原子力発電所の運転で生じる高レベル放射性廃棄物の処分は、これまで原発による電力供給の恩恵を受けてきた、われわれにとって避けて通ることはできない問題だ。「原子力発電環境整備機構」(NUMO)は、原発の使用済燃料由来の高レベル放射性廃棄物を地下300メートル以上の深い地層(岩盤)に閉じ込めて安全に最終処分する事業を担っている。最大の課題は、最終処分場の建設場所の選定。NUMOでは、国民的な理解を得るため、さまざまな取り組みを行っている。東京都市大学で原子力を専攻する学生記者たちが、NUMOを取材した。

全国でシンポ


今月4日に開かれた「いま改めて考えよう地層処分」と題されたシンポジウム。約250人が参加し、活発な質問が出された
 10月4日、東京都内で経済産業省・資源エネルギー庁とNUMOが主催して「いま改めて考えよう地層処分」と題するシンポジウムが開催された。東京を皮切りに、全国9都市で順次行われる。今年5~6月にも実施しており、第2弾となる。

 NUMOは2000年に原発の使用済燃料由来の「高レベル放射性廃棄物」の最終処分を行うことを目的に設立された。全国の自治体からの公募で、「地層処分」を行う施設の建設場所を決めることにしているが、これまでの応募は1件で、これもその後、白紙撤回されたので、建設場所の選定は進んでいない。

 今年5月には国が前面に立って取り組むことが基本方針の改定で決定された。シンポジウムは、この方針を説明し、最終処分問題の解決に向け参加者からの意見や疑問に答えるなど真の対話を目的としている。

 東京でのシンポジウムには約250人が参加。まず専門家によるパネルディスカッションが行われた。その内容は(1)高レベル放射性廃棄物と処分方法(2)最終処分に向けた新たな取り組み(3)処分地の適性の考え方(4)段階的な処分地選定の進め方-の4項目。基本方針の改定を受け、国が前面に立ち取り組む方策として科学的有望地が提示されることとなったが、これは地域で主体的な議論を始めるきっかけになればと考えてのことであり、一方的に処分地を決めるわけではないことなど、丁寧な説明が行われた。

活発な質疑応答


 その後の質疑応答では、来場者から多くの質問が出された。その内容は、最終処分の問題についてしっかりと学び、考えていることをうかがわせるものだった。ある参加者は、原発のメリットとデメリットをしっかりと理解した上で、「地層処分が本当に最適な方法なのか」と質問。「最終処分施設の建設場所が決まっていない現状で、さらに放射性廃棄物を増やすことになる再稼働には反対だ」との意見も出された。また。東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故後の経験から、処分施設が身近な場所に出来ることへの不安を口にする参加者もいた。
地層処分を研究する地下300メートルの坑道
 これに対し、登壇者から他の処分方法とのリスク比較や地層処分の有効性の説明を行ったほか、再稼働の是非にかかわらず、既に発生している廃棄物の処分は避けて通れない問題であること、安全性を最優先に技術開発を継続して行うことが説明されるなど、活発な質疑応答が行われた。

若者が引き継ぐ


 シンポジウムの参加者は、年配の人が大半だったが、私たちとは別に5、6人ほど大学生と思われる若い人もいた。長い年月がかかる最終処分の問題は、私たちのような若い世代が引き継いでいき、関わっていくことが欠かせない。「知らないうちに処分地が決まっていた」という無関心は許されない。最近、多くの若者が安全保障関連法に関心を持ち、さまざまな活動をしている。最終処分をめぐる問題にももっと関心を持ち、議論に積極的に参加することが、これからを担う若者の責任ではないだろうか。

 シンポジウムへの参加を通じ、私たちは高レベル放射性廃棄物という「原子力のゴミ」に向き合わなければならないと改めて感じた。原発の恩恵を多かれ少なかれ受けてきた世代は、後世に負担を先送りしないために、処分地を決めなければならない。すべての国民がこの問題を理解し、処分地の決定に納得することは難しいかもしれない。それでも今回のようなシンポジウムを通じて、一人でも多くの人に地層処分について興味を持ってもらい、知ってもらうことができれば、処分施設の建設場所の選定といった課題の解決に向けた、前進につながると感じた。

入社4年目の技術者に聞く「興味を持ってもらえる情報発信が大切」


 東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所の事故後、原発をめぐるさまざまな議論が活発化するなか、避けて通ることはできない高レベル放射性廃棄物の最終処分を前に進めるにはどうすればいいのか。「原子力発電環境整備機構」(NUMO)の入社4年目の技術者、藤本秋恵さんにインタビューを行った。

安全性提示に意欲


「説得」ではなく「理解」を目指したいと話すNUMOの藤本秋恵さん
 技術部に所属する藤本さんは、「地層処分」の超長期の安全性について検討する業務に携わっているという。藤本さんは「地層処分に影響を及ぼす可能性があるさまざまな事態を想定したシナリオを設定し、安全性を評価している」と述べ、コンピューターシミュレーションによって地層処分の超長期の安全性を提示していきたいと意欲を示した。

 安全性に不安を覚える人が多いが、一般の人に説明していく上で、どんなことを心がけているのだろうか。藤本さんは、「ホームページなどでの説明は一方通行なので誤解が生じることもあるため、対話活動が重要。実際、親族や友人に地層処分についていろいろと聞かれた際、対話することでお互い理解し合うことができた」と、エピソードを紹介。「相手の意見を聞き、不安の一つ一つに答えていくことで、理解と信頼を得たい」と語った。

 NUMOでは地層処分について知ってもらうため、さまざまな取り組みを行っている。藤本さんは「まず興味を持ってもらうための情報発信が必要」、「移動展示車『ジオミライ号』のキャラバン活動も、その一つ。親子で楽しく理解できるよう、地層処分に関するアニメーション映像や簡単なクイズ、実験などの取り組みを行っている」と紹介した。

将来につながる


 「説得」するのではなく、「いろんな意見を聞いた上で、自分やNUMOが考えていることを正しく伝えたい」というのが、藤本さんの考え方だ。そのためにも、「どのような基準や条件に基づき、結論を導き出したのかを、理論的に説明するよう心がけている」という。

 「放射性廃棄物の処分方法としては地層処分が最適である」という信念を持ち、「説得ではなく対話を通じた理解を目指していきたい」と語る藤本さんに、技術者としての誇りを感じた。

 最後に藤本さんに、避けては通れない高レベル放射性廃棄物の処分をめぐる問題を前進させるため、将来を担う若者が何をすべきかを聞いた。

 「自分たちの将来にも関係する問題だという観点から地層処分に興味を持ってほしい。大学での講義やシンポジウムなど身近にある考える機会をぜひ生かしてほしい」

 藤本さんは、自分たちの問題として向き合う必要性を訴えた。


地層処分 原子力発電所で使い終えた使用済燃料からウランやプルトニウムを取り出し、原発で再利用する過程で残る放射能レベルが高い廃液を、融けたガラスとともにステンレス製の容器に注入して固めて「ガラス固化体」にし人間の生活環境から長期に渡り隔離するため、地下300メートル以上の深さの地層(岩盤)の中に処分する方法。深い地層が持つ「物質を閉じ込める」という性質を利用したこの処分方法は、国際的にも共通した考え方となっており、すでにフィンランドやスウェーデンでは処分地が決まっている。


《編集後記》


 福島第1原発事故以降、原発をめぐるさまざまな議論が高まっているが、原子力という存在自体はなお一般社会と乖離しているように感じる。原子力を学ぶ学生の立場からは、原子力をエネルギーと言う大枠で捉えれば、その隔たりも解消しやすいのではないだろうかと考えている。このため、東京都市大学の学生が主体となり、科学体験教室や対話会を開き、エネルギー問題、特に原子力や放射線についての理解を促進する活動を行っている。
NUMOの藤本さん(左)と意見を交換する学生記者
 今回の取材を行った学生記者には、小学生時代に原子力発電所にあるPR館での体験がきっかけとなり、原子力工学を学ぶ道を選んだ者がいる。

 地道なさまざまな広報活動を通じ、国民全体の科学への興味を高め、エネルギー問題に注目してもらうことが、原子力そして放射性廃棄物の最終処分問題に向き合うことにつながると感じた。

取材・記事・写真:東京都市大学共同原子力専攻修士2年・北薗孝太、工学部原子力安全工学科4年・亀子湧生、同4年・島田優、同2年・川上達士