増田寛也(元総務大臣)
竹内薫(科学作家)
山本みずき

 日本では、過去半世紀にわたる原子力発電の利用により、使用済燃料由来の高レベル放射性廃棄物が既に相当量発生している。この処分の方法としては、地下深部に埋設して人間の生活環境から隔離して処分する、いわゆる地層処分が国際的にも最良とされており、日本もその方針であるが、これまでの処分地選定が進んでこなかった。こうした状況を受け、本年5月、国が前面に立って取り組むことなどを柱とした新たな国の方針が示された。私たちはこの問題にどう向かっていくべきなのか―元総務大臣の増田寛也氏、科学作家の竹内薫氏、若い世代を代表し大学生の山本みずきさんに話し合ってもらった。

現世代が向き合うべき課題


 ――高レベル放射性廃棄物は既に発生している以上、確実に処分する必要があります。どう取り組むべきなのでしょうか。

増田寛也氏
増田 海外をみると、すでにフィンランドとスウェーデンが地層処分する場所を決定しています。私も現地を訪れて話を聞いてきましたが、両国とも20年、30年という長い時間をかけて地元との合意にこぎつけています。日本もこうした経験にならって、しっかり取り組みを進めていくべきだと思います。いま国内には、高レベル放射性廃棄物の処分の問題が解決していないのだから原発の再稼働をやめるべきだという意見があります。しかし、処分の方法や技術は既にあり、問題は処分場所を決めることですから、決して不可能なことではありません。既に廃棄物は発生しているので、再稼働する、しないにかかわらず処分は必要ともいえます。処分の問題は原発の再稼働の問題とは切り離して考えるべきでしょう。

竹内 増田さんが指摘したように、原発の再稼働と高レベル放射性廃棄物の処分は、別個の問題として認識すべきです。何としてもそれを発生させてきた現世代で解決しなければならないということを、特にこれまでその恩恵に浴してきた世代が認識する必要があります。さもないと、若年世代、将来世代につけを回すことになります。ただし、これからも技術革新は目覚ましく進展するでしょうから、新しいテクノロジーが生み出されたら、それに柔軟に対応して処分をやり直せるような余地を残しておくことも肝要です。

 ――地層処分への理解が国民の中で進んでいないように思えます。

竹内 日本の場合、原発への関心は非常に高いのですが、地層処分については知らない人、無関心な人が多数を占めます。特に地層処分の科学的知見について知られていないように思います。知識がほとんどない中で、地層処分は漠然と怖いという受け止めがされているのかもしれません。

 ――若い世代もそうなのでしょうか。

山本 当然ながら恐怖心を抱いている人は一定数いますが、他方で、高レベル放射性廃棄物を地層処分する必要があることを認識している友人も一定程度います。なぜかといえば、原発事故を目の当たりにしたことで必然的に原発への関心が高まっているからです。ただし、私たちより年上の方々が、問題解決を私たちに委ねればよいという姿勢でいられると困ってしまいます。

冷静に受け止めたい「科学的有望地」


 ――こうした中で地層処分への理解を促すにはどうしたらよいでしょうか。

増田 安全性・確実性が高いこと、そしてそのために慎重に調査や評価を進めていくということを、丁寧に説明していくことが重要だと思います。日本は地震国で火山国のため、地中に埋めるのは危ないのではないかと受け止められがちです。しかし、地層処分場に必要とされるのは数キロ四方ですから、その程度のスケールで安定した場所を探すことは十分可能と考えられています。私は人間が恒久的に管理する方が危ないと思うし、将来世代に負担を強いることは是非とも避けたいと考えています。

竹内薫氏
竹内 地層処分については、例えば活断層の存在が人々を不安にしているのかと思いますが、断層活動は過去数十万年にわたり同じ場所で起こっていることが分かっています。このように日本が蓄積してきた科学的知見を生かし、危険な場所を避けて埋設できることを丁寧に説明していくことが重要です。ただし、100%の安全が確保されることはあり得ません。リスクも説明し、それにしっかり対応していくという姿勢を示すことが、結果的に信頼獲得につながっていくと思います。

山本 地層処分への理解を促すに当たって大切なのは、この問題が国民一人一人の問題であること、自身の問題でもあることを認識してもらうことではないでしょうか。私たち若者をはじめ、みんなの問題だということを、どう広められるかがポイントになるように感じます。また、学校教育を通じた人づくり、社会づくりが重要ではないかと思います。高レベル放射性廃棄物の処分は待ったなしの問題です。こうした局面では事実を客観的に受け入れ、理性的な判断をしていく必要があります。こうした難題はこの問題に限らず今後も私たちにふりかかってくるでしょう。先日、地層処分で先行するフィンランドを訪れましたが、基礎的な知識の土壌があるように感じました。

 ――処分に向けた取り組みがなかなか進まない現状を打破するために国が打ち出した方策の一つが、科学的により適性が高い地域、つまり「科学的有望地」の提示です。

増田 これは国が前面に出て、処分の実現に向けて責任を果たしていくという意思を明確にしたものであり、その点、適切な判断であったと評価しています。ただ、気を付けなければならないのは、国が候補地を指定するのではないということです。国が科学的有望地を示すことが地域で主体的に議論を始めるきっかけとなり、その議論を煮詰めて次のステップにつなげていく、そうとらえていただくことが重要です。大切なことは、地域で対話を積み重ね、合意形成を図っていくということなのです。この点について、地方自治体の首長の方々が拒否反応を示さずに、しっかり冷静に受け止めてもらえるかどうかがカギになると思います。

丁寧な対話が重要


 ――最後に地層処分を着実に推進する上で、重要だと思われることを教えてください。

山本みずき氏
増田 国や電気事業者、事業の実施主体が問題の解決に向けた積極的な姿勢を示し続けるとともに、国民や地域住民と対等の立場で議論し、合意形成へと議論を積み重ねていくことです。間違っても押しつけの姿勢であってはなりません。また、安全性について国民の納得感を得るには、規制当局の明確な関与が何より大事でしょう。北欧の成功からも学べる点であり、日本の規制当局にもコミットメントを求めたいところです。

竹内 科学技術の話を社会科学的な側面も加え、複合的に丁寧に説明していくことが求められます。そうした人材を育てていく必要もあります。

山本 すべての国民がこうした重要な問題への理解を深められるように、活発な議論の場をつくることが求められると思います。賛成する意見と反対する意見の双方を聞くこと、その上で冷静に比較検討し、少しずつ改善案を提示していくことが重要だと思います。

 ――本日は多くの貴重な意見をありがとうございました。

ますだ・ひろや 総合資源エネルギー調査会放射性廃棄物ワーキンググループ委員長。1951年、東京都生まれ。東京大学法学部卒、建設省入省。1995~2007年の12年間、岩手県知事を3期務め、環境政策を推進。2007~08年に総務大臣。現在は、野村総合研究所顧問、東京大学公共政策大学院客員教授を務める。

たけうち・かおる サイエンス作家。1960年、東京都生まれ。東京大学理学部卒、マギル大学大学院博士課程修了。科学評論やエッセー、書評、講演など幅広い場面で、物理、数学、脳、宇宙など難解な分野でも親しみやすく読者に伝えている。

やまもと・みずき 慶應義塾大学法学部。1995年、福岡県生まれ。高校時代からボランティア団体を設立するなど活躍、国連欧州本部で世界的な軍縮に向け英語でスピーチも行った。2013年「18歳の宣戦布告」(月刊正論2013年5月号)で論壇デビュー。