豊かな自然に恵まれた日本では、海の幸、山の幸を凝らした世界一の食文化が育まれてきた。寿司、和牛、日本米など、海外で高く評価される料理・食材は多い。しかし、その日本の食卓が危機に瀕している。鮮魚が食べられなくなり、味噌や豆腐が食卓から消える日がやってくるかもしれない。その背後には、アメリカの政治的意図や中国の拡張、そして“内なる敵”の存在がある。 

“外圧”が日本の食文化を脅かす事例の最たるものが、マグロ・クジラ問題だろう。

 築地の中央卸売市場で毎年盛り上がりを見せるマグロの初競り。落札価格は急騰し、5年前まで1本500万円程度だったものが、今年は5649万円(大間産、269kg)の過去最高額となった。

「高級モノの競りでは中国が存在感を見せています。昨年は香港の寿司チェーンが3249万円で落札しましたし、今年も途中で中国の業者が5000万円台の値を示しました。落札した日本の寿司チェーンのオーナーは『海外に持って行かれるより、日本でおいしいマグロを食べて欲しい』と頑張ったそうです」(築地のマグロ仲卸業者)

 中国の拡張だけではない。 

 野生生物の国際取引を規制するワシントン条約会議に大西洋クロマグロの禁輸案が提起されたのは2年前のこと。欧米が支持した提案(提案国・モナコ)は大差で否決されたが、世界のクロマグロの約8割を消費する日本への批判はやまない。だが、そもそも欧米に批判の資格があるのか疑問だ。東京海洋大学の末永芳美教授が説明する。

「アメリカでは、大西洋クロマグロのスポーツフィッシングが弁護士や医師など富裕層の間で盛んです。『ゲーム・ハンティング』などと称して重さや体長を競う。彼らは重さや長さを測って写真を撮ったら、マグロを浜に埋めて廃棄してきたのです。

 その後、1980年代にはマグロが日本で高く売れることに気付き、素人たちが一攫千金に乗り出した時期もあった。彼らがもっと自由にスポーツフィッシングを楽しむため、環境団体と組んでマグロ漁の禁止・制限に乗り出した経緯があります」

 末永氏によれば、ICCAT(大西洋マグロ類保存国際委員会)が米国に割り当てる漁獲枠(948.7t)のおよそ半分がスポーツフィッシング消費なのだという。つまり毎年400~500tがレジャー目的で消えているのだ(日本の同漁獲枠は1000t強)。マグロを釣り上げては埋める人間に「絶滅危惧だから保護しろ」と言われても説得力はない。 


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