[WEDGE REPORT]

佐々木伸 (星槎大学客員教授)


 パリの同時多発テロの容疑者を追跡していたフランス警察特殊部隊は18日未明、市郊外のサンドニのアジトを急襲し、銃撃戦の末、容疑者2人が死亡、7人を拘束した。フランスの報道によると、容疑者らはビジネス街で新たなテロを実行する直前だった。しかしテロの首謀者とされる男らの行方は不明のままで、治安部隊による緊迫した“マンハント”が続いている。

予想を超える大掛かりな集団


18日未明の銃撃戦で待機するパリ市の救急隊員。少なくとも5人の警官が負傷している(Getty Images)
18日未明の銃撃戦で待機するパリ市の救急隊員。少なくとも5人の警官が負傷している(Getty Images)
 捜査当局は首謀者とされるベルギー国籍のアブデルハミド・アバウド容疑者(27)が電話の盗聴などからサンドニ付近に潜んでいるとの情報をつかみ、捜索を行っていた。その中で同容疑者の女のいとこが浮上、いとこを追跡してアジトにたどり着いた。このいとこの女は警察との銃撃戦の中で、自爆した。

 警察の突入作戦は午前4時半ごろから開始、銃撃音と大きな爆発音が7回も鳴り響いた。この作戦はオランド大統領やバルス首相がエリゼ宮(大統領官邸)で実況で見守る中、実施された。捜査当局の話として伝えられるところによると、犯人らはパリ西郊外のビジネス街で新たなテロを起こす直前だった。

 しかし、肝心な首謀者アバウド容疑者は拘束した7人には含まれていないと見られ、行方は依然不明だ。同容疑者はこれまで、過激派組織「イスラム国」(IS)の幹部としてシリアに滞在し、そこで計画を立案し、同時多発テロを指揮していたと見られていた。同容疑者が仮にパリにいるというのが事実ならば、捜査当局に探知されないまま、密かにフランスに入国していたという衝撃的な事態となる。

 13日のテロの実行部隊は当初死亡した7人と見られていた。うち5人の身元が判明しているが、その後この7人の他に、死亡した容疑者の兄弟の1人、ベルギー在住のアブデスラム・サラ(26)が実行部隊に加わっていた容疑で指名手配され、さらに別なもう1人も監視カメラに捉えられていたことが分かっており、実行部隊は9人以上だった。

 未明のサンドニの急襲では、9人の容疑者が潜伏していたわけで、実行部隊も含めると、テロ・グループは少なくとも18人に上り、当初考えられていたよりもはるかに大掛かりな攻撃集団だったことがあらためて明らかになった。捜査当局は行方の分からない容疑者たち、とりわけアバウド容疑者の追跡に全力を挙げている。

 パリの同時多発テロの暗雲は欧州全体を覆っている。17日にはドイツのハノーバーで、メルケル首相も観戦するドイツとオランダのサッカー試合が予定されていたが、爆発物が仕掛けられているという情報が外国情報機関からもたらされ、ゲーム開始直前に中止になった。ベルギーのブリュッセルでもベルギーとスペインのサッカー試合がやはり中止に追い込まれた。

 米国にもテロの影響は及び、ロサンゼルスとワシントンから17日離陸したエール・フランス機への爆破警告電話があったため、それぞれ米国内とカナダに緊急着陸した。パリのテロの恐怖が世界的にまん延している様相だ。