尖閣(せんかく)諸島沖の中国漁船衝突事件(尖閣事件)をめぐる菅直人首相(64)、仙谷由人官房長官(64)ら民主党政権の対応はいかにも弱腰だ。中華人民共和国を過大評価して「位負け」に陥っている。対中恐怖症は自民党政権にもあったが、度合いは強まるばかりで今や広く国内に蔓延(まんえん)している。

 両国の国力と国情、国際的位置を考えれば、中国の暴走を押さえ込み、平和を保つことはできる。日本の政治家と国民がしっかりすればいいだけの話だ。現代中国は、末期の清国のような「張り子のトラ」だと思った方がいい。

長崎事件を想起

 今回の尖閣事件では、民主党内からさえ、1895年の日清戦争後の「三国干渉に匹敵する国難だ」との声が出ているが、むしろ1886年の長崎清国水兵事件を思い起こさせる。
 「眠れる獅子」と言われた清国の北洋艦隊は排水量7000トンのドイツ製新鋭戦艦「定遠」「鎮遠」を持ち、3000トン級の艦しかない日本海軍をはるかに上回るとみられていた。
 
 1886年8月、「定遠」「鎮遠」を含む4隻の北洋艦隊の軍艦が、修理のためと称して日本政府の許可なしに長崎に寄港した。
 このこと自体、典型的な示威行動だが、上陸した数百人の清国水兵は長崎の花街などで乱暴狼藉(ろうぜき)を働き、日本の警察官と衝突、双方に死傷者が出た。
 中国に贖罪(しょくざい)意識を持つ日本人は仙谷氏を筆頭に依然多いが、今と同様、中国が居丈高な時期もあったのだ。
 明治の日本人が偉いのは、国造りの中で陸海軍の整備を怠らなかった点だ。1894~95年の日清戦争では北洋艦隊を打ち負かして、「鎮遠」などを拿捕(だほ)している。
 10月18日の参院決算委員会で、自民党の丸山和也参院議員(64)は、仙谷氏との衝撃的なやり取りを明かした。

仙谷氏の歴史的迷言

 中国人船長釈放の直後に仙谷氏と電話した際、丸山氏が「日本が中国の属国になる」と憂慮を伝えたのに対し、仙谷氏は「属国化は今に始まったことではない」と語ったという。本当なら政治リーダー失格の歴史的迷言だ。

 民主党政権は中国漁船衝突時のビデオ画像の報道、国民への公開をためらっている。中国政府が怖いのだ。野党でも、たちあがれ日本の与謝野馨・共同代表(72)が27日、「終わった事件の余波を拡大する方向で動いてはいけない」と公開に反対した。こんな事なかれ主義が中国を増長させてきたことに気づかないのか。真相を各国や、言論の自由のない中国国民に伝えていくことこそが、結局は日中関係を安定させていく。

日本に十分ある国力

 日中のGDP(国内総生産)は今年逆転するという。4~6月期の名目GDPで日本(1兆2883億ドル)は中国(1兆3396億ドル)を下回った。

 けれども、中国の1人当たりGDPはチュニジアやアルバニアなど後発の開発途上国の水準だ。中国も演算速度世界一のスパコンを開発しているが、全体として技術力は日本が圧倒的に上だ。統計上の疑問もあるが、GDPがほぼ同じとしても中身は違う。

 共産党が支配する中国は、自由も民主主義もない。それを求める政治犯がノーベル平和賞を受賞すると、党と政府は金切り声で反発する。富は資本主義国以上に偏在し、法治国家でもない。環境悪化は進み、あと15年ほどで深刻な高齢化社会を迎える。

 日本は問題をいろいろ抱えてはいるが、自由と民主主義が定着した立憲君主制の国として、社会の安定度は世界でもなお高い。1億人規模の人口と十分に大きなGDP、営々と投資してきた社会インフラ、技術力がある。これほどの国が南西方面で、「大きな後発発展途上国」である中国の脅威に対抗できないなら、それはもう日本人のやる気の問題だ。

 しかも、中国は日本だけに全力を向けてくるのではない。インドも、ベトナムも、ロシアも、米国も、台湾も相手にゲームを展開している。

 加えて、日清戦争前とは違って今は、鳩山前政権が傷を負わせたものの、日米同盟もある。集団的自衛権の行使を認め、「子ども手当」の予算の半分でも防衛力整備に回せば、子供たちの世代に、今よりはるかに平和な日本と東アジアを引き継げる。

 核抑止と情報面の協力を除けば、尖閣諸島防衛は日本が当たればいい。さしあたり、外国人の不法上陸によるトラブルを防ぐためにも、尖閣を自衛隊の演習地とし、陸自の部隊を交代制で、切れ目なく派遣したらどうだろう。
(政治部 榊原智)