大西宏(ビジネスラボ代表取締役)

 違法撮影と捏造まみれの疑いが濃厚な反捕鯨映画「ザ・コーブ」が世界に広げた誤解や波紋は大きかったと思いますが、そんな反捕鯨団体の活動実態を撮った日本の女性監督の自費制作ドキュメンタリー映画「ビハインド・ザ・コーヴ」が、モントリオール世界映画祭で4日に最初の上映が行われたようです。

 産経らしい煽りの記事タイトルですが、記事を読むと数十人程度の観客しか集まらず、残念なスタートだったようです。しかし、9日にも上映されるので、ビジネスになりさえすれば、手段を選ばずで、違法な活動を行う反捕鯨団体の実態、また捕鯨文化への理解が広がるいいきっかけになればと願うばかりです。

 今年も、追い込みイルカ漁の解禁にあわせて、反捕鯨団体が太地町に集まったものの、「ザ・コーヴ」に主演出演し、リーダーだった肝心のリック・オリバー氏が飲酒しながら自ら運転し、さらに警察官の職務質問で、免許証とパスポート不所持が判明。しかも提出を拒んだために身柄拘束され、翌日にはレンタカーで事故を起こすとおまけつきの醜態で、盛り上がらず、大騒動にはいたらなかったようです。


 地元の方のお話を伺ったことがありますが、「ザ・コーヴ」の撮影そのものも強引で不法なものだったようで、しかも撮影された時期も場所も異なる映像素材を組み替えて編集したり、CGを駆使して虚像を作り出したりした作品だという疑いもあるそうです。

9月7日、カナダ東部モントリオールの世界映画祭で「Behind“THE COVE”」(ビハインド・ザ・コーヴ)の上映後、質問に答える八木景子監督(共同)
9月7日、カナダ東部モントリオールの世界映画祭で
「Behind“THE COVE”」(ビハインド・ザ・コーヴ)の
上映後、質問に答える八木景子監督(共同)
 いずえにしても違法行為を続ける反捕鯨活動に対しては厳しい姿勢が求められます。デンマークでは捕鯨の妨害活動を行った12名が逮捕されたようです。


 この問題に対して、テレビで、元官僚の古賀茂明さんが、反捕鯨運動の起こった歴史や背景、またその実態を棚上げにして、まるで他人ごとのように、太地でも捕鯨にはいろいろな意見があるだろうから、それを聴けばいいと語ったのは、いつまでたっても発想の根っこに頭でしか考えない中央官僚体質から抜け出せないのだなあと思ってしまいました。古賀さんが捕鯨に反対でもいいのですが、日本の捕鯨文化や地域産業を否定するのならそれなりの根拠を示す必要があります。

 太地の人たちの意見を聴くよりは、海外の誤解を解いていくのか、反捕鯨の本質は動物愛護ではなく政治利用やビジネスだということを指摘できないようでは、コメンテータとしての資質を疑われてもしかたありません。

 「ザ・コーヴ」のように、血の海というセンセーションナルなシーンを使う手法は安物の洗脳映画そのものですが、いったん洗脳されると洗脳を解くことは容易ではありません。

 反捕鯨だけでなく、反日でナショナリズムを煽って中国や韓国が国内の不安や不満を逸そうとし、ロシアもそれに乗って北方領土問題や、シベリア抑留という不法行為を覆い隠そうとしていますが、こちらも理性的な反論だけでは通じず、「見て」「感じてもらい」「共感してもらう」努力が必要なのでしょう。

 いずれにしても、「ビハインド・ザ・コーヴ」はぜひ見たいものです。ネットで寄付すれば見ることができるようになればと切に望みます。

※この記事は「大西宏のマーケティング・エッセンス」より転載しました。