組織暴力犯罪の対策および暴力団対策法


 暴力団犯罪の対策として最も困難なことは、暴力団組織の内部においては、犯罪を重ねることによってその者の組織内での地位が上昇するという、犯罪促進的な秩序が出来上がっていることです。受刑による一般社会生活上の不利益・不名誉は、彼らにとってそれほど重大な問題とはなりません。しかし、暴力団構成員とくに首領・幹部の検挙が組織自体には大きな痛手となるのは明らかですから、警察による継続的な取締まりが暴力団犯罪に対する有効な対策であることは明らかです。また、組織自体の存続基盤を揺るがせるためには、資金源の根絶と構成員の補充を絶つことも必要です。

 戦後における暴力団犯罪に対する主要な法規制としては、暴行罪・脅迫罪の法定刑の引き上げ、暴行罪の非親告罪化、証人威迫罪の新設、凶器準備集合罪の新設、銃砲刀剣類等所持取締法の制定、暴力行為等処罰に関する法律の部分的な刑の引き上げなどがあります。これらの法規制は、一定の効果をもたらしましたが、必ずしも十分なものとはありませんでした。それは、従来から暴力団の主要な資金源として、寄付・用心棒代・不当融資・示談介入・債権取立などがあり、彼らはこれらの行為を行うに際して、直接暴力を行使するよりも、表面的には穏やかな交渉や取引の形をとって行っていたために、それらを明確に犯罪行為としてとらえにくかったからであす。

 さらに、暴力団の寡占化傾向が進み、暴力団が強大になってくると、彼らは「○○組」といった暴力団の名前を告げるだけで相手方を威嚇することができ、明確に脅迫や恐喝等の犯罪にならない方法で資金獲得活動を行うことがより容易になったのです。また、巨大な組織ほど下部組織からの上納金が多く、上部組織は自らの手を汚すことなく、莫大な利益を手にすることもできます。

 そこで、このようないわば灰色ゾーンにある行為を禁止の対象とし、暴力団の資金源を根元から絶つ必要があること、また暴力団員の離脱を促進するような援助を行う必要があることなどから、平成4年3月に「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(いわゆる暴力団対策法)が施行されたのでした。

 暴力団対策法の基本的な構造は、次のようなものです。

 すべての暴力団を規制対象とするのではなく、特定の暴力団を指定し(指定暴力団)、その暴力団員(指定暴力団員)に対して必要な規制を行います。

 指定暴力団員が指定暴力団等の威力を示して行う、不当寄付金要求行為や不当地上げ行為、利得示談介入行為などの典型的な不当要求行為を禁止します。さらに、指定暴力団員による指定暴力団等の加入勧誘行為、指定暴力団の事務所等において付近住民に不安を与えるような一定の行為を禁止します。

 上記の禁止行為には措置命令を発することが可能であり、さらに対立抗争時には指定暴力団事務所の使用制限を命じることもでき、これらの命令違反に対しては罰則が設けられています。


 平成26年末時点の全国の暴力団構成員と準構成員は、暴力団対策法施行後で最少となっています(平成27年版警察白書)。取り締まりの強化や暴力団排除活動の高まりによって、組織からの離脱が進んだと考えられます。しかし、他方で、暴力団に属さないグループによる不透明な資金活動が目立っており、資金獲得のための非合法な活動がいっそう巧妙化するおそれもあります。(了)
Yahoo!個人より転載)