大西宏(ビジネスラボ代表取締役)

 いやはや迷走というか、民主党の細野豪志政調会長と前原誠司元代表、維新の党の江田憲司前代表が、自民党に対抗するため、両党が解党した上で新党を作るべきだとの認識で一致したというのは冗談としか思えません。

 もしそれが本当なら、期待していた細野さんもこれで終わりかと残念ですが、あまりに勝負カン悪すぎです。組む相手を間違っています。

 自民党に対抗することが目的なら、なにか神戸方面の組織の分裂騒動と変わらないといえば言い過ぎかもしれませんが、マーケティングでいえば、いいものを作れば売れると考えるプロダクトアウトの悪臭が漂い、しかも眼中にあるのはライバルの自民党だけ、ビジネスでいえば顧客、政治の場合は有権者を見ていないという最悪のパターンに感じます。

 「いい製品かどうか」は売り手ではなく買い手の判断で決まるように、「いい政策かどうか」も政治家の自己満足ではなく、有権者が評価するものです。しかも、価値観も立場も多様化している国民のなかで、どのような人びとの支持や共感を得て、またしっかりとした関係を築こうとしているのでしょうか。

 もし「大所高所から天下国家を論じる」知見や能力が政治家の実力だと考えているとすれば、とんでもない間違いです。それは、政治家としての実力ではなく、たんなる講釈師、あるいは、マスコミの政治番組での「政治タレント」としての能力でしかないのです。

 マーケティングは、顧客を創造し、維持し、拡大する戦略を描き、実践することですが、政治も支持者を創造し、維持し、拡大する戦略があり、それを実践していくことに変わりはありません。
安保関連法案をめぐり、党首討論で対決する安倍晋三首相(左)と民主党の岡田克也代表=6月17日午後、国会・参院第1委員会室
安保関連法案をめぐり、党首討論で対決する安倍晋三首相(左)と民主党の岡田克也代表=6月17日午後、国会・参院第1委員会室
 そして、いくら「ネタと芸風」で無党派層を取り込んだとしても、民意は移ろいやすく、「一発芸」の人気が落ちて気が付くと誰も支持者がおらず、また「新しいネタ」で人気取りをする繰り返しとなり、いつまでたっても根無し草の集団で終わってしまいそうです。

 民主党の左派というのでしょうか、そちらのほうが少しましなのは、「労働組合」という支持基盤を持っていることです。ただ、残念なことに「労働組合」は衰退してきており、組織率がもはや2割を切ったお寒い状態なので、民主党は新たな支持基盤をつくらなければ衰退していきます。しかし、そんな動きをつくるどころか、ますます組合依存度が高まっているのではないでしょうか。

 自民党は、トップブランドなので総合戦略でも成り立ちます。しかし下野していたときには違っていました。しっかり「戦前」にノスタルジーを感じている人びとを組織化し、またネット民を取り込む作戦を展開していました。

 おおさか維新の会は、大阪という地域に照準を絞っています。紆余曲折がありましたが、再び地方政党という立ち位置の原点回帰をしています。

 有権者は数字ではありません。「私と私たち」ひとりひとりが共感できることを主張してくれ、実現しようと努力し、しかももしかすると実現するかもしれないという希望を感じさせてくれる政治家、政党を信頼し、支持します。

 小さい集団であればあるほど、数ではなく、いかに深い共感や連帯感を得るかが勝負になってきます。これは戦いの鉄則です。

 細野さん、前原さん、そして江田さんは、いったいどのような「私と私たち」のために、新党をつくろうというのでしょう。まずはそれがないと根っこのない浮き草でしかなく、結党から光が消えかかっているのです。
(「大西宏のマーケティング・エッセンス」より2015年11月12日分を転載)