高須克弥(医師、高須クリニック院長)

 報道ステーションが安保法制のニュースを取り上げ始めたころから違和感があったんです。もともと僕は安保法制に大賛成で、アメリカという強い兄貴が付いてくれれば、これから日本も北朝鮮や中国になめられることもない。それに日本は長い間占領されていた時代があったので、植民地的な気質が残っていると感じていたんだけど、法案成立で日米同盟が対等なものになれば、日本人としての誇りも高くなるからいいことばかりだし、安保法制に反対する人たちなんているとは思ってなかったんです。

 でも朝日新聞もそうですけど、テレ朝の安保法制の報道の仕方は我々を戦争に導く悪い法案で、日本人の大半が法案に反対だとか、徴兵制を安保法制成立で進めようとしているなどと誤解に基づくデマのような意見を初めから取り上げたり、SEALDsの皆さんが正しいと一貫して報じていた。僕たちは法案賛成の運動を続けていたんですが、賛成派の存在を報道しないばかりか、街頭のインタビューでも反対意見ばかりを流すので不快でしたね。

高須クリニックの高須克弥院長
 番組の中で誰かが少数意見を大事にしろと言っていた記憶がありますが、国会の中で少数の野党の話をよく聞けと言われて衆参両院で200時間も審議時間を費やしておきながら、1億人の国民の中で3万人程度の一般大衆がデモをやっただけで「これが国民の総意だ」と主張することに納得いかないですね。僕は賛成デモに行きましょうと言っただけで、動員したわけでもないのに参加者が500人ぐらい集まりましたし、デモをニコニコ動画で生中継したら1万5千人のユーザーが参加して、一斉にコメントしてくれましたよ。ニコ動の中継に集まってくれた人たちはサイレントマジョリティーだけど、全員動員できたらいい勝負になっていたはずでしょう。意見はあっても沈黙を守っている人はすごくたくさんいるはずなのに、報ステが反対デモについて「見たこともない大きい規模です、法案を通していいのでしょうか」と報じているのを見て、気分が悪くなりましたよ。

 スポンサーを降板すると決めたときも、ちょうど9月末の番組改編時期に重なって契約が切れるタイミングで、そのままにしておくと自動更新されてしまうし、途中降板するのも失礼な話だと思っていたので「よしっ、これで降りる」と決めた瞬間にツイートして、すぐに広告代理店に連絡しました。本当に降りちゃいましたから話題になったんですけど、「次期からは付き合わない」と宣言しただけなので、ほんの1秒のつぶやきであんなに大騒ぎになるとは思っていなかったですよ。前から僕は安保法制に賛成で、日本国民がみんな法案に反対だというSEALDsの皆さんのような主張に異議を唱え続けていたので筋は通っていると思いますよ。

 ツイッターでは以前から「なんで古舘の応援なんかするのか」「なぜ報ステのスポンサーを続けるんだ」といったお怒りのツイートもいっぱいいただきましたが、スポンサーは番組の内容に文句を言うことはしてはいけないし、スポンサーをやっていることの何が悪いと彼らの意見を突っぱねていたのですが、今回は僕が安保賛成デモに先頭に立って旗を振っている最中、我々のような存在を無視した報じ方をしていた。だから僕はテレ朝に番組内容について直接文句を言って圧力をかけたわけではなくてスポンサーとして報ステは気に入らない。失望したから降りるよ、と伝えただけなんです。

 古舘君は30年来の付き合いの友達で、いろいろな意見を広く取り入れるのが上手いインタビューの名人だと思っています。僕は古舘君がテレ朝の中で孤立しつつあるという話を聞いていましたので、彼への応援の意味で自分から手を挙げるかたちで1年間スポンサーを続けました。しかし、安保法制の報道が一番盛り上がっているときにも報ステの報道姿勢は変わらなかったので僕はもういい加減にしてくれと思いましたね。だけど古舘君個人については何か言いたかったわけではありません。

 でも古舘君は心にもない報道を押し付けられたわけではなく、現場にいるうちに安保法制に対して信念を持って反対を唱えるようになった可能性はあるかもしれません。でも僕は彼の意見に水を差そうとは思いません。現に僕が付き合っている西原理恵子とは意見が違いますし、政治の話をするとケンカになるので、食事の時間には政治の話題は抜きにしようと決めて仲良くしています。ただ、スポンサーがこの番組が好きじゃないからと降りるのは当たり前で、僕がしていることはどの企業でもやっていると思います。ただ理由をはっきり伝えると反対側のお客さんを失うのが怖いので、理由を言わずに黙って降りていると思うんですよね。

 実は僕はカッとなってスポンサー降板することが以前1度ありました。以前東京MXテレビの番組で一社提供をしていて、レギュラー出演していた西原が生放送中に不規則発言をしたことで、番組降板を言い渡されたことがありまして、報復じゃないですけど来週から提供はしないとMX側に宣言したら、契約期間中だから広告料は払っていただきますし、コマーシャルは流させていただきますと言ってきたんですよ。だからお金は払うけど流すなと言ったら、コマーシャル枠を差し替える機能がありませんと言われた覚えがあります。

 僕は報ステの番組の作り方には不満はありましたが、イコールテレ朝の体質だと思ってはいません。テレ朝や朝日新聞の中にも僕と同じ安保法制に賛成の意見を持っている人はいると思うんですよ。だから報ステを降板した分の広告予算で10月から「TVタックル」の番組提供を始めています。テレ朝は以前不祥事が起きた時に自局の番組で社長の批判をいっぱい言っていたと記憶していて、わりと独立性のある会社と思っているので、報ステとは反対の意見を持った番組が出来る希望も持っています。

 とにかく1回だけの放送事故ではなく、少数意見を潰して強行採決していくという一貫した報道スタンスで安倍政権を批判していたのでいい加減にしろよと思ったわけです。でも僕が降板してから、報ステは急にみんなの意見を取り入れるようになったと感じてるので、もっと早くやれよと言いたいですね。

 でももし「番組をもっと中立的にしないとスポンサーを降りるぞ」と言ってしまうと番組への圧力となってしまい悪いことですから、ギリギリのタイミングで「番組に失望したから降ります」と告げたのは究極の紳士的な対応じゃないかと思いますね。(聞き手 iRONNA編集部・松田穣)