強い信念を持つアマチュア活動家


 芸能人や著名人が太地町のチームに迎え入れられ中継に出演したり、帰国後にメディアに出演するなど、コーヴ・ガーディアンズの広告塔として活動をしている。

 日本でも人気の「ビバリーヒルズ高校白書」に出演した経歴を持つ米女優、シャナン・ドハーティー、米国の人気テレビシリーズ「ザ・シンプソンズ」の共同ブロデューサーであるサム・サイモン、米テレビタレントのシモーネ・レイエスらがシー・シェパードの活動に賛同し、太地町を訪れている。

 サム・サイモン(2015年3月没)はSSの大口支援者であり、ワトソン容疑者はその献身的な行為に経緯を示し、彼の名をSS船の名称にしている。

 一方、彼らの大多数は普段はシー・シェパードの各国の支部で週末にチャリティやボランティア活動に参加している一般人の「アマチュア活動家」であり、それぞれの滞在期間は数日から2週間程度と比較的短い。

 こういった短期滞在の活動家が入れ替わり立ち代わりやって来て、毎年6ヶ月もの間、太地町に「監視」の名目で滞在する。時には同時に20名の大人数が太地漁港やイルカ漁が行われる畠尻湾で威圧的に振る舞う。

 これら一般人の活動家はそれぞれの祖国に帰った後もそれぞれの支部が催す反イルカ漁デモに加わるなどしている。

 「アマチュア活動家」でも太地町には比較的長期滞在する活動家もいる。彼らの職業を見ると、中小企業の経営者やフリーランス系の仕事など長期休暇が取り易い職種についている。女性活動家には、主婦も多いのも特徴だ。

 こういった経営者の業種を見ると、SMS送信サービス企業、動物病院、整体クリニック、ヨガスタジオ、ダイビング業、自然食品メーカー、工務店、車アクセサリーメーカー、アパレル系通販、ステージライティング業、情報技術リサーチ企業など分野は様々である。

 しかし、どのアマチュア活動家も、シー・シェパードの活動を正義として捉え、太地町を訪れることに強い信念を持っているようであり、日本への渡航費用も自費である。中には、会社ぐるみで活動家のサポート体制をとっているようなケースもある。

 また、シー・シェパードの活動に触発されて、祖国で務めていた仕事をやめて、プロとしての職業活動家の道に入るケースもみられる。

 例えば昨年度のコーヴ・ガーディアンズのリーダーとして、3カ月近く滞在したノルウェー人女性活動家のカレン・ハーゲンは元々、幼稚園教師だったのだが、SSの幹部として認められたが故に、日本政府からにらまれ、入国が不可能になってしまった。

連日のサイバーハラスメント


 過去5年のキャンペーン形態の変化といえば、最も大きいのがテクノロジーの進歩による発信媒体の変遷である。

 彼らは連日のように、早朝から太地町を訪れ、この日、追い込み漁が行われるかどうかを現場から報告し、漁が行われれば人間を大量虐殺するホロコーストかのように実況する。

 初期のころはブログでの太地レポートという日誌的な情報発信だったのが、2012年度からはフェイスブックやツイッターなどを活用して、リアルタイムで漁の微に入り細に入りを報告していく傾向が顕著になった。

漁の中止を求める横断幕を掲げる外国人の活動家たち=2015年9月1日朝、和歌山県太地町
 イルカ漁が行われれば、ネット上で活動家が湾にカメラを向けて生中継を行う。そうして、「たった今イルカが湾に追い込まれている」「たった今殺されている」とナレーションを入れ、臨場感たっぷりに目の前で行われることを伝えるのである。活動家たちは、視聴者の感情に訴え、SSへの支持を広げているのだ。

 現在のように警察や海保の特別チームが配備されていなかった初期のころ、活動家たちは、漁協関係者にカメラを近付けて集団で取り囲んだり、町民のトラックの前に座り込んで進路妨害するなどの実力行使の嫌がらせも行っていた。

 英国人のサウンドエンジニアで、マーティン・スチュワートという活動家がいた。現地の全てを敵視し、現地では漁師以外の一般住民まで嫌がらせのターゲットにするなど好き放題を働いた。その横暴ぶりはSS幹部のスコット・ウェストに「腐ったリンゴ」とも言われるほどだった。

 さらには日本に入り、諜報活動のようなことをしていたフランス人のトマ・ゲナール、津波被害の後に被災地で記念撮影するなど場違いな行動をとったカナダ人のタラ・ミレン。その後、治安当局の監視が厳しくなり、彼らのような破天荒な活動家は入国できなくなった。

 そうした一方で、活動家が運び込む撮影・中継機器が年々高性能になっていることも特徴だ。

 昨年度からはライブストリーム用に60倍以上のズーム撮影のできる最新のHDカメラが導入された。そうして、中継中に扇情的な煽りや罵詈雑言を撒き散らし、漁協や水族館関係者を勝手に撮影しネットにばらまくというサイバーハラスメントが中心的手法となってきている。

 今後のコーヴ・ガーディアンズの展望を予想すると、SS幹部が相次いで入国拒否になっていることから、どうなるかわからない不透明な情勢になっている。昨年度以降は、長期滞在出来るという理由だけで、「アマチュア活動家」がリーダーとなるなどSS中枢の幹部がいない中での反イルカ漁キャンペーンが今年も行われている。

 活動を継続させるためには寄付金と活動家集めが不可欠であり、リピーターの入国が難しくなって来た今、シー・シェパードがどのようにして新人活動家のリクルートを行うかが大きな課題となっているはずである。

かわの・くにお ライター。和歌山県太地町のシー・シェパードの活動に詳しい 膨大なデータをもとに分析・編集するレポートは治安当局担当者、霞ヶ関の官僚らにも読まれ、SS対策を練る貴重な資料となっている。