米重克洋(JX通信社 代表取締役)


女性アナのリベンジポルノを掲載、大々的に宣伝し課金にまで誘導


 写真週刊誌「フライデー」が、今週発売の9月18日号で女性アナのリベンジポルノと思しき写真を雑誌と公式サイトに掲載した。記事では、実名こそ記載していないが、大学時代からの経歴や現在の出演番組の種類なども記載しており、内容から限りなく本人特定が容易な書きぶりだ。

 現時点ではこの写真の出所は明らかではないが、プライベートな場で撮影されたものであることは明らかであり、これは刑事罰の対象である「リベンジポルノ」に該当する可能性が極めて高い。

 更に、フライデーは、このリベンジポルノ写真を雑誌本体の他、Webサイトにも掲載し、有料会員獲得の誘導剤にもしている。冒頭に掲載したスクリーンショットのように、異常なほど大きい「写真を見る」ボタンをクリックすると月額500円の有料会員登録を促されるという仕掛けだ。

(【6日9時40分追記】フライデーの公式Webサイトから当該記事ページが削除されているようだ。フライデー編集部から特段発表は無いが、この記事だけサイト内リンクも含め消えている。)


殺人事件に発展、刑事罰も設けられた「リベンジポルノ」


 リベンジポルノは、2014年に制定された「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」(通称:リベンジポルノ防止法)に基づき禁止され、また刑事罰も規定されている明白な犯罪行為である。

 元々は、2013年に発生した東京・三鷹市でのストーカー殺人事件を契機に制定された法律であり、リベンジポルノの社会問題化に立法府が対処したものだ。この三鷹市のストーカー殺人事件では、残忍な殺害方法のみならず、犯人がネット上に公開したリベンジポルノ写真が長期間にわたって流布され、掲示板やまとめサイトなどで拡散したことで被害者への中傷や遺族への精神的苦痛が生じたことが社会問題となった。

 この通称「リベンジポルノ防止法」では、以下のような行為を違法行為と規定している。


1 性交又は性交類似行為に係る人の姿態

(例)異性間・同性間の性交行為、手淫・口淫行為など

2 他人が人の性器等を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

(例)性器、肛門又は乳首を触る行為など

3 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されるものであり、かつ性欲を興奮させ又は刺激するもの

(例)全裸又は半裸の状態で扇情的なポーズをとらせているものなど

出典:警察庁公式Webサイト「リベンジポルノ等の被害を防止するために


 上記の規定に照らせば、今回フライデーが掲載、宣伝した写真は上記の1,2,3の全てに該当するものであり、違法性は明らかだ。

では、仮に違法性が認められ摘発された場合にはどのような刑事罰が規定されているのだろうか。同法では、以下のように定めている。


公表罪

第三者が撮影対象者を特定できる方法で、私事性的画像記録(物)を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者

⇒ 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

公表目的提供罪

公表させる目的で、私事性的画像記録(物)を提供した者

⇒ 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金

出典:警察庁公式Webサイト「リベンジポルノ等の被害を防止するために


 この規定に照らせば、今回フライデーに写真を渡した提供者は「公表目的提供罪」、そしてそれを不特定多数の読者に配信したフライデー編集部は「公表罪」に該当する可能性が高いと判断されよう。
 これらはいずれも懲役刑のある重い刑事罰であるうえ、実際に過去に逮捕され有罪となり、刑事罰に服する事例も出ているものだ。

 表題では「人権感覚」の問題と指摘したが、それ以前にフライデー編集部がこうした犯罪行為を「犯罪行為」と認識できているか否かがまず問題であり、その根底にある人権感覚も合わせて糾されるべきものだと指摘しなければならない。

 今回のように、被害者が著名人とされ、且つ当人がその被害への関与を否定したい場合は、恐らく刑事告訴の手続きを踏むことすらも難しいだろう。したがって、本件では警察当局が主体的に動き、摘発すべき重大な事例だとさえ考えられる。こうした事件に対して当局が何ら手を打たなければ、著名人を対象としたリベンジポルノは週刊誌に持ち込めばその目的を達せられるという悪しき事例になり、結果として三鷹ストーカー殺人事件のような人命に関わる最悪の事態すらも想定される。告訴を待たず当局が行動することを期待したい。

 そして、当然そうなる前にフライデー編集部は記事の削除、雑誌の回収などの措置をとって被害の拡大を防ぐべきであり、写真を転載した掲示板やまとめサイトも即時に同様の措置をとるべきだ。(Yahoo!ニュース個人 9月5日の記事を転載)