屋山太郎(政治評論家)

 シールズ(SEALDs)はネット世界で誕生した霧のような団体だ。当初、特定秘密保護法に反対するサスプル(SASPL)という学生団体だったが、秘密保護法の成立とともに影が薄れた。そこで活動のテーマを広げて安保法、安倍政権に反対するという政治的目論みを前面に打ち出してきた。政権交代によって安保法を廃止すべく「安保法に賛成した議員を落選させる」運動を始めるという。

国会前で安保法案反対を訴え、声を上げる「SEALDs」の奥田愛基さん=9月30日午後
国会前で安保法案反対を訴え、声を上げる「SEALDs」の奥田愛基さん=9月30日午後
 国会前で行われた安保法反対集会では12万人を集めたという(警察発表では3万人)。運動がここまで拡大したのはテレビ朝日の「報道ステーション」とTBSの「ニュース23」のおかげだ。この団体には全学連や全共鬪時代のような戦闘的な人物は見当たらない。主催の奥田愛基氏は淡々と喋り、まったく意気がるところがない。かつての全学連、全共闘と対比して、ディレクター連中には新しい政治スタイルとでも見えたのだろう。

 電波とネットが幻想の団体を作り出した。全学連や全共闘世代は政治をやらない青年層が出現して失望していたのだろう。寄ってたかってシールズを盛り上げた。この団体を中心に政治運動を広めようと、世の中のすべての左寄りが目を向けた。共産党もしかり、中核派もしかりである。中核派の宣伝車まで駆り出されていたのには驚いた。

 このデモの群集を背景に共産党の志位委員長は「この7割は共産党です」と胸を張った。私もこのデモのビデオをとっくり拝見したが、参加しているのは5%ほどがサラリーマン、残り95%はジイさんバアさんばかりだ。かつての共産党員が老いたのか。いずれにしろこのデモは最初がピークでその後は集会の度に3万、2万人と落ちている。しきりにネットで呼びかけても老人は応えないようだ。

 この勢力を政治的に利用するために民主党もすり寄ってきた。岡田代表は共産党が掲げる連立政権「国民連合政府」構想に乗りそうになった。これについて志位委員長は「戦争法廃止の国民連合政府を作る。大義で一致する全ての野党が国政選挙で協力する」という。岡田代表はいっとき「志位さんは信頼しているので、いい結論に至るのではないか」と言っていた。しかし、党内からは松本剛明元外相が共闘路線に反発して10月26日に離党を表明した。

 岡田氏は「国民連合政府」は党内事情からムリ。共産党が一方的に候補者を下ろして民主党を応援してくれれば「ありがたい」といった思惑ではないか、10月27日に行われた宮城県議選では共産が4から8に倍増、民主が2議席減少して5になった。勢いがあるのは共産党の方で民主党の縮み指向がはっきりした。これでは「ありがたい」話が転がってくるわけがない。

 岡田氏は「戦争法案成立」の一点なら野党共闘ができるのではないか、と信じているようだが、そういう考え方は「革命家」の発想だ。潰したあとにどういう政府を作るかを見せずに選挙ができるのか。国民は安定指向だから「現政府がまし」と判断するだろう。民・共一体となったとたんに民主から保守派が抜け出すだろう。宮城県議選のケースは改革派はすでに民主党に見切りをつけて、共産党に乗り換えたということではないか。