石平(評論家)



中国経済、失速の連鎖

 私が本誌で「中国経済はいずれ崩壊する」と主張し始めたのは、いまからおよそ五、六年前のことである。そしていま、それは目の前の現実となりつつある。

 今年八月と九月に公表された中国経済関連のさまざまな統計数字を一度に並べてみれば、この国の実体経済が一体どこまで沈没しているかがよく分かる。

 たとえば中国自動車工業協会が八月十一日に公表した数字によると、七月における全国の自動車生産台数は百五十一・八万台で、前年同期比では一一・七六%の減少となり、前月比では何と一七・九九%も減った。僅か一月で自動車の生産台数が約一八%も激減したとは、自動車産業にとってまさに地滑り的な凋落であろう。

 生産台数が激減した最大の理由は当然、販売台数の減少にある。同じ七月の中国全国の自動車販売台数は前年同期比では七・一二%減で、前月比では一六・六四%の減少となった。このような数字はまた、中国全体における個人消費の急速な冷え込みを示している。

 そして今年四月から七月まで、中国の自動車生産台数と販売台数の両方はすでに連続四カ月間、減り続けていたから、消費の激減が生産の激減をもたらすという、典型的な経済失速の連鎖がすでに始まっている。
米西部シアトルのボーイング社を訪れた中国の習近平国家主席(左)=9月23日(新華社=共同)
米西部シアトルのボーイング社を訪れた中国の習近平国家主席(左)=9月23日(新華社=共同)
 消費が減っているのは、何も自動車市場だけではない。八月二十日に米調査会社が発表した今年四~六月期の中国市場スマートフォン販売台数は前年同期比で四%減少、四半期ベースで初めて前年を下回ったという。そして国家工業と情報化部(省)が九月七日に公表した数字によると、中国全国の移動電話(携帯電話)の通話量は、今年七月までに連続七カ月間のマイナス成長となった。

 同じ九月七日の国家統計局の発表では、今年上半期における中国全国のビール消費量は前年同期比で六・一七%減で、この二十年来、初めてのマイナス成長。「世界最大」と言われる中国のビール市場の繁栄もこれで終わるのである。

あらゆる業種が大不況に

 このように、ビールの消費量からスマートフォンや自動車の販売台数まで、中国の消費市場は急速に縮まっている。そして、自動車販売台数の激減が直ちに生産台数の激減に繋がったのと同じように、消費の冷え込みは当然、製造業全体の不況をもたらしている。

 英調査会社マークイットが、八月二十一日に発表した今年八月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は四七・一。PMIというのは好不況の分かれ目の数値で、五〇以下であれば不況となる。中国のPMIはこれで六カ月連続で五〇を割り、八月の四七・一はリーマン・ショック後の二〇〇九年三月以来、約六年半ぶりの低水準、まさに大不況の到来を示す数値である。

 中国国家統計局が九月十日に発表した産業界の取引動向を示す八月の卸売物価指数も、前年同月比五・九%の下落となった。同指数の下落はすでに四十二カ月(三年六カ月)連続しており、八月の下落幅は七月の五・四%からさらに広がった。中国の産業全体は沈没している最中であることがよく分かる。

 産業が沈没すれば、それと一蓮托生の金融業も大変な苦境に立たされる。八月三十一日に中国国内メディアが伝えたところによると、不良債権の増大・業績不振などが原因で、中国工商銀行などの「中国四大銀行」を「賃下げラッシュ」が襲っているという。五〇%程度の賃下げを断行した銀行もあるから、金融業の苦しさがよく分かる。

 こうしたなかで、いままでは「中国経済の支柱」の一つとして高度成長を支えてきた不動産開発業も深刻な不況に陥っている。今年上半期、中国全国の「不動産開発用地」の供給面積が前年同期比で三八・二%も激減したことは、現在の「不動産不況」の深刻さを如実に示している。

 莫大な在庫を抱える多くの業者が不動産をそれ以上開発せず、開発用地の供給が大幅に減ったわけである。実際、二〇一四年から今年の八月まで、中国全土の不動産投資の伸び率は連続二十カ月、下落している。

 また、詳しいことは後述するが、今年六月中旬からこの原稿を書いている九月まで、上海株が連続的な大暴落を続けていることは周知のとおりである。

 以上のように、いまの中国では消費・生産・金融、あるいは不動産や株市場、経済のありとあらゆる領域で大不況の冷たい風が吹き荒れ、中国経済を支えてきた「支柱」の一つひとつが傾いたり崩れかけたりするような無惨な光景が見られている。中国経済は現在ただいま、壮大なる崩壊へ向かっている。