国民世論の風向きは逆風ですが


春香クリスティーン(以下、春香) いま、参議院で安全保障関連法案の審議が大詰めを迎えています。国会前では、学生団体SEALDsをはじめ、安保法案に反対する人たちによるデモ活動がより勢いを増しています。安倍晋三首相は否定していますが、反対派の人たちは安保法案が憲法違反であるとか、戦争する国にするための『戦争法案』であるとの主張を繰り返しています。国民世論の風向きは逆風ともいえますが、政府としてはどう受け止めているのでしょうか。

石破茂・地方創生相(以下、石破) 振り返れば、いわゆる有事法制を審議した時やイラクに自衛隊を派遣した時も『戦争法案だ』『憲法違反だ』と言われました。私は防衛庁長官や防衛大臣としてどちらの時も担当しましたから、『有事法制は戦争を起こさせないための法律なんですよ』『イラク派遣と言っても、戦争をしに行くのではなく、イラクの復興を支援するのです』と一生懸命ご説明をして、最後は賛成が反対を上回った、ということがありました。
(瀧誠四郎撮影)
春香 やはり、6月4日の衆院憲法審査会の参考人質疑で自民党を含む各党が推薦した3人の憲法学者が違憲だと発言した辺りから流れが変わったということでしょうか。その後も自民党の大西(英男衆院議員)さんが安保法案に批判的な報道について『懲らしめなければいけないんじゃないか』という発言をしたり、礒崎(陽輔)首相補佐官が『法的安定性は関係ない』と発言してしまうなど、自民党議員の発言が批判の的になりましたよね。石破さんにしてみれば、正直もう足を引っ張らないでほしいという思いはなかったんですか?

石破 政府全体として、最初の想定とは違った部分があったかもしれません。足を引っ張るも引っ張らないも、政府与党は一体ですから、あれこれ言っても何もならないんですよね。色々あって、もしダメージが起きたとするならば、それを全体としてカバーしていくのが政府与党というものでしょう。例えば、300小選挙区には原則すべて自民党の支部があって支部長が居るわけですから、それぞれが自分の受け持っている選挙区で、この法案をどう説明するか、っていうようなこともしなければならない。私はいろんな議員さんの国政報告会やパーティーに週に4、5回は行っていますが、だいたいそこで安保法制の話もします。それぞれがお預かりしている選挙区はそれぞれの国会議員の責任でご説明すべきものですから、報道がどうあれ、本質論を地元でちゃんとする、ということだと思います。ダメージがあった時にどうやって、自民党の議員みんなでそれをカバーするか。もちろん全てをカバーするのは難しいかもしれないけれど、もっともっとみんなで努力しよう、ということなのではないでしょうか。先日、世論調査の結果を受けて、『国民の理解が進んでいると言える自信はない』と会見で発言したら、新聞などはすぐに『内閣批判だ』って書かれましたが、これはまさに『そういう数字だからみんなで努力しないといけないね』ということを言いたかったんです。それを『石破大臣が批判』とか『次期総裁選に意欲』なんて報道されるのは心外ですね。

春香 なかなか答えづらいかもしれないですけど、自民党の中でも今回の法案について、実は反対だったり、違憲なんじゃないかと思う議員っていたのでしょうか?

石破 いないと思います。たとえ考え方が少し違っても、決まったら皆で実行する。そういうものです。議論を尽くして、決まった結論には、みんなで責任を持たなければいけません。

春香 さきほど、話が出た大西さんや礒崎さんの発言だったり、国民の目から見ると、なんとなく自民党自身も一枚岩になれていないのではと思うことがあります。

石破 一枚岩かどうかということより、この法案の内容をどれだけの人がきちんと正確に理解して、説明できていますかっていうことなんだろうと思います。例えば、さっき申し上げたイラクへの自衛隊派遣の時も、海上自衛隊をインド洋に派遣していたテロ特措法の期限が切れて、一回撤退を余儀なくされて、その後、衆議院で3分の2の再議決をした時も、渋谷などで街頭演説会をやりました。福田内閣でテロ特措法を延長した時は、高村(正彦)外務大臣、町村(信孝)官房長官、防衛大臣が私で、3人そろって新宿や渋谷の街頭に立ったんです。それはある意味、本気度っていうかな、そういうものを明示的に表したい、ということだったんだと思うんです。だから今回も、国会で安倍総理や中谷(元)防衛大臣ががんばればいいや、ということだけではないんですよね。

春香 メディアの特性なのかもしれないですけど、揚げ足を取るっていうのは絶対あると思いますが、法案審議の流れを見ていて、自民党側からボロが出てしまうというのは、なんとなく気がかりなんですよね。

石破 そうですね。安倍総裁が政権を奪還した時の衆院選、2年前の参院選、去年の衆院選と、多くのご支持を頂いてきたということと、民主党が未だにあまり国民の理解を得ていないということ、そういう状況に少し驕りや緩みが出てきてしまう、ということには気を付けないといけないでしょうね。