ノーベル平和賞に近い男 リビアのカダフィ大佐との交渉秘話

『NEWSポストセブン』 週刊ポスト 2014年10月10日号

読了まで3分

 「最もノーベル平和賞に近い男」と呼ばれるカナダ人をご存じだろうか。

 日本での知名度は高くないが、世界がその動向に注目するダンディな紳士の名は、ヤンク・バリー氏(66)。弁舌さわやかな彼の口からは奇想天外な逸話が次々と飛び出す。この男、いったい何者なのか──。
 現在、ヤンク氏は内戦状態のシリアからトルコを通ってブルガリアに逃れる難民のサポートを行なっている。彼らが難民申請するための費用やEU内第三国への移動費だけでなく、首都ソフィアにあるホテル2棟を難民の宿泊施設として買い取った。

 「ブルガリア政府がシリア難民を受け入れられるのは、私が衣食住すべての資金を提供しているからさ。

 なぜそこまでするかって? 私はユダヤ系カナダ人だが、ナチスドイツ時代、ブルガリア政府は迫害を受けた15万人のユダヤ人を救ってくれたんだ。その中には私の親戚が2人いた。だから、恩返しの意味もあるんだよ」(ヤンク氏)

 ヤンク氏がブルガリアの難民キャンプを訪れると、多くの子供たちが「お父さんが来た!」と駆け寄ってくるという。その姿は、第2次大戦中にナチスの強制収容所からユダヤ人を救出したドイツ人、オスカー・シンドラーを彷彿とさせる。

 「欧米メディアでは『ユダヤ人のシンドラー』と呼ばれるね。嬉しいことに、私が助けたシリア難民の数(1218人)はシンドラーが助けたユダヤ人の数(1200人)を超えた。ブルガリアの有力政治家から、『国連と赤十字とユニセフを足してもあなたには到底かなわない』と言われたよ。

 私は常々、世界的な慈善団体がいくつもありながら、なぜ貧しい人たちや難民を助けられないでいるのか疑問に思っている。彼らに寄付されたお金がすべて貧しい人たちに渡っているわけではない。だったら自分でやるしかないわけで、私は資金が尽きるまでシリア難民を支援し続けるつもりだ」(ヤンク氏)

 彼を世界的な慈善事業家として有名にしたエピソードが「ベンガジ6」の救出だ。2006年、リビアのベンガジで出稼ぎ中のブルガリア人看護師とパレスチナ人医師計6名が、「子供たちを意図的にエイズ感染させた」との疑いをかけられ、リビア政府から死刑判決を受けた。

「当時、私はアリの力を借りてリビアに乗り込み、カダフィ大佐と交渉した。カダフィは『リーダー』と呼ばれるのが好きな男だった。

 私はアリのサイン入りボクシンググローブを彼にプレゼントした。それがとても気に入られて交渉の大きな武器になったんだ。今だから本当のことを言うけど、アリのサインを真似て僕自身が書いたものだったんだけどね(笑い)」(ヤンク氏)

 ヤンク氏の交渉は実を結び、2007年7月、6人の身柄はブルガリア政府に引き渡されたのだった。

関連記事
■ ブルガリア人 VIAGRAと同様の効果あるVAITAGRA開発
■ モサドの強みは世界を敵に回してでも生き残る国是と佐藤優氏
■ ヨーグルトを食べるとがん予防に役立つとブルガリア人研究者
■ アルジェリア事件 人質犠牲でも英仏支持の理由を大前氏解説
■ 時計の選択は“大人のたしなみ”の成熟度を物語る

この記事の関連テーマ

タグ

「憲法9条にノーベル平和賞」の胡散臭さ

このテーマを見る