やまもといちろう(ブロガー・投資家)


 「モノづくりの精神を失った日本の次なる成長分野は、クールジャパン産業だ」とお題目が唱えられたのは2010年。経済産業省内の製造産業局に「クール・ジャパン室」が設置されて以降、改組され人員が強化された結果、現在のクリエイティブ産業課およびメディア・コンテンツ課でクールジャパン事業が推進されております。その後、順調に予算は増額され、海外需要開拓支援機構(いわゆる「クールジャパン機構」)まで出来上がって、500億円規模の官民ファンドが組成されています。

 もはや、このクールジャパンという政策の方向性についての酷評は聞き飽きた方も多いのではないかと思いますが、政策が実現しようとする内容の劣悪さもさることながら、クリエイティブ系の産業の上っ面のところだけを撫でて日本文化を外に宣伝することが自己目的化してしまう仕組みと、それを誰も止められないところに大きな課題を抱えているように思うわけです。

クールジャパン/クリエイティブ産業
「クールジャパン」、本来は何をするべきか
「クールジャパン機構」が出資する事業、いくつ知ってる?

 ジャーナリストの本多雅一さんは、この手の政策論争においてもっとも見たくない現実のひとつである日本の「アニメの輸出ピークは90年代」を例示した上で、その輸出が伸びた理由が「安価であったこと」とはっきり解説しています。

 何のことはない、日本で盛り上がっていると思い込んでいるクリエイティブ産業は、基本的には日本人が日本人のために好きなコンテンツを作り、ぐるぐると回しているだけの状態なのですが、これを海外にも売っていき持続的で外貨を稼げる産業へ育成しようと考えたとき、現在クールジャパンで取り組んでいるものとはかなり異質な問題構造に出会います。大きなものはおおよそ3つ、ひとつは「事業目標や事業の効果測定が不明確」である点、ひとつは「クリエイティブ産業を担う人材が食えない」点、そしてもうひとつが「世界で日本の著作物の権利があまり守られない」点が挙げられます。