柿谷勲夫(軍事評論家)

 安保法制の必要性を一言でいえば、中国の軍事的脅威からわが国を守るためです。

 しかし、共産党や民主党などの野党、学者、朝日新聞などは、中国の脅威から如何にして国を守るかではなく、この法案が憲法に違反するとか、心にもなく自衛官のリスクが増大するとか、安倍晋三首相や礒崎陽輔首相補佐官の言葉尻を捉えての非難に終始、法案の本質を逸らして国民の不安を煽り、法案成立を妨害しています。

 民主党や朝日新聞などを見ますと、次に示す「孫子」(兵法)の原則が頭に浮かびます。

●其の来らざるを恃むことなくして、吾が以て之を待つことあるを恃め(敵の侵攻がないことを希うのではなく、侵攻意図を断念させるための十分な備え、つまり抑止力を保持しなければならない)。本原則は「戦わずして勝つ」の前提ですが、知る人は少ないです。
●用間(間者を用いる)に五あり、郷間(敵国のマスコミ、学者など)あり、内間(敵国の政治家、官僚など)あり、反間(敵国の大臣、軍人、外交官など)あり、死間(敵国を攪乱する自国民)あり、生間(敵国の情報を持ち帰らせる自国民)あり。

 「孫子」や中国が見れば、朝日新聞は「郷間」、民主党や共産党は「内間」であり、与党のなかにも朝日新聞などの風評に毒されて「内間」「反間」を疑わせる議員もいます。

 本論では、朝日新聞の報道を中心に安全保障関連法案に対する「間」ぶりを検証します(以下、「声」は読者投稿欄、「社」は「社説」、「天」は「天声人語」を指す)。

中国の軍事的脅威を無視


 軍事的脅威は、相手の国を侵略し得る能力、侵略しようとする意図、侵略を許す環境条件が整った時に生じます。が、朝日新聞の「社説」は中国に阿り、中国の軍事的脅威をオブラートに包み、具体的に報道しません。

(1) 能力(軍事費、兵力、兵制)
 朝日新聞は3月6日付社説で「中国国防費」について、見出しに「これで責任ある大国か」を掲げていましたが、中身を見ますと、

《8868億9800万元。日本円にすると、17兆円近い。日本の防衛予算のゆうに3倍を超える規模である。……90年代以降、中国は毎年、国防費を10%前後、時にそれ以上の伸びで増やしてきた》

 と述べていますが、急激に増大させている具体的な状況や兵制については説明しません。

 朝日新聞は繰り返し、安保法制は国民の理解を得ていないと主張していますが、朝日新聞の記述では敵を知ることはできません。朝日の読者が法案の必要性を理解できないのも納得できます。

 中国は国防費を平成元年度から、22年度を除き、毎年二ケタ増大させ、3月5日に発表した27年の国防予算は前年実績比10・1%増の8868億9800万元、日本円に換算すれば約16兆9千億円、わが国の防衛関係費、約4兆9800億円の約3・4倍です。

 公表額には、研究開発費や外国からの兵器購入費などの全てを含んでいないと指摘され、アメリカの国防総省などの発表を総合すれば、実際額は公表額の2~3倍と見られています。

 平成26年版防衛白書は、中国の「公表国防費の名目上の規模は、過去26年間で約40倍、過去10年間で約4倍となっている」と記述しています。