木曽崇(カジノ研究所所長)


 前回のエントリでかなり長めに野球賭博に関連して書いたので(参照)、そろそろ違うテーマで行きましょうかね、と新しい記事を用意していたところ、なんかまたトンデモナイ報道が舞い込んできまして、これは野球賭博に関してまた書かざるを得ないじゃないですか。以下、朝日新聞より転載。

ダルビッシュ有投手の弟、野球賭博の疑いで逮捕

http://www.asahi.com/articles/ASHBW52WHHBWPTIL019.htmlhttp:

プロ野球やメジャーリーグを対象に賭博をしたとして、大阪府警は大阪府藤井寺市の自営業、ダルビッシュ翔容疑者(26)を賭博開帳図利と常習賭博の疑いで逮捕したと27日、発表した。翔容疑者は米大リーグ・レンジャーズのダルビッシュ有投手の弟。

捜査4課によると、翔容疑者は今年5月中旬に開催されたプロ野球とメジャーリーグの公式戦を対象に、1口1万円、計1850口の申し込みを受けて賭博を開くなどした疑いがある。府警は他に7人を同容疑などで逮捕した。

 まぁ、これから報道各社の取材ですぐに様々な詳細情報が出てくるのでしょうが、私の目から見たら上記報道の中だけでもいろいろ読み取れるものがあるわけでして。。

1. ダルビッシュ翔氏は野球賭博に相当深く関与していた?


 まず、ダルビッシュ翔氏は単純に賭博の仲介役を演じてたレベルの話ではなくて、胴元グループの一員に相当深く入り込んで機能していたであろうという事。

 ただ賭博の仲介していた程度なら、普通は「常習賭博」単独での摘発になります(それも立派な犯罪だが)。また、その先に賭博開帳図利を狙っているとしても、警察の摘発としては常習賭博で摘発をし、証拠を確定させてから容疑を開帳図利に移すのが一般的です。今回に関しては、逮捕容疑に常習賭博罪と合わせて、最初から賭博開帳図利罪がついており、逆に警察としては同氏が野球賭博のスキームの中に相当深く組み込まれていたという相当の確信があっての逮捕であろうという事が推測できます。
 

2. しかも相当大きい取り扱いである


 上記報道によると5月中旬に開催された日米の野球の試合に対して、一口一万円で1850口の申し込み(=1850万円)を受けていた、と。5月中旬という短期間だけで1850万円の取り扱いというのは、友人グループの間でちょっと出来心でやってしまいました、というレベルを大きく超える規模の賭博開帳。背後に何らかの組織的な野球賭博グループの存在を臭わせます。

3. 暴力団の関与がある?


 そして何より、今回の摘発を行ったのが刑事部捜査4課、いわゆる「組織犯罪対策課」であるという点。賭博事犯は、一般的に生活安全部保安課に扱われる場合と、組織犯罪対策課に扱われる場合の二つのケースがあります。前者は、売買春や賭博事犯など、いわゆる風俗事犯を専門とする組織ですが、こちらの摘発の場合は警察としては未だ背後に暴力団等の存在は見ていません。

 一方、今回のように組織犯罪対策課が主体として動いている場合は、警察自身はこれを単純な賭博事犯としてではなく、背後にある暴力団の存在を前提として捜査を行っているということ。上記のような短い報道でも、見る人が見ると「あぁ、この事件、野球賭博だけでは終わりそうにないな…」という予感をさせるものとなっています。

 この先、スポーツ賭博における定番としては「違法賭博→暴力団の関与」からの八百長疑惑へとつながってゆくのが常ですが、今回の問題は最後の一段階までも踏み越えてしまうのでしょうか。。引き続き見守ってまいりたいと思います。
 
追伸:
ちなみに、ネット上では「偉大な兄貴に泥を塗る行為」的な論調もありますが、私はあえてそういう論調は取りません。おそらく、そういう「偉大な兄貴が…」的な論が、人間を歪ませてゆく原因だと個人的には思うので。。

※「カジノ合法化に関する100の質問」2015年10月27日記事を転載しました。