佐々木正明(産経新聞社外信部記者)

 海外への情報発信強化を図るために開設された首相官邸のフェイスブック(FB)英語版ページ。安倍政権発足後の2013年1月に現在の形態になって海外に読者数を伸ばしているが、開設当初から異変が続いている。意見を書き記すコメント欄では、「荒らし行為」が横行。広報された情報とはまったく関係のない不適切なメッセージや支離滅裂な語句が書き込まれ、事実上、放置されたままとなっている。その中核となっているのが、日本のイルカ漁や捕鯨を批判する、病的とも思えるユーザーたち。過激団体シー・シェパード(SS)のメンバーやその熱烈な支持者たちが、「首相官邸」を炎上に導いている。
荒らし行為が目立つ首相官邸のフェイスブック英語版ページ
https://www.facebook.com/Japan.PMO?fref=ts
荒らし行為が目立つ首相官邸のフェイスブック英語版ページ https://www.facebook.com/Japan.PMO?fref=ts

パリテロ事件への哀悼の意に
大量のイルカ漁、捕鯨批判コメント


 世界を震撼させたフランス紙「シャルリー・エブド」本社銃撃事件。1月9日、首相官邸は、フェイスブック上で「言論の自由、報道の自由を妨げる暴力行為はいかなる場合でも容認できない」とする安倍総理の公式声明を発表し、遺族に対して哀悼の意を示した。

 しかし、コメント欄では最初から、このテロ事件とはまったく関係のない日本への「攻撃メッセージ」で占められた。

 2番目に投じた「Heal Yourself Mind body and spirit」という名のユーザーの英語メッセージには、「Charlie Hebdo」(シャルリー・エブド)の文字も、ましてや、Franceもterroristの文字も出てこない。のっけから「日本では年間2万頭のクジラやイルカの大量殺りくが行われている」と日本批判で始まる。
テロ事件とは関係のない、捕鯨やイルカ漁に対する長文のコメント
テロ事件とは関係のない、捕鯨やイルカ漁に対する長文のコメント

 長文の文章には、和歌山県太地町で行われているイルカ漁に対する非難が滔々と記されている。写真やFBサイトの内容からすると、欧米諸国出身の女性とみられるこのユーザーは「2003年のシー・シェパードが暴露するまで日本のイルカ漁は世界的に知られていなかった」とも述べ、SSの熱烈な支持者であることがわかる。

 いまも、和歌山県太地町には、SSの活動家が来日し、漁師らへの悪質な嫌がらせが続いている。年々増加傾向にあり、和歌山県警の調べによると、昨年度は100人を突破したという。「イルカに対する残酷で破滅的な殺りくを止めさせるために、われわれは、日本に圧力を与え続けなくてはならない」。SSの宣伝文句のような彼女のメッセージには、太地町の反イルカキャンペーンに加わるためのSSの連絡先まで明記されている。

育児支援の話題にも、「恥を知れ、シンゾウ。イルカ殺しは子供殺しと一緒だ」


 「イルカ教の信者」とも揶揄されるユーザーの攻撃メッセージはさらに続く。

 ロンドン在住のPeter Baldwinというユーザーは、フランスの言論テロにひっかけて「じゃあ、あなたがたはクジラやイルカに対してのテロはまったく気にしないのか」という。論理の展開が破綻している。

 サンパウロ在住のTatiana Lambauerは「どんなにイルカに対しての暴力が行われていることか。恥を知れ!」と容赦ない。女性ユーザーからのメッセージが多いのも特徴だ。

 日本国民のためにと、わざわざ自動翻訳で日本語に訳したものの、ほとんど意味が通じない文章を載せる者。ネット上にあふれるイルカ漁、捕鯨批判の動画のURLを添付する者、さらにはスペイン語、フランス語で書き込む者もいる。全体の4割ほどが、クジラ・イルカ関連の投稿である。

 翌日、2組の若いお母さんと赤ちゃんの親子と安倍総理が交流するほほえましい写真とともに、育児支援に対する安倍総理の声明が記されたエントリでも、状況は同じだった。
またもや関係のないコメントが…
またもや関係のないコメントが…
 やはり、Peter Baldwinがイルカ漁ネタで口火を切る。執拗なメッセージはもはや病的にさえ映る。低俗な文面やスパムも露見され、メッセージは「日本をボイコットせよ」「恥を知れ、シンゾウ。イルカ殺しは子供殺しと一緒だ」とどんどんエスカレートしていく。

 シー・シェパードがネット上で更新している、反イルカ漁キャンペーンの活動報告も転載され、もはや、日本の育児支援対策などはまったく関係ない。コメント欄だけを抽出すれば、まさか首相官邸の公式FBサイトに添えられているメッセージとは、誰も想像できないだろう。

 攻撃ユーザーらの個人サイトを詳しく見てみると、ネット上でカオス状態を繰り出す主になっている「ネチズン」が実行者であることが浮かび上がってくる。イルカ教の信者はネット内で生息していると言ってもいいかもしれない。

日本人ユーザー「何とか出来ませんか」と訴えるも、改善みられず

 何人かの日本人がこうしたメッセージに立ち向かっている。

 ある男性は、フランス言論テロのエントリで、「弔意のコメントなのに、クジラがどーのこーのの場違いなレスポンス。そういう事が平気で出来るような輩が捕鯨反対している訳ですな」と嘆く。

 中傷だらけのひどい状況に心を痛める、ある女性は「このページの係員さん、何とか出来ませんか?このページのコメントはスパムだらけです!…ブロックしてください」と訴える。

 他の日本人女性は流ちょうな英語で、反イルカ漁・捕鯨ユーザーらに果敢に反論しているが、状況はまったく改善されていないのである。

 シー・シェパードと首相官邸FB荒らしの関連性でいえば、FBにコメントした英国人女性が実際に昨年10月ごろ、和歌山県太地町を訪れ、漁師に対する嫌がらせ行為に直接参加していることが確認されている。攻撃ユーザーの行動は、実際のSSの活動と連動していることは注目に値する。

 読者が増えているとはいえ、英語版の首相官邸FBサイトの「いいね!」読者ユーザーは5万人弱にすぎない。対して、シー・シェパード創設者、ポール・ワトソン容疑者の個人FBサイトは50万人、和歌山県太地町のSSキャンペーンのFBサイトは25万人以上を数え、日本の捕鯨、イルカ漁はネット上では圧倒的な多数から批判を受けている状況にあるのだ。

 放置しているのも炎上状態を和らげる1つの手かもしれない。しかし、日本人ユーザーが指摘したように、すでに、日本の顔とも言えるFBサイトの管理に何らかの対策を加える時期にきているのではないだろうか?

 シー・シェパードは日本の捕鯨やイルカ漁をダシにして、どんどん勢力を拡大している。そうした実態が、首相官邸サイトの状況に如実に表れている。