仲村覚(沖縄対策本部)

 約7年前から沖縄問題に取り組んできた私は今、沖縄の歴史という、自分の経歴とは無関係で不相応な大きなテーマに大きく足を踏み込んでしまっている。日本は「従軍慰安婦」や「南京大虐殺」、「強制連行」といった歴史捏造により中国、韓国から「歴史戦」を仕掛けられている。しかし、私から見れば日本最大・最重要な歴史戦は沖縄の歴史戦である。他の二つの歴史戦は日本人の誇りを失わせ自主防衛を阻止するカードとして使われているが、沖縄の歴史捏造プロパガンダは、日本民族を分断し滅亡させるカードとして使われているからである。そして、この問題は日本民族全体の問題であり最大の危機だが、沖縄の歴史を取り戻し、根の深い沖縄問題を解決した時にこそ、日本民族は、強くて団結力のある世界のリーダーとして復活すると確信している。

市民団体が国連演説を手引き


沖縄県の翁長雄志知事(右)との会談を前に握手を交わす安倍晋三首相=2015年9月7日、首相官邸(酒巻俊介撮影)
 沖縄の地方紙では翁長雄志知事が9月14日から10月2日にわたってスイスのジュネーブで開かれる国連人権理事会に参加し辺野古移設について演説をするという報道がなされた。

 普天間飛行場の辺野古移設は日米間の国防外交政策である。一地方自治体の首長が国防外交問題を国連に訴えることはありえないしあってはならない。しかし、不可解なことに、翁長知事は「辺野古移設」をテーマにこれを阻止するための演説をするというのだ。それを実現するために積極的に動いているのは沖縄県庁ではない。国連NGOという民間団体である。

《スイスのジュネーブで9月14日~10月2日の日程で開かれる国連人権理事会で、翁長雄志知事が辺野古新基地建設問題について演説するための見通しがついたことが22日、分かった。
 知事の国連演説は新基地建設阻止を目的に活動する「沖縄建白書を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」が複数の国連NGOの協力を得て準備してきた。島ぐるみ会議によると知事の日程調整はこれからだが、開催期間中の9月21日か22日を軸に登壇できる方向で調整している。
 翁長知事は当選後、国連への働き掛けに意欲を示しており、演説が実現すれば知事が新基地建設問題の解決を広く国際世論に喚起する場となりそうだ。
 今回、国連との特別協議資格を持つ国連NGOの「市民外交センター」が島ぐるみ会議などからの要請を受け、人権理事会での発言時間を翁長知事に貸与する意向を示している。国連との特別協議資格を持つNGOが他者に発言時間を貸すことは日常的に行われており、可能だという。
 同センター代表の上村英明恵泉女学園大教授は「人権問題を扱う国連人権理事会で翁長知事が発言すれば、新基地建設に反対する県民の総意と理解され、日米両政府にプレッシャーを与えられるだろう」と述べ、知事が国連で演説することの意義を強調した。
 島ぐるみ会議は翁長知事の人権理事会での演説に向け、同じく国連NGOの「反差別国際運動(IMADR)」と調整してきた。今回、IMADRが人権理事会との日程調整を担当し、市民外交センターが発言時間を貸す方向になった…》(琉球新報7月23日)

 県庁の知事公室の秘書にこの件について尋ねて見たが「それは島ぐるみ会議が進めていることで県庁は何も知らない」という回答だった。島ぐるみ会議は翁長知事の推薦団体だが、県庁側がほとんどノータッチのまま民間に過ぎない市民団体が首長を動かし、海外日程の調整を行っているというから驚きだ。

勝手に先住民族扱いするな!


 知事に発言時間を提供する国連NGOは一体どんな団体なのか。記事には「市民外交センター」「反差別国際運動」など沖縄ではあまり馴染みのない団体が次々と登場する。

 その団体が2013年に開催したイベントチラシを見ると「とどろかせよう! アイヌ、沖縄・琉球の声 世界に認められた先住民族の権利をもとに」「STOP! レイシズム なくそう! 日本の人種差別 集会シリーズ」とあってこう記されていた。

《二〇〇七年、先住民族の権利に関する国連宣言が採択され、翌年には日本政府がアイヌ民族を日本の先住民族と認めました。現在アイヌ文化の保護促進の取り組みがなされているものの、民族の権利回復は遅々としてすすんでいません。また、「沖縄/琉球民族は先住民族だ」という主張に関して日本政府は国連の勧告にもかかわらず、認めていません…》

 確かに2008年にアイヌ、琉球という少数民族を保護すべきだとした国連勧告が出されたことはあった。日本政府はアイヌ文化を保護する文化振興法を制定させたが、琉球民族を少数民族、先住民族とは認めていない。チラシはそのことを批判している。

 ただ、沖縄で生まれ育った日本人である私にとって驚きなのは私の知らない間に県外の団体に勝手に沖縄県民が先住民族にされてしまっていることだ。ほとんどの沖縄県民は「自分は日本人」だと思っている。自分たちが知らないところで先住民族扱いをしたこのような集会が東京で開かれていることを知ったら激怒することは間違いない。

 実は反差別国際運動とは部落解放同盟の呼びかけで発足した国連人権NGOなのだ。東京事務所は部落解放同盟中央本部と同一住所で、新聞記事にある様々な団体はいずれも反差別国際運動と連携しながら活動しているグループである。

 反差別国際運動は遅くても2012年以降、米軍基地が先住民族である琉球民族の人権を侵害し、差別をもたらす存在と主張してきた。今年6月には「沖縄県民の人権が辺野古新基地建設計画によって脅威にさらされていることを懸念する。人権を守るために抗議する人々が警察や海上保安庁の暴力の対象となっている。日本政府に対しこのような暴力を控え、沖縄の自己決定権を尊重するよう要請する」などと訴えた声明を国連人権理事会に提出している。

 彼らによれば、沖縄の基地問題は、先住民族である琉球民族の権利を侵害する人種差別なのだ。そう主張し続けてきたNGOがお膳立てし、時間枠まで譲ってもらって翁長知事は辺野古移設反対の演説をするというわけである。国連からすれば、先住民族の代表が「米軍基地押し付け差別」を訴えにやってきたことになる。

 ではなぜ部落解放同盟が背景にいる反差別国際運動が沖縄の基地問題―一見、差別とは縁遠いように思える―にコミットするのか。それは1970年代のはじめに台頭してきた新左翼の「窮民革命論」という理論を引き継いでいると考えられる。左翼の教科書通りに考えれば革命というのは本来、労働者階級が担うものである。労働者になれない「窮民」というのは生きることで精一杯で革命への情熱や思い入れ、意欲にも乏しくなりがちだ、と考えられて来た。下手をすると反革命の温床にすらなり得る存在とされてきたのだ。

 ところが竹中労、平岡正明、太田竜といった「世界革命浪人(ゲバリスタ)」を名乗る新左翼活動家は「窮民革命論」を提唱し、注目を集める。一般の労働者は高度経済成長で豊かな暮らしが謳歌でき、革命への意欲を喪失してしまった。つまり労働者階級では革命の主体にはなりえない。逆に疎外された窮民こそが革命の主体となりえるという理屈がたてられた。窮民の具体例として挙げられているのはアイヌ民族、日雇い労働者、在日韓国人、朝鮮人、沖縄人など。窮民のオルグを図って彼らを取り込むことで活路をひらき、革命への足がかりを築こうというのだ。

 太田竜は自著『再び、辺境最深部に向って退却せよ!』で、約百年前に編入されたばかりの「新附の民」であるアイヌ民族や沖縄人には、まだ「数千年来の皇国の精神」が宿っておらず反日闘争の志操堅固な活動家(世界革命浪人)を生み出す貴重な人材源になりうると述べている。しかし、これほど沖縄県民をバカにした理論はない。要は沖縄を救済するかのごとく近づきながらも沖縄県民を内心で「窮民」と見下し、最終的には日本解体の先兵に利用しようと画策していることになるからだ。悲しいことに、既に翁長知事は窮民革命の先兵となってしまっているように見える。