集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案が成立する見通しとなった。その内容、背景、意義をQ&A形式でまとめた。

 Q そもそも集団的自衛権とは何か

 A 日本は従来、「個別的自衛権」の行使しか認めてこなかった。これは敵国の軍隊が日本を侵略しようと攻め込んできた場合に、自衛隊が敵部隊を撃退することだ。これに対して「集団的自衛権」というのは、日本が直接攻撃を受けていなくても、米国など他国が攻撃を受けたとき、自衛隊が一緒に敵部隊を撃退することだ。

 小規模な軍隊しか持たない国が、軍事大国に攻撃されればひとたまりもない。だから、小規模な国にしてみれば、軍事大国に侵略されないように、隣国や仲の良い国とお互いに助け合えるようにしたい。国際社会では集団的自衛権が行使できるのは当たり前と考えられている。

 Q 戦争を未然に防ぐには外交努力が先では

 A 日本は先の大戦から70年間、一度も戦争をしていない。今後もあってはならない。そのためには他国からの攻撃を外交努力で未然に防ぐことが重要だ。しかし、万一への「備え」は必要だ。自分の国を守れない国だとみられれば、軍事力によって現状を変更したい国の不法行為を誘発しやすくなる。しっかりした軍事面の備えがないと、外交でも相手に足元を見られかねない。

 日本が平和でいられたのは「憲法9条があったからだ」と主張する人がいるが、それは現実的な見方ではない。日米同盟という存在が、日本を他国の侵略から守る強力な「抑止力」であり続けたからだ。

 Q 日本を攻撃しようとしている国があるのか

 A 日本の周辺では見逃してはならない危険な動きがたくさんある。

 隣国の中国は、軍事費を過去10年間で3.6倍に増やして軍事大国になっている。その膨大な予算で性能の高い戦闘機や軍艦をたくさん造っている。日本の領空に戦闘機が接近したり、中国の船が尖閣諸島(沖縄県石垣市)付近への領海に入ってきたり、危険な行動を続けている。

 領有権をめぐって周辺国と対立している南シナ海では、岩礁を埋め立てて“軍事拠点化”しようとしている。

 北朝鮮は、日本の領土の大半を射程に入れる数百発の弾道ミサイルを持っている。核実験も繰り返していて、このままでは日本を核ミサイルで攻撃できる能力を持つのは時間の問題だ。

 Q 一部の野党やマスコミは「戦争法案」と批判しているが

 A 全くの間違いだ。安保関連法案のポイントは、いかに戦争を未然に防ぐかだ。

 集団的自衛権の行使によって、米軍と自衛隊が互いに守り合う関係になれば信頼関係はより深まる。「日本に手を出せば世界最強の米軍が黙っていない」と思わせることで、戦争を仕掛けられる危険が減る。まさに、日本の平和と国民の安全を守るための法律だ。

 Q 「米国の戦争に巻き込まれる」という指摘もある

 A その指摘も違っている。日本が集団的自衛権を行使するには、かなり厳しい条件がつけられている。安保関連法案で「日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求権が根底から覆される」場合と規定されているように、日本が直接攻撃を受けることと同程度の事態にならないと、集団的自衛権は行使できないようになっている。

 これは世界でも類を見ないほど厳しい条件だ。だから、米国がどこかで戦争を起こしても、日本の安全と関係なければ自衛隊が行くことはできない。

 Q 例を挙げると

 A 米国本土が攻撃されても、自衛隊が米国本土まで戦いに行くことはない。それは「他国防衛」に当たるからだ。だが、日本に飛んでくるかもしれない北朝鮮のミサイルを迎撃するため警戒している米艦艇が攻撃された場合は、自衛隊は米艦艇を守ることができる。

 日本の安全が脅かされている事態であり、米艦艇が沈没されれば、日本がミサイル攻撃を受けるかもしれないからだ。こうした「自国防衛」に限って、集団的自衛権の行使は認められている。

 そもそも自衛隊が持っている武器は、日本が攻撃を受けたときを想定しているものだ。他国まで行って空から地上を爆撃したり、大規模な地上戦を行ったりするような能力は持っていない。

 Q 徴兵制につながると心配している母親たちがいる

 A 安保関連法案は徴兵制とは無関係だ。政府は徴兵制を禁じる憲法解釈を堅持している。安倍晋三首相は何度も「導入はない」と明確に否定している。

 自衛隊にとっても、徴兵制を導入するのは意味がない。最近ではハイテク兵器が主役だ。たくさんの教育訓練が必要で、徴兵したところで育成できない。専門性の低い大量の自衛隊員を維持する必要性も低い。

 だから、米国や英国など主要7カ国(G7)はいずれも徴兵制ではなく自分の考えで軍隊に入隊する志願制を採用している。徴兵制は国際的な潮流からも逆行している。

 Q 安保関連法案は憲法違反なのか

 A 確かに、憲法学者でも安保関連法案を「憲法違反」だと解釈する人は多い。しかし、憲法解釈の変更は、これまでも行われてきた。戦後間もないころは、当時の吉田茂首相は「憲法9条は自衛のための戦争も否定している」という見解を国会で示していた。要は、日本が敵国に攻められても自衛すらできないという意味だ。

 しかし、昭和29年に自衛隊が創設され、政府は「自衛のために必要な実力組織を持つことは憲法に違反しない」と解釈を変えている。ちなみに、今回の安全保障関連法案を違憲だという憲法学者の中には、今でも自衛隊を憲法違反だと主張している人が少なくない。

 Q 野党は自衛隊のリスクは高まるといっている

 A 今回の法制では自衛隊に新たな任務が加わるため、その分のリスクは増えると指摘することもできる。ただ、今でも自衛隊にはリスクの高い任務がある。自衛隊はリスクを最小化し、任務を完遂するために日々厳しい訓練を行っている。この点は法整備後も変わらない。

 そもそも自衛官は「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえる」と宣誓して入隊している。リスクは覚悟の上だ。忘れてはいけないのは、自衛官がリスクを背負うことと引き換えに、日本の平和や安全に及ぶリスクが格段に下がるということだ。

 Q 安保関連法案に反対する野党が多いが、安倍首相が望むから法整備するのか

 A 安倍首相が安全保障政策に意欲的なのは確かだ。でも、集団的自衛権の行使容認をめぐる議論は以前からされてきた。安倍首相は平成18年に発足した第1次政権でも、この問題に取り組んできた。

 確かに民主党などは安保関連法案に反対の立場だ。岡田克也代表は6月の党首討論で「集団的自衛権はいらない」と断言したが、岡田氏や野田佳彦元首相はかつて「集団的自衛権の行使を容認すべきだ」と主張していた。

 前原誠司元外相に至っては、6月の衆院平和安全法制特別委員会で質問に立ち、集団的自衛権の行使について「一部認める立場だ」と明言している。

 Q 米国の核兵器も自衛隊が輸送するのか

 A 自衛隊の後方支援として他国軍の弾薬や物資を輸送できるようになるが、核兵器を輸送することはない。日本は国是として非核三原則を掲げている。安倍首相も「政策的にあり得ない」と述べている。そもそも、米国が核兵器の運搬を他国に委ねることは考えにくい。「机上の空論」だ。

 民主党などは安保関連法案の整備により自衛隊が核輸送する可能性を指摘するが、現行法制で核運搬を禁じる条文はない。民主党政権下でも法律上は核運搬が可能だったことになるが、それを禁止する措置を取らなかった。民主党の指摘は批判のための批判としか思えない。