仙谷由人官房長官(64)は旧社会党出身。自虐史観に染まっているようで、日本の朝鮮統治を一方的に断罪する日韓併合100年に伴う首相談話を発表した。
 終戦の日に靖国神社を参拝する菅内閣の閣僚は皆無で、朝鮮学校の授業料無償化は近く発表されそうだ。

閣僚の靖国参拝ゼロ

 鳩山政権で検討が進み、菅政権で発表された政府の男女共同参画会議(議長・仙谷氏)の答申(7月)は、選択的夫婦別姓制度導入とともに、多様な生き方を可能にする社会制度の実現を理由に「世帯単位の制度・慣行から個人単位の制度・慣行への移行」を唱えた。
 さほど注目されなかったが、家族を軽視し、国民を個人単位へ分解して政府が管理しようとする社会主義的発想が色濃く反映している。
 これらの政策に、民主党の保守系議員らは表立った行動を控えてきた。外国人参政権問題で、小沢執行部の「弾圧」を恐れる少数の若手が密かに集まっていた程度だ。
 民主党の動かない「保守」の典型が、次世代リーダーの1人で、約30人のグループを率いる野田佳彦財務相(53)=衆院当選5回=だろう。
 野田氏は、2005年の内閣への質問主意書では「『A級戦犯』と呼ばれる人たちの名誉は回復されている」と主張していた。父は自衛官でもある。
 野田氏は、仙谷氏が主導した日韓併合をめぐる菅首相談話について、周囲に懸念を表明していた。しかし、最終的には閣議決定に淡々と応じている。終戦の日の靖国神社参拝も行わなかった。

新たな動き

 一方で野田氏は17日、自身を財務相に起用し、「脱小沢」路線を掲げる菅首相の再選支持を表明した。党内政局を優先し、保守ののろしをあげる機会を生かさなかったように見える。菅首相再選を支持するにしても、政策面ではっきりともの申す選択肢はあったはずだ。
 新たな動きも出ている。12~13日、文豪、森鴎外ゆかりの旅館「鴎外荘」(東京・池之端)に民主党保守系の中堅・若手約20人が集結。衆院当選4回の松原仁国会対策副委員長(54)と牧義夫衆院環境委員長(52)を共同代表とする勉強会「日本国研究会」を結成し、識者から安全保障問題の講義を受けた。
 会合では、菅首相談話への批判が相次ぎ、代表選候補者に見解をただすことを確認した。党内では「松原氏らは菅首相を支持しないだろう」(中堅)とみられている。
 民主党政権発足後、初めての保守系議員の「発信」だが、菅首相の対抗馬が出たとしても、松原氏らの政策志向と重なる保証はどこにもない。民主党代表選で保守の旗が立つ日は来るのだろうか。
(政治部 榊原智)